第46話 細海先輩と御森くんと降水確率の確変
正直、自分の力を信じ過ぎていた
降水確率50%なら俺の方がきっと強いと…
「雨の匂いがしますね」
その日の昼下がり
キーボードを打つ手を止めて肩を回す細海先輩の言葉に焦りを感じる
「ここ社内ですよ…気のせいじゃ無いですか?だって今日降水確率50%ですよ?」
「気のせいかもしれませんけど、気圧も動いてますし雨は降るかもしれませんね」
そう言って何度か強めに瞬きをして再びパソコン作業に戻ろうとするので
「いやいやいや、そんな、降らない降らないきっと降らないですよ」
と、食い下がった。
頑なに雨の存在を否定する俺を不思議に思ったのだろう
「雨が降ると不都合なんですか?」
と聞かれ、天を仰ぐ
「洗濯物を…」
「あー…ご愁傷様です」
「まだ!!降るとは限らないじゃないですか!!」
「いや、朝もそこそこ曇ってましたよ…なんで外に干してきちゃったんですか」
細海先輩は不思議そうに目を細めた。
「部屋干しにも限界がありますよ〜、服に外の空気を吸わせてあげたかったんです」
「服達には優しい持ち主ですけど、賭けが大胆過ぎます。君が言った通り降水確率50%ですよ」
「だって、俺めちゃくちゃ晴れ男なんですよ!!て事は予想は50%でも実際は30%くらいまで下がってるはずです!!」
その言葉に細海先輩は
それはそれは申し訳なさそうな顔で
「御森くん…私は雨女です」
と呟いた
「でしょうね!!なんとなくそんな気はしてました!」
とは言え、雨が降っても細海先輩のせいでは無いが
何となく負けるのは悔しい
「…先輩と言えどこのお天気勝負!!絶対負けるわけにいきませんから!!」
パソコンの傍に置いたてるてる坊主に両手をあわせる
「変な戦いに巻き込まれてしまった…とは言え御森くんの服が雨に降られたら可哀想なので負けてあげたいのは山々ですが…」
そう言って〝雨雲レーダー〟と検索する
「残念ですが、1時間後にゲリラ豪雨と出てます… このあたりを雨雲が通る予報ですね」
画面に映し出された情報に
「そんなぁ…」
と机に項垂れた
「御森くん、現実はいつも残酷なんですよ…最近はコインランドリーもオシャレになってると聞きますし乾燥機という選択肢もあります」
そう言うとパソコンに目線を戻し
「そんな訳でとりあえず業務に戻りましょう」
と仕事に戻っていった。
「うぅ…まだ負けた訳じゃないですからね」
俺が泣き言を言った1時間後
無情にも雨雲レーダー通り凄まじいゲリラ豪雨に見舞われた。
退社時刻には、やんだ雨のおかげで澄んだ空気の中
最寄りの駅に着き、とぼとぼと家に帰る道すがら
ある事に気づく
「(地面が濡れてない?)」
ハッと顔を上げ、足早に帰宅する。
恐る恐るベランダを開けると
乾いた服達がはためき、俺の目には輝いて見えた。
「ぅわあああ!!良かったぁ!!この辺は降って無かったぁ!!!」
ルンルン気分で服を取り入れ、晩御飯を食べようと窓を閉めた時だ
ゴロゴロ…と不穏な音とともに一気に空が暗くなり
突然ザーッという分厚い水の音が当たりを埋め尽くした。
「ぎゃあー!!!ギリギリだったぁー!!!セーフセーフ!!!」
ヘタリと、その場に座り込み
〝洗濯はセーフでしたけど、今突然降り始めました…勝負は引き分けです〟
と、とりあえず細海先輩にLINEを送ってみる。
『服さん達が無事で良かったですね』
謎の生物が手を振るゆるいスタンプと共に
そんなメッセージが送られてきた。




