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細海先輩と御森くん  作者: 紙屋川トカゲ
1章 研修期間(仮)
18/36

第17話 細海先輩と御森くんとハイテンションの末路

「ランチ行ってきますっ」


ポケットに財布がある事を確かめながら、御森くんが席を立つ。


「はい、いってらっしゃい」

お昼休憩の始まり、ザワザワと居室から人が出ていくのを見送りながら

ずっと抑えていた気持ちを押し込めお弁当箱を取り出した。

コンビニご飯の人や、自席で寝たい人は居室に残るものの

殆どが外に食べに行く静かな空間で、ゆっくりとお弁当の蓋を開ける


「……っ!!」


今日のお弁当は揚鶏のおろし餡掛けだ

前日の晩ご飯の残りに大根おろしと和風の餡をかけてアレンジした

少し水分を吸ってしっとりとした鶏肉にたっぷりの大根おろしと彩りの小ネギ…そして


「成功だぁ…!!」


スマホで記録を残し〝いただきます〟と小声で手をあわせ、トロリと輝く和風の餡に箸をのばした。




「もどりました~」

「はい、おかえりなさい」


少し声が上ずったのか、はたまた彼の共感能力が高すぎるのか

食事が終わり席に戻ってきた御森くんが「あれ?」と私の方を見て首を傾げる

「細海先輩、なんか嬉しい事ありました?」


その言葉に口元の緩みが隠しきれず「ちょっと、語っても良いですか?」と伺う

あきらかにいつもと違う表情筋の動きをしている自覚はある


「……聞いてみます」


おそらく何かを察知したであろう御森くんが少し躊躇いを見せた、が

了解がとれたことで一気に言葉が溢れ出す


「以前より大根おろしの餡掛けを作ると餡にトロミが出ず、すりおろしスープみたいになってしまうのが小さな悩みだったんですが昨日、大根に含まれる消化酵素のアミラーゼがトロミの素であるデンプンを溶かす事が原因なら一度大根おろしをレンチンして酵素を失活させれば良いのでは?と言う仮説が浮かび今日のお弁当で試してみたんです!!そしたら!!」


ここまで一息


若干、御森くんが後悔を滲ませた表情をしているが構わずスマホの画面を見せた


「翌日の今日まで!!ちゃんとトロットロだったんですよ!」


おそらくネットを徘徊し調べればすぐに出てくる解決法だろうが、自分で思いついて実践し成功したことが嬉しいのだ


「俺…簡単な料理はしますけど広く浅くタイプなんで、細海先輩の1つのことに情熱もりもりなところを見ると毎回新鮮に驚いちゃいます」


なんとか絞り出したような感想がそれですか???

え、うそ、今のトロミが残った事じゃなくて私の探究心について言及でしたよね??


ふーー…と、深く息を吐き出し、落ち着く

改めて御森くんを見据えて口を開いた


「ぜひ!!興味があれば御森くんも作ってみてください!!レシピ送っておきますね!都合の良い時で良いので!!ぜひ!!」


そう言ってレシピをLINEで送った数日後

「冷凍の大根おろし使ったらうまくできました!」


と画像が送られてきた。

酵素の失活がぁ、いやでも冷凍保存期間の因果も…

心の中で「そうだけどそうじゃないんです!!」と叫び

私は静かに「いいね」スタンプを押したのだった。


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