第四十四話 隠し事
詳しい話を聞いてみると、私は怪我を負ったという意味での傷物令嬢ではなく、純血を散らされたという意味での傷物令嬢として、噂になっているらしい。しかし、それはごく一部でのことで、大半の貴族は、それが嘘であると考えているようでもあった。
「ごめん、なさい……。私の、せいで」
バルトリア家の家名に泥を塗ってしまった。そう、落ち込みはしたものの、それはきっと、セインさんに出会っていなければもっと大きなものになっていただろう。
「リコのせいではありませんよ。ただ、リコの新たな婚約が難航しかねない状況にしたドーマック家には、ちゃんとそれ相応の対応をしようと思っていますから、何か要望があれば、全部吐き出してちょうだいね」
お母様のその言葉に、私はしばし、時を止める。
新たな、婚約……?
考えるまでもなく、貴族である以上、政略結婚は当たり前だ。しかし、今の私には、運命の番であるセインさんが居る。セインさん以外は考えられなかった。
「婚約に関してなら、いくつか申し出が来ている。特に、ケイン君は良いのではないかと思っているのだが、どうだ? リコ?」
その言葉に、最近、ケインがそわそわと何かを聞きたがっていたことを思い出して、このことかと得心する。しかし……。
「っ!? 姉様!? 父上っ、今はまだ、姉様には早い話だったのでは!?」
「なっ、リコ、泣くなっ。す、すまない。まだ、婚約の話しは早かったな」
「ごめんなさい。わたくしったら、気が逸ってしまって……リコ?」
感情は、どうにもならない。どんなに、セインさんは諦めるべきだと理性が訴えていても、本能はセインさんを求めて止まないのだから。
「……リコ? ……あなた、もしかして、運命に……?」
ただ、いつの間にか流れ出して、止まらなくなった涙を見たお母様には、勘付かれてしまったようだった。
「っ、そうなのか? リコ?」
「父上? 母上? それは、もしかして、姉様に運命の番が現れた、ということですか??」
連動するように、お父様にもレノにもバレてしまう。
あぁ、隠すことは、できそうに、ない、なぁ……。
きっと、心配をかける。そして、その果てにあるものが、望ましい未来ではないと、話してしまったら分かってしまうに違いない。
「……ただ、早い、と思った、だけ、だから、大、丈夫……」
下手くそな嘘でも良い。私は、ある程度はバレているとしても、その詳細な内容は、精一杯、隠すことにした。




