第三十三話 目論見(ゼラフ視点)
ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく!
店を出た俺は、とにかく腹の虫が治まらなくて、そこら辺の木に蹴りを入れる。
今日、あの店に行ったのは、あそこに運命の番が居ると確信していたからだ。
リコと婚約破棄をする少し前、あの店の付近で運命の番の香りを嗅いだ。しかし、その時にはそいつを見つけられず、ただひたすらに捜し回ることしかできなかった。
店員にはその話をしておいたので、きっと、すぐに番は見つかると信じていたのだが……思惑に反して、番は見つからない。しかも、なぜか店員達はこちらに好意的ではなく、番避けを全員で使用して撹乱までしてくる始末。
さすがに少し躾が必要だと、そう思ったところに現れたのが、男連れのリコだった。
「クソっ、クソっ」
俺が運命の番を見つけられない状態で、リコが男を侍らせているその姿は、とにかく苛立った。
黒豹だということ以外に何の取り柄もないつまらない女。それがリコであり、そんな女が、俺より早く相手を見つけるなんてあってはならないことだった。しかし……。
「何なんだよっ、あの魔族はっ!」
凄まじい殺気を前に逃げることしかできなかった俺は、とにかく苛立ちを発散すべく、そこら辺の花を踏みにじる。
魔族は確かに強い種族だと知ってはいたものの、それを直接目にするのは初めてで、今でも震えが止まらない。ただ、このまま終わるのも癪なわけで……。
「見てろよ。絶対に、後悔させてやるっ!」
きっと、リコに正しく躾ができるのは俺くらいのものだろう。今度、リコに会った時は、しっかりと、立場を分からせてやろう。そう心に決めて、先程の店を振り返る。
「番も、絶対に見つけてやる。……いや、待てよ? もしかして、リコが俺の番を隠してるんじゃあ……?」
仮にも、婚約者だった者同士。もしかしたら、リコは嫉妬に駆られて、俺と番の仲を邪魔しようとしているのかもしれない。いや、きっと、そうに違いない。
「許さない。あの女っ!」
今はまだ、あの魔族が居るから難しいだろうが、あの魔族さえ居なくなれば、必ず、復讐してやる。
ただ、この時、俺は知らなかった。俺の運命の番がどんな存在なのかを。そして、リコとあの魔族の関係を……。




