第四十二話 分かりやすい?
家に帰ってから、セインさんと分かれることは辛かったものの、明後日にデート……ではなく、お出かけの約束が出来たので、ひとまずそれが楽しみで仕方ない。
「楽しそうね。リコ」
そんな心を見透かしたように、晩餐会場へ下りてきたお母様から声を掛けられる。
「お母様……。はい、楽しい、です」
まだ、誰にもセインさんが運命の番だとは話していない。何せ、話したら最後、心配されるだろうということが分かっているからだ。
「姉様ーっ!」
「っ、レノっ」
お母様と他愛のない話をしていると、横から衝突してくる者が居た。
チョコレート色の髪に、髪よりは淡い茶色の猫耳、そして、褐色の肌を持つ百四十センチくらいの背丈の男の子は、六歳離れた私の弟、レノ・バルトリアだ。
私がゼラフと結婚する予定だったため、バルトリア家の後継者としての教育を受けているレノは、私ほど自由な時間はない。最近では、食事時にしか顔を合わせていないのだが、その度に、私はレノに抱きつかれていた。
「レノ、リコのことが好きなのは分かりますが、程々に、ね?」
「はいっ!!」
私は構わないと思っているのだが、お母様からすると許してはならないことらしい。即座に私から離れたレノは、その直後、私の顔を見て、あどけなく笑う。
「姉様、今日は元気そうですね!」
「……そう?」
そんなに言われるほど、私は浮かれているのだろうかと、ついついほっぺをムニムニしてしまう。
「せっかくあのクソや……元婚約者との縁が切れたのに、姉様、あんまり楽しそうじゃなかったから……」
可愛い弟からあり得ない暴言が飛び出したような気がしたものの、きっと気のせいだ。そして、その可愛い弟から気にかけてもらえていたことが嬉しい。
「ありがとう。レノ。……私は、大、丈夫……。もう、ドーマック家とは、関係、ないから」
そう、ドーマック家からは解放されたのだ。現在は、慰謝料の請求を行っていて、ドーマック家は程なくして没落するだろうということが囁かれている状態だ。
あれ? それなら、なんで、権力を振りかざせたの……?
ゼラフが権力を振りかざして、店に圧力をかけていたという話を聞いたばかりの私は、ふいに、そんな疑問を抱いたものの、その疑問はすぐに消えることとなる。
「今日は、間に合ったか」
「「お父様!」」
「あら、今日は早く帰って来られたのですね」
ここ最近、お父様は仕事に忙殺されて食事の時ですら顔を出せないような有様だった。それが、今日は随分と早く帰ってこれたようだ。
「ようやく一段落したんだ。……リコ、何か良いことでもあったか?」
「お父様、まで……」
そして、例外なく聞いてきたお父様に、私は、全てではなくとも、ある程度のことは話してしまおうと決意した。




