第12話 細海先輩と御森くんと筋力
割と業務が少ない日の午前中のこと。
「誰かぁー備品運ぶの手伝ってぇ〜!」
という同期の声が居室に響き、ふとあることを思い付いた。
「御森くん、いけますか?良かったら備品室の場所をまだ教えていないので。手伝うついでに教えてもらってきてください」
今してもらってる業務の量と進み具合なら大丈夫なはず、と声をかけると「いけます!了解です!」と元気に返事をして「ものべさーん!おれいけますー!!」とひらがな発音で当人に駆け寄る。
ああいうところが、彼が先輩たちに可愛がられるところなのだろう
「物部さん、申し訳ない。彼に備品対応をご教示お願いしまーす!」
そう言うと同期の物部は「おっけー!よし御森くんお姉さんについてきてね!」と彼を引き連れてエントランスに向かった
「(物部に任せておけば問題ない、よろしく頼んだ)」
愛想がよく、人との壁を作らない彼女には沢山助けられてきているので信頼が厚い
2人だけの時は呼び方が変わる数少ない同僚だ
彼女と同期入社できたことは私にとって最高の幸運だったと思う
暫く自分の業務に集中していると廊下の方から「ごめんね!!無理しないでね!!」と物部の声が聞こえてきた
「大丈夫ですよこれくらい、全然重くないのに物部さんは大袈裟なんだからぁ~」
ニコニコと朗らかな笑顔で居室に入ってきた御森くんは大きめの箱を持っていた
「おかえりなさい、補充する系の備品ですか?」
コピー用紙か何かだろうと思い、手伝えることがあればと2人に近付く
「細海ちゃん、そうなんだけど…これ各部署分まとめたやつで…」
と、物部さんが言い終わる前にドッ…という鈍い音と共に御森くんが机の上に箱を置く
机が、苦しそうに軋んだ気がした。
なん…だ、今の威圧感は…?
「工具一式みたいです!」
そう言って箱を開ければ金属の塊がダンボールにギュッと詰め込まれている
「こうぐいっしき…」
試しに置かれた箱を両手で押してみたがびくともしない
「御森くん、多分この箱はそんな朗らかに持っていい重さじゃないですよ…」
これを?ここまで、ひとりで??
その日新たに知った御森くんのポテンシャルに冷や汗が流れる
「細海先輩が力仕事向いてないからそう思うだけですって」
ニコニコといつもの様にそう答えると工具箱を複数手に取り「これ、他の部署に配れば良いんですよね、いってきちゃいます!」と言って、彼は軽快に居室を出ていった。
「ねぇ物部」
「なぁに細海ちゃん?」
「私は彼をゴールデンレトリバーの様な子だと思ってたけど、今日からそこにゴリラが参入しそうです」
私の言葉に物部は
「完全同意」と答えてくれた




