第43話 細海先輩と御森くんと梅雨の話
雨が降りしきる梅雨に突入して数日
日に日に御森くんのテンションが下がっているな、と思っていたある日
恨めしそうに口をとがらせ
「細海先輩って直毛ですか」
と、聞かれた。
「直毛ですね」
そう答えると
「いいなぁ~」
と、こちらを見ながら机に突っ伏す。
「(この子は全体的に無駄な脂肪がついてなさそうなのに頬肉が良い感じに机に乗るなぁ)」
そんなことを考えながら、自分の毛先を一束つまみジッと見つめる
「一長一短ですよ、私は御森くんの髪質の方が羨ましいです」
「なんでですか、この時期は湿気ですごく癖が出るんですよぉ」
緩くカールの入った彼の髪の毛は
湿度が増すにつれ、ところどころに制御不能の癖が出てきているらしく
確かに普段よりボリュームが出ていた。
その日着る服で自分を鼓舞する彼にとってはモチベーションに影響するのもうなずける
とはいえ…
「髪質については、私も何度かふわっとしたシルエットに憧れてパーマかけてみましたけど家に帰る頃にはストレートに戻ってましたからね…自分の思い通りにならないジレンマは理解できます」
「それめっちゃショックなやつじゃないですか!!でも期間内ならお直しできますよね?」
「はい、次の休みに再度もう少し強めにかけてもらったんです、そしたら次はカーラーのサイズも合ってなかったのか縦巻きロールみたいになってですね」
「またまた~、俺のこと励まそうとしてぇ~」
ニコニコと嬉しそうに言った御森くんが私の表情が変わらないことに気付き真顔になる
ごくりと喉を鳴らし
「まさか、本当に縦巻きロールに…?」
その問いに、私は静かに頷いた。
「あの日、縦巻きロールのような髪型の自分を見て思ったんです。まっすぐな髪で生きていこうと」
本当は緩いCカールを毛先にかけてもらうだけだったのに、何故あんな髪型になったのだろう
未だに分からない
「私の話は置いておいて、御森くんが少しでも明るい気持ちになればと思うんですがぁ―――あっ」
鞄をゴソゴソと探る私の声に
「なんですか!おやつですか!?」
と嬉しそうにのぞき込んできた
「湿気でモロモロに固まったポケットティッシュが出てきました」
「捨ててください!!」
「まぁまぁ、もう使えないので御森くんのために私がてるてる坊主を作ってあげましょう」
そう言って、ポケットティッシュを丸める
「ティッシュだと力加減間違えて米粒くらいまで小さくなっちゃいますよね」
「普通の人間が丸めてもそうはなりませんよ。それはティッシュのポテンシャルではなく君の圧縮力が原因です」
「えー」
輪ゴムで首をつくりサインペンで顔を書く
「かっこよくしてくださいね」
「てるてる坊主で格好いいって何ですか」
キュッと口の端を上げてかっこよさを表現してみるも随分と斜に構えた表情になってしまった。
「うーん、世の中なめてる顔になっちゃいましたね」
「“晴天とかだせぇ”って言ってそう」
その後、一部始終を見ていた部長が「晴れたら溶解BOXに入れてね」と印刷ミスした紙を提供してくれたので、御森くんも力加減に怯えることなく自分用のてるてる坊主を無事に作ることができ
暫くデスク横にフィギュアのように置かれていたのがとてもシュールでした。




