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細海先輩と御森くん  作者: 紙屋川トカゲ
2章 本格始動
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第45話 細海先輩と御森くんと健康診断

今年もこの時期が来た、いや、来てしまった。


管理部から配られた封筒を苦虫を嚙み潰したような表情で見つめる。


「わー!俺人間ドック初めてです!」


もらった封筒と健康診断期限のお知らせメールに御森くんは楽しそうだ。


「WEB予約も受け付けてますし、電話予約をするなら業務中に電話しても良いですよ」

「予約スケジュール、ほとんど平日なんですね」

「はい、なので大体の人が半休をとって健診後に出社します」

「ふーん、細海先輩はいつもどうしてるんですか?」


先輩に習おうとする姿勢

本当に素晴らしいですが健康診断で私が君のお手本になれることは無いですね…


「私は数少ない土曜日を狙って受けます。健康診断後はグッタリしているので」

「そんな過酷なんですか!?」


“ひぇ”と手を口の前に持っていき怯えるしぐさに「いやいやいや」と水を差した。


「血が採れないんです」

そう言うと納得したように

「あー…」と声が漏れた


「献血できなくてスポドリだけ飲んで帰った人になったって言ってましたね」

思い出したようにそう言ったものの納得いかないようで

「『健康診断で採血できない』なんて言い訳、普通は通じませんよね?毎年どうしてるんですか」

と尋ねられる。


「1回で採血が成功する年もありますし、後日になる年もありました。昨年は1回目の途中で血が止まって採取できた分が固まったので捨てられましたね」

「健康診断当日に採血を断念されることあるんですか!?」

わざわざ休みの日に予約して、その日に終わらないのは驚きますよね


「採血の針を刺すのは3回までという制限があるようでして、3回刺されて血が出なかった年は後日になりました」


正直、痛い。

1回でも痛いのに3回も刺されるのは本当に痛い。

何なら採血自体に時間がかかる年もある。

ですが、毎年笑顔で我慢している。

何故なら私ももういい大人だからだ。


「大人になるってつらいです」

「採血を通して大人になる辛さを語られると思わなかった」


そんな会話をした数週間後

午後から出勤することを選んだ御森くんがグッタリしながら健康診断から帰ってきて

「なんでバリウムの存在を教えてくれなかったんですかぁ」

と、聞いてきた。


「私の中で御森くんはスーパーフィジカルヒューマンだったので、まさかバリウムでこんなグロッキーになるとは予想できませんでした」

「なんなんですかアレ、甘いセメントみたいなのと炭酸の原液みたいなの飲んでゲップ我慢で雑なアトラクションみたいなのに乗りましたけど」

「胃の検査です。辛かったら来年はパスしたら良いと思います」

「パスできるんですか!え、でも胃が心配だったら他にどうすれば良いんですか?」

パスできる嬉しさと万が一の不安いっぱいの言葉に


「その時は自腹で胃カメラですね」

と、現実をお伝えした。


「自腹で、胃カメラ…。大人ってつらい」

この後、ちゃんと下剤を飲むこと、後回しにすると大変な事になる、と伝えると「来年は細海先輩と同じ平日以外で予約します!!」と泣きながら下剤を飲んだのが印象的でした。

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