第48話 細海先輩と御森くんと夏季休暇申請
「細海ちゃん、今年の夏季休暇どうするの?」
物部先輩からの一言に細海先輩が「そうですね…」と頭を捻った。
「今年も特に希望は無いので、一旦部長に御森くんと休みをあわせた方が良いか確認しようと思います」
「オッケー!もし同じ日に取れそうなら映画付き合ってよ」
「了解です」
そんな会話が隣で繰り広げられているのを
なんとなく話聞こえてますよ!という空気だけ漂わせながら
キーボードを叩いた。
「そんな訳で、御森くん。休み希望はありますか?」
その言葉に〝待ってました〟と言わんばかりの勢いで「1日だけ希望日が有ります!」と答えた。
「良いですねぇ、どこですか」
「えっとですねー、8月の…」
基本、その日以外は俺も特に予定が無い。
同じ部署の先輩達の予定を聞きつつ
社会人初の〝夏季休暇申請〟なんてものをしたら、また一つ大人になったみたいで笑ってしまう。
「学生の頃は夏休みこそ稼ぎどきで働いてたんで、夏季休暇めっちゃ嬉しいっす」
「あー…そうですね、サービス業の方々もですけど、世間的な休みの時にお仕事されてる方には感謝しかない」
そんな言葉にふと細海先輩はどう過ごすのか気になった。
休みの日は定期的にSNSに1人飯を投稿してる細海先輩の事だ、気になる店を何軒かストックしてそうじゃない?
「因みに、細海先輩は毎年どんな過ごし方をしてるんですか?」
夏ならではの冷やしラーメンや激辛料理、最近はかき氷とかも夏の定番スイーツで食べ応えがありそうなのが沢山ある
細海先輩の気になる店は全部美味しそうだから教えてもらったら俺も行ってみたい
「そうですね、私は毎年惰眠を貪ってます」
……えーーー
「惰眠?」
「はい、惰眠を貪ってます」
それはそれは穏やかな顔で嬉しそうに言うが
ようは休み中ずっと寝てるって事っすか!!?????
「外出ましょうよ!!夏休みですよ!!?」
「何を言ってるんですか、夏休みこそ、沢山、好きなだけ、エアコンの効いた部屋でゴロゴロするんです」
その言動に、そう言えば小学生の時にも
日焼けせず、夏休みの思い出は親の実家に帰っただけ、みたいな子居たなぁ…と懐かしい記憶が蘇った。
「細海先輩がインドアなのは分かってますけど、夏に海とか川とかプールとか行った事ほとんどなさそうですね」
「無いですね…そもそも人が多いところと水のあるところは苦手ですし」
「言動がイエネコ過ぎる」
そんな会話を聞いていた物部先輩が「御森くんの気持ち、分かるよー」と俺の肩に肘を置く
「私も休みの日は外に出たい人間だからね、細海ちゃんの夏休みの過ごし方は正直〝正気か?〟と思う」
「今やんわり非難を浴びましたね?」
「絶妙なディスでしたね!」
そんな俺たちの言葉は気にせず
「でもね御森くん、夏休みの学生さんや子供連れの皆さんが賑わう中に細海ちゃんを投入したらどうなると思う?」
その問いに「あー…」と声が漏れる
「賑わいに気おされして何も出来ず終わりそうっす」
「正解!!」
「2人とも、私の事を理解してくれて嬉しい限りです」
何度か計画をたてて夏休み中の1人飯に挑戦したらしいが
悉くオープン前から人が並んでたり
買い物も人が多過ぎると途中で疲れてしまうらしい
「あと、夏の太陽は天敵ですからね…。ただ自発的に映画は観ないので映画に誘われたらジャンルを問わずついて行く、という自分ルールがあるので。物部との予定だけは外出イベントですね」
生き生きとそんな事を言う細海先輩を前に
そんな貴重な夏季休暇に1日〝自分と一緒に映画へ行く〟と言う予定をねじ込めるんだから、仲が良いんだなぁ〜と改めて思った。




