33 リベンジ
ついにこの時がやって来た。このゲームの集大成、いや最大の目的であるザーコとの戦い。考えた作戦が上手く行くかどうかは、やってみないと分からない。
まずは装備しザーコに振るってみる、当たったけどダメージは零だった。よし! 一段階目はクリア、次は本来の目的で使ってみる。
凄い! ツルハシとは全然違う。ツルハシだとサラダボール位だったのに、これだと一回でお風呂の浴槽一杯分、いやお風呂の浴槽二杯位イケル。流石専用に特化したアイテムだけ有るわ。
ん? 色々とツッコミがあるだろう。ちょっと解説した方が良いかな、お風呂の浴槽の数え方は一据えです。でもそんな単位を私は知らないし、きっと知らない人が多いだろと思って杯で数えてみました。きっとこれでモヤモヤは解消されただろうから、話を続ける。
どんどん道具を使うと直ぐに目標の状態になった。使ってみて思う、こんなに高性能じゃなくても良かった、この十分の一の性能で三十万Gの方が良かった。買ってしまったのは仕方がない。
まあいいや、一旦ログアウトして直ぐにログインしてみる。結果、現状維持、よし! 二段階目はクリアだ。再度ログアウトして買い物でも行ってくるか。
四時間後ログインすると思っていた通りの状態になっていた。
「フフフフ、ハハハハ、アハッハッハッハ」
思わず笑いが零れた。最後の大笑いは故意に笑ったので不自然だった。よし! ここまでは想定通りだ。ここからは戦闘実験だな、まずはナパームを唱える。良く燃えるが相手からの反撃は……無し。これで三段階目クリア。何度も、何度も魔法を叩き込む。どんどんダメージを与えるが反撃は無い。
『ヒール』
しかし、ヒールは関係無く行われる。まあここまでは上手く行かないんじゃないかと思ってました。あわよくば程度で考えていたので、ガッカリはしない。逆に用意した料理が無駄にならなくて良かったと思う。
解説しよう、いまザーコの大半は地面の中だ。頭頂部と羽の一部が地面に出ているだけで身動きが取れない。穴を掘るのに特化したスコップを師匠に用意してもらってザーコの足元で掘りまくった。
当たってもダメージが入らないので反撃は無かった。このゲームは壁を掘っても、材料を採集しても時間で元に戻る特徴がある。つまり穴を掘って放置すれば穴は埋まるはずだった、そして実際にそうなった。
妖精が満腹度を回復してくれた。魔法を唱えて、相手の頭に当たりクリティカルダメージボーナスが入る。“断食マスター”の称号でダメージが百%増しのボーナスが入るし、一度に得られる熟練度が大きい。三回唱えると満腹度が一下がるので、シャルの作ってくれた料理を一口だけ食べると、満腹度が再び百%に戻った。
完璧だ! あとはこれを繰り返すのみ。魔法を唱える、満腹度が一減る、また料理を一口食べる、魔法を唱える。満腹度が……。
翌日も、翌々日も、翌々々日も、何度も何度も繰り返す。魔法スキルLVが上がっていく、一度に与えるダメージが増えていく。一回四時間を日に三セット、これだけを繰り返す。これだけやっても、ザーコの魔力は減らない。
まだ俺の努力が足らないのか? それとも、もしかして、もしかしてだけど……。はあ~分かった、分かったよ、自分の中のポリシーを変更するしかない。仕方がないよだって全然死なないんだもん。ついに自分で決めたルールを壊す、一日ゲームは十六時間までに変更だ!
今回の作戦を始めてから一週間ほど繰り返す、ついに、ナント! 頭がおかしくなって来た。ん、幻聴が聞こえたような気がする、違った称号を手に入れたようだ。
『“不屈”:ユニーク称号。困難な状況でも諦めずに続ける人に与える称号。メリット無し』
要らねー、意味ねー、おちょくられている気がする。しかし、まだだ、まだ終わらんよ。今ではナパームを一発撃ったら、ザーコがヒールを唱えるまでダメージが入るように成って来た。風魔法も使ってたけど風魔性のスキルはLV5になったし、もう火だけに特化して行く。
作戦開始から十日後、ついにその時がきた。火魔法スキルがLV7になった。装備のボーナスで+2にもなっているし威力はスキルLV9相当だ
「ナパーム」
見えていた部分がポリゴンになって消えた。やった、終わった!!
『ザーコを倒しました。経験値千三百、千G、クリスマスの飾りを十六万四千百六十個、レシピ【ランダム】を手に入れました』
飾り多すぎ! 何だよ十六万個越って! 超インフレ起こしてんじゃん!
『“真のザーコキラー”:ユニーク称号。チュートリアの中だけでザーコを倒したものに与えられる称号。いや倒す人居ないと思っていて、作るだけ無駄じゃないかって制作会議の中でも話題には成ったんだけど、用意するだけ用意しておけば良いんじゃない、って事で、とりあえず用意しておいた。
凄いね貴方。相当時間を無駄にしたと思うから、これからのゲームが楽になるようなメリットを用意しました。NPCの店売り価格が通常四分の一ですが、偶にボーナスが付きます。百個に一個位、二分の一になる、残りの九十九個は従来通りの価格のまま。悪魔系モンスターに与えるダメージが二倍になる』
先に悪魔系モンスターに与えるダメージの方を書けよ! メリットしょっぼ!! って思っちゃったよ。そういえば、そろそろクリスマスイベント終了だったな、折角貰ったんだから期限切れになる前に渡そう。
『飾りをありがとう。この町のランキングで一位になったよ、引き続き飾り集めをよろしくね。これは集めた飾りに対するお礼だよ』
十六万個以上納品したんだから、もう少し驚けよ鹿! 帰還スクロール、HP回復ポーション、SP回復ポーション、MP回復ポーション、宝石箱、レシピ【ランダム】、LV3魔法書一冊【ランダム】、LV4魔法書一冊【ランダム】、スキル熟練度+3【ランダム】のアクセサリーを手に入れた。
終わった、終わったんだな。ゲームのエンディングに入ったような気になる。MMORPGなんだから終わり何て無いんだけど、物凄い達成感が出来た。
『おめとうございますカトウさん!』
シャルが自分の事のように喜んでくれている。
『やるじゃないカトウ、見直したわ。この短期間で火魔法スキルをLV7まで上げるなんて大したものよ』
太もも辺りをバンバンと叩きながら先生が褒めてくれている。叩かれて喜ばれる趣味は無いんで、その辺にして下さい。
『役立ったようで何よりじゃわい』
本当に師匠のお陰です。ただ、もう少し性能が低くて安かった方が良かったです。
『おめでとうございます! カトウさん』
見た事が無い女性が抱きついて来た。和らい感触が当たる、ムフフ、これは何というか、エヘへ、体がとろけそうになる。え? 慌てて両上腕部を掴んで引き離す。
「貴方誰ですか? いきなり何抱きついて来てるんですか!」
びっくりした、まったくもう、腹立たしい事この上ないですよ。周りに人が居なかったら、もう二時間位このままで居たかった。
『酷い。私の事を忘れてしまったんですか? ビジンですよ。相変わらずサディストですね。でもそんな所も良いです』
え? 全然違うじゃん。ちょっと前まで骸骨だったじゃん。でもこれ位の肉付きなら、全然有りだよ。
『あのちょっと、良いですか。どちら様でしょうか?』
ビジンと私の間に体を割り込ませ、少し不機嫌な感じでシャルが問いかけている。
『修羅場じゃな』『修羅場よね』
師匠と先生が無責任な発言で楽しんでいる。修羅場じゃねーよ、二人とも他人だしというかNPCだよ。
『あら、ごめんなさいね。紹介が遅くなりました。カトウの嫁のビジンです』
『よっよっよ嫁ーーーー!』
シャルがトンデモなく驚いている。
「だっ誰が嫁だ! 勝手に嫁とか言うなや! 勘違いしないで下さい、先日餓死しそうな所を助けただけです」
『そうよねー、カトウにそんな甲斐が有る訳ないものねー』
『なんだビックリしちゃいました。ただの勘違いさんなんですね』
シャルは相変わらず苛立っているようで、言葉のはしはしに棘を感じる。
『いいえ勘違いでは無いですよ、私の大切な物(特選レシピ)、人生そのものを差し上げたんですから』
周りからの視線が集中する。いやいやいや、慌てて手を大きく振って否定する。
「ちがっ違いますよ! 料理のレシピを譲ってもらっただけです」
『え? じゃあ、このレシピって、ビジンさんの物だったんですか! それを私に貸し出したんですか!』
シャルが私にグイグイと詰めよる。目が血走っていて怖いんですけど。
「はい、そうです。何か問題がありましたでしょうか?」
シャルはビジンの方に向き直して、両手を、まさか、そんな。
『師匠! 師匠と呼ばせてください。料理スキル上達に大分役立ちました。有難うございます』
ビジンの両手をしっかりと包んで、両手握手で喜んでいる。まあ、喧嘩にならなくて良かったわ。
----- お ま け -------
主人公とは別人
今日はクリスマスイベントのランキング発表日だ。ラスト三日間はランキングが更新されないので、それぞれがどれ位まで納品しているか分からない。
うちは四十人で一チームを形成しているので、メンバー全員からの飾りを集めているし、放置露店で買い取りもしている。なので、一旦順位を落として、ワザと少なく納品していた。残りの三日間でため込んでいた飾りを一気に、かつ、どんどん納品していった。
さて、百位から順々にさかのぼっていく。楽しみは最後まで取っておくタイプだ。凄くドキドキしている。もうタマラン、これだけご飯が何杯でも食べれそう。嘘です、一杯が限度です。
どれどれ、だいたい十万個越位までは頑張っているけど、十一万、十二万位まで納品しているところは少ない。いよいよ十位だ、十三万個か頑張ったねウンウン、そして三位、十四万個か頑張ったねウンウン、相手が悪かったよ仕方ないよ。
二位、十五万八千二個、ドロ猫ちゃん、え? 私が二位なの? てか一位誰よ、今まで一位になりそうなライバルってあらかた出てた筈だけど。
一位、十六万五千百七十六個、腹出るカトウ。 ええー!? 十六万個越ってなんだよ! チートじゃん。もしかしてチュートリアル止めて普通にゲーム始めたの? いやSNS最近更新されてなかったけど、チュートリアル中な感じだったじゃん。
しかし、流石カトウさん凄いわー、やり込み度は半端ないですね。後でおめでとうって言わないとな。でも、次は負けないんだからね。
まだ終わりじゃないです。もう少し続きます。もう少しです。もう少しが何文字かと言われると、答えられませんが、そんなに長く成らないと思います。5話位? うーん分かんない。もうしばらくお付き合い下さい。
あっ付き合うって言っても、変な意味じゃ無いんだからね! 勘違いしないでよね!




