第18話 細海先輩と御森くんと視力の差
時刻は16時、業務後半の疲労感に首を回していると、隣の細海先輩が眼鏡を掛け替えているのが見え
ふと前から気になっていることを聞いてみようと思った
「細海先輩、業務外の話なんですけど」
そう言うと「どんな話ですか?」と顔をこちらに向けてくれる
「なんで会社に眼鏡を何個も持ってきてるんですか?」
そう、細海先輩は眼鏡を何個か使い分けている
俺は裸眼で生活をしているので〝眼鏡って一個あれば良いんじゃ無いの?〟と疑問に思っていたのだ
俺の問いに「あぁ」と細海先輩は残りの2つを引き出しから取り出して
「通常用、パソコン用、予備です」
と、説明をはじめる
「通常用は遠くを見やすくするためにレンズの度数が強めなんです、でもパソコン作業は近くを見るじゃないですか?」
「そうですね?」いまいちピンとこないまま相づちをうつ
「だから遠くがよく見えるレンズのままだと目の調節機能をフル稼働させるので、疲れやすくなるんです。
レンズが遠くを見せようとする分、自分の力で近くにピントをあわせ続けなくてはいけなくなるので」
その説明に「え?」と声が出た
「眼鏡って見えれば見えるほど良いんじゃないんですか?」
だって俺めっちゃ視力良いけど、特に困ったことはない
まさしく見えてる世界が違うようで、細海先輩は「そうですね…遠くも近くもよく見えるのが良いと思いますけど」と頭を捻る
「持って生まれた体力ゲージ、みたいに表現すると分かりますか?視界の調整をするって意外と筋肉を使うんです。例えば御森くんが常に体力100あるのに対して私のゲージは10しかないうえ回復が遅い、だからアイテムを使って体力を温存してるんですよ」
そう言われて、成る程…と思う
多分俺も遠くや近くを見るのにエネルギーを使ってるけど体力が細海先輩より有るから疲れにくいのか
「まぁ、そんなわけでパソコン作業中に遠くを見たい時は眼鏡を掛け替えるので3つあるんです」
〝とてもめんどうですよ〟そう言って目を細めながら資料棚の方を見る
「まぁ流石に、通常用の眼鏡でも資料の背表紙までは見えませんけどね」
「あ、じゃあ欲しい資料言ってもらえれば俺は見えるんでここから探しますよ」とさり気なく言うと細海先輩の表情が少し強張った
「……向こう側の壁にある資料の背表紙が、読める?」
そう良いながら表の様な物を取り出すと
「じゃあ〝社内規定〟はどこにありますか」
と聞いてきたので、棚をじっと見つめる
「あ、右の棚の上から三番目にありますね、とってきますか?」
と言と、表を指でなぞりながら「合ってる…」とボソリと呟き
「御森くんは、サバンナでも生きていけそうでちょっと羨ましいです」
と言われたが
多分それは褒め言葉ではない気がします、細海先輩




