第32話 細海先輩と御森くんと過保護な後輩
「細海先輩、エアコンの温度大丈夫ですか?」
昼過ぎ、キーボードを叩いていると確認するような御森くんの声に「……はい?」と顔を上げる。
「いや、寒いの我慢してないかなぁーって思って…」
と、こちらの様子を伺う様な声色に
「……君は、私のお母さんですか?」
と思わず出た言葉に、御森くんは食い気味で首を横に振る。
「後輩ですよ!!」
声がでかい。
「後輩だから細海先輩が無理して休んだら困るんです!!」
成る程、確かにまだ単独での業務進行は不安だろう
いやぁ…心配をかけてしまって申し訳ないですねぇ〜
うんうん、と腕を組んで頷く私とジト目で確認をする御森くん
その様子を見ていた物部が、くるりと椅子を回してこちらを向いた。
「細海ちゃんはね、むかーし一回だけ休んでからは休んだ事ないよー?いつもギリギリで止まるからねぇ、しかもその一回も動けるようになったって翌日にはリモートしてたしね」
にこにこと補足される。
「そうです!自分のボーダーラインはちゃんと分かってるか
ら大丈夫なんです」
ドヤ顔で言い切ると、
「ギリギリまで無理するから心配してるんです!!!」
御森くんの訴えがさらに大きくなった。
「いやいや、そこまででは――」
言いかけたところで、御森くんが窓の外を指す
「今日、曇りですけど気圧の変化は大丈夫ですか?」
「はい、今日は全体に体が怠くなるレベルで止まってます」
「怠いんじゃないですか!」
小さな不安の積み重ねでこんなことになるのか…勉強になったなぁ、など御森くんを見ていて思った
健康優良児の御森くんの目にはさぞかし私はか弱いうえに無理して社会生活を送ってる先輩に見えているのだろう
「細海先輩、“まだいける”で突っ走るじゃないですか」
「突っ走ってません、私基準では“まだいける”んですよ」
とはいえ、御森くんの仕事を見るようになってから健康がやや彼の基準に準ずるようにはなってきてると思っている
「(そんなに私のことを心配してくれて、良い後輩を持って幸せ者ですね)」
そんなことを噛み締めていると
「細海先輩を見てると、保護犬…というか…人間に不信感を持ってる小動物みたいでほっとけないと言いますか…」
「今のはギリギリ悪口では!?」
「悪口じゃないです!」
一拍も置かずに返ってくるのが余計に怪しい。
まぁ、ワンちゃんは好きですから全然良いんですけどね
その間も御森くんは
「こまめに水分も摂ってくださいね」
と常温の某電解水をソッと差し出してきた。
「……やっぱり君はお母さんでは?」
「後輩です!!」
即答だった。




