第56話 細海先輩と御森くんと強制耐久合宿
今回、ホラー回です。
少しでもホラー描写が苦手な方は飛ばして下さい
「お疲れ様でーす!」
無事に説明会とご挨拶を終え
地元で有名な食事処で、置いてある細海先輩のグラスに乾杯する
「はい…お疲れ様です…」
外面モードを解除して少し溶けかけている細海先輩を横目に
メニューの端から端まで目を滑らせた
「細海先輩!それだけで足りますか?ポテトサラダも頼みません?」
「私、しっかり一人前のトレー御前をいただいてるはずなんですけど…御森くんが食べたいなら頼みましょう」
「やったー!」
今日は初めてのことばかりですごく疲れた
でもなんだかじわっと心地良くて箸が止まらない
初めてのビジネスホテルで宿泊もなんか楽しみだな~
運ばれてきたポテトサラダを受け取り「どれくらい食べますか?」
と、取り分けようとするが「胃が疲れてるので全部御森くんが食べて良いですよ」と言われた。
でも、キュウリや玉ねぎ以外にも沢山具が入って
栄養満点な見た目のポテトサラダだったから、一口でも食べてほしくて
「まぁまぁそう言わず」と強制的に小皿に盛ってトレーに乗せる。
「うまぁ~、なんかもうここに来てから全部ご飯が美味しいです」
「現地の食材が堪能できるのは出張の特権ですね…ちなみにこの後ですが」
と、細海先輩はお味噌汁のお椀を置いてスマホを取り出した。
「19時が最終のバスなので、もし買うものあればコンビニに寄ります。ホテル付近に売店があるか何時までやっているか怪しいですしね」
「了解です!」
目の前のご飯を食べ終え
季節のシャーベットに後ろ髪惹かれつつ店を後にする
「大きい水とお茶のペットボトル見てきます!」
バス停に向かうまでのコンビニでこの一晩どう過ごせるかが決まる
お菓子も買っちゃおうかな…仕事で来たからダメかな…
「細海先輩~、お菓子って――――」
そこには、卓上塩を握りしめ見つめる細海先輩がいた
「……ほそみせんぱい?塩、どうするんですか?」
俺の問いかけに気付いたらしく気まずげにこちらを見る
「あーーーー、ポテチを塩盛りで食べちゃおうかな、と思ってました」
「やんちゃすぎません?」
安心しつつ、じゃあお菓子買っちゃお!と、俺もポテチの大袋を抱える
お会計を済ませ、時刻通りのバスに飛び乗った、までは良かった。
バスが進むにつれて“本当に合ってる?”という不安が顔を出す
「なんか、めっちゃ山の方に向かってますね」
「流石に、この時期に2部屋おさえられた理由を叩きつけられてますね」
とことこバスが俺たちを連れて行ったのは
山のふもとにポツリと佇むビジネスホテルだった
「景気が良い時にノリで建てて、思惑が外れた感じですかね」
ボソッと細海先輩から辛辣な言葉が出つつ、チェックインカウンターへ向かう
「株式会社〇〇で予約しております」
「はい、お待ちしておりました。こちらがルームキーです」
今時カードではなく棒の付いた鍵を受け取ると
備え付けのエレベーターのボタンを押した。
最上階からゆっくり点滅する階数表示をぼんやり眺めていると、
突然、6階まで降りてきた電光が一瞬7階に戻った…?
「なんか、一回上に戻りませんでした?」
「古いから表示が壊れてるんですかね?」
えぇ…壊れてるエレベーター乗るの怖いぃ…
そんな事を思った矢先に到着したので
恐る恐る足を運ぶ
俺たちが泊まる8階を押し
ブーンという鈍い音をさせ
そして
6階で一度扉が開いた
「?」
そこは誰もいない廊下で
そのままチン、という音と共に扉が閉じて動き出す。
「(また6階、だったな)」
じわっと嫌な汗が背中を伝った、その時だ
「御森くん、さっきコンビニで買った塩飴なめますか?」
突然、はい、と細海先輩から塩飴を渡された
「何で今、塩飴??」
コロンと口に入れると再び、チン、という音がして
自分が泊まるフロアに着いたことに気づく
「なんか、めっちゃ静かじゃないです?」
「部長からは何とか2部屋拾えたって聞いてるのに、確かに静かですね」
なんとなく、なんとなーーくだけど
……泊まりたくない
「あのぉ、細海先輩の部屋って何番ですか?」
「808ですね」
「あ!俺809なので隣の部屋ですね!じゃあ安心ですね!」
壁に貼り付けられたルームマップを見て部屋番を探す
「えっと、809、809、はちまる……えっ」
「どうしました御森くん?」
「端から端…っす」
「はい?」
「俺と、細海先輩の部屋、廊下の端っこ同士です」
ギギギ、と音が鳴りそうな動きで細海先輩の方を見ると
細海先輩はゆっくりとエコバッグから卓上塩を取りだした
「では、御森くん、また明日生きて会いましょう」
この話は、細海先輩と御森くんを書くと決めた時から予定していたストーリーです。
ようやく理不尽な恐怖に巻き込まれる細海先輩と御森くんが描けて嬉しいです。




