第23話 細海先輩と御森くんと献血
就業20分前。
いつも通りに準備を済ませ、
ふと、さっき見た光景が気になって窓から外を見ていた。
「あれ、細海先輩おはようございます」
出社してきた御森くんが、驚いたように挨拶をする。
「この時間にパソコン前いないの、珍しいですね?」
「おはようございます御森くん、ちょっと昔のことを思い出してました」
苦々しい顔をしていた私を見て、御森くんが不思議そうに同じ窓を覗き込むと、
「あっ、献血車ここから見下ろせるんですね」と声を上げた。
弊社には定期的に献血車が来る。
「はい、業務時間内であれば社会貢献活動の一環で献血ができます。スポーツドリンクとかチョコレートもらえるので、結構人気ですよ」
「へぇー…そんな険しい顔するような献血車で思い出す昔のことって、なんなんですか…」
眉間に皺を寄せ、ちらりと御森くんを見上げて、重い口を開く。
「O型の血は、全血液型の人に輸血ができると言われています」
「あー、俺も聞いたことがあります!」
「正確には、Rh-O型の赤血球が最も安全に輸血できる血液型だそうです」
「へぇ、O型なら全部大丈夫ってわけじゃないんですね?」
「私はO型なので、数年前、思い立って献血ルームに行ってみたことがあるんですが……血を取る直前に断られてしまったんですよ」
「その日、気圧でも低かったんですか?」
御森くんの言葉に気まずさを感じつつ、
「血管が見つからないと言われまして……」
服の上から腕をさする。
「いや、血管はあるでしょ」
正しいツッコミだけど、そうじゃない。
「血管はあります。でも、針が刺せる血管が表面に浮いてこないんです」
と落ち込みながら言葉を続けた。
「普通は血を取るのに適した血管が、指で押すと分かるそうなんですけど、私の場合どこにも見つからなかったらしくて」
一拍置いて続ける。
「手の甲からならとれるけど、そこまでする必要ないと言われて…その日、私はスポーツドリンクとお菓子をもらって帰っただけの人になりました」
その日の無力感と情けなさを思い出しながら肩を落とす。
「えー、血管って外からでも意外と見えません?」
そう言って御森くんが袖をめくって見せてくれた腕は、見ただけで血が取りやすそうだと思った。
「くっ、私はっ、体力も無ければっ!満足に血管すら主張できないポンコツだ……!」
歯を食いしばってそう言うと、
「じゃあ俺が細海先輩の分まで献血してきますから。そろそろ居室戻りましょう、打刻しないと俺が遅刻扱いになっちゃいます!」
そう言って歩き出す御森くんの後ろから
「因みに、御森くんの血液型はなんですか?」
と聞いてみた。
「俺、AB型です!」
「レアな血液型じゃないですか…つくづく君は人の役に立つ素晴らしい人間だな!」
そんな私に振り返りながらピースをする御森くんが羨まし過ぎて、思わず歯軋りを堪えた




