第24話 細海先輩と御森くんともしかして:
どうもここ最近、漠然と体調が不安定だ。
熱は無いのでウイルス性のものでは無いだろうが、どうにもスッキリしない。
食事を疎かにする悪癖も出てきてしまい、どうしたものかと頭を悩ませていた。
「あれ、今日もお弁当じゃ無いんですね」
栄養補助食品のパッケージに気付いた御森くんが、心配そうに声をかけてくる。
「なんとなく生活習慣が崩れて、楽な方に流れてしまって…」
御森くんの教育係になるまでは、自分の行動を特段気にしたことは無かった。
けれど、この花丸健康優良児な後輩に生活サイクルの乱れを見せるのは、なんとなくバツが悪い。
「実は最近、ちょっと体調の変化についていけていないんですよ」
「体調の変化ってどんな症状なんですか?」
「そうですね…軽い食欲不振とか、気が立って寝付きが悪い感じですね」
「しょくよく、ふしん・ねつきが、わるい」
オウム返しをしながら、カチャカチャと御森くんがキーボードを叩き、Enterを押す。
するとブラウザー画面のトップに〝もしかして:〟という文字と共に、ひとつの病名が浮かび上がった。
「「ごがつびょー…」」
同時に出た言葉に、思考が止まる。
五月病??
「五月病って、新入社員がなるやつですよね?」
「そうですね、一般的にはそういわれていますね」
「「・・・・」」
気まずい沈黙の後、
「なんで俺じゃなくて細海先輩が先に五月病になってるんですか!!」
と、御森くんが声を上げた。
「いーえ、症状を調べたら出てきただけです。まだ私が五月病とは決まってません」
目を見開いてモニターを凝視するが、出てくる単語に心当たりがあり、冷や汗が流れ始める。
「でも食欲不振なんですよね?」
「はい」
「寝付きが悪いんですよね?」
「はい」
「で、ここ最近やる気が出なくて栄養補助食品ランチが続いてますよね?」
「……はい」
普段は星でも飼っているのかと思うほど輝く大きな目を細め、
ジトーという擬音が似合う視線を向けてくる御森くん。
「いや逆に俺は一気に体調を崩すタイプなんで、細海先輩みたいに不調でも動けるのは不思議なんですけどぉー。ちゃんと美味しいごはん沢山食べて、いっぱい寝てほしいと思います~」
「くッ…次の休みは前日から21時に布団に入り、8時間以上寝れるように努力しますし、沢山お肉食べますからその目はやめてください!!」
結局、自分の症状が五月病だったのかは定かではない。
ただ、次の休日に突発唐揚げ祭りを開催したところ、電池が切れたようにぐっすり眠れた。
翌朝、頬に少しだけツヤが戻っているのを手触りで確かめながら、
――まあ、悪くはないかもしれない、と思った。




