表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

手土産は手作りお菓子

 大泣きしてからクゥとの距離はさらに縮まった。

 クゥの仕事の日は休み時間や仕事終わりに他愛もないお喋りをする。

 その時間がとても待ち遠しくて貴重なものになっていたが、クゥには家族がいる。やらなくてはならないこともあり、仕事終わりのお喋りもそう長い時間はとれなかった。

 でも、それは仕方のないこと。そうやって自分に言い聞かせていたらクゥから「休みの日に遊びに行かない?」と誘われた。


「え?いいの?休みの日は家のことするって言ってなかった?」

「家でね、マゥと仲良くなったこと話したら遊んで来たら?って言われたんだ」

「でも、いいの?」


 クゥから家の話は聞いている。遊べることはうれしいが、だからこそ躊躇する。


「なら、家族に紹介するから、家に遊びに来るのはどう?皆もクゥに会ってみたいって言ってたし、それならいいでしょ?」

「うん。私も会ってみたかったから嬉しいな」


 そうしてクゥの家へと遊びに行くことが決まったので、こっそりと準備を始める。

 クゥが可愛いと言っていた籠がどこで売っているのかを別の従業員から聞き出して、ついでにお土産用の買い出しもすることにした。

 

 お土産は高いものだったりすると遠慮するだろうから、手作りのもの。クゥはお菓子が好きだし、お母さんの身体のためにドライフルーツも使おう。

 甘くてドライフルーツを使うお菓子。

 比較的簡単に作れるものと悩んで、作るものはビスコッティにした。

 滋養のある食べ物として卵もよく売られている。砂糖は高いけれどそこは目を瞑ってもらおう。それにここは湯治客が多いのでお土産用なのかお菓子もよく売られているので値段はともかくとして砂糖は簡単に手に入る。

 なのでこの街ではクッキーやケーキもそれなりに売られている。


 小豆があれば草餅とかもいいと思ったんだけど明日持ってくとすると硬くなっちゃうしね。


 買い揃えてきたのは小麦粉に砂糖に卵。

 それから菜種油。

 ナッツを何種類かとお酒に漬けたドライフルーツ。


 この街は湯治に来る人達がそれなりにお金を持っているせいか嗜好品がかなり豊富に売られている。クゥが気に入っていたいた籠もおしゃれ用のものなのでクゥは買うつもりがなかったらしい。


 確かに大人としてちゃんと働けるのがクゥだけだとしたら余分なお金はないだろう。だとしてもクゥが全部我慢しているわけではない。ちゃんと出来る範囲でオシャレをしたり、お菓子を食べたりもしている。


 籠プレゼントしたら気にするかなぁ。喜んで欲しいだけなんだけど施しだと思われたりしたら嫌なんだけど、出来ればクゥの家族にも幸せになって欲しいし…。


 もう籠は買ったのに、どうしても不安になる。

 

 こんな時は身体を動かすのに限るよね。遊びに行くのは明日だし、とりあえずはお菓子を作ろう。


 材料を持って共同炊事場にやってきた。今はあまり人がいない。端の方のオーブンに火を入れて準備を始める。

 ボールに小麦粉と砂糖をふって入れて、真ん中をくぼませて卵と油を入れてザックリと混ぜる。

 粉っぽくなくなったところでナッツを混ぜて、かまぼこの形にしたらオーブンで焼く。

 今回は3種類作るつもり。

 ナッツ入り、ドライフルーツ入り、ナッツとハーブが入ったもの。

 かまぼこ型に整えた生地は一緒に焼けるので天板に3つ並べてオーブンの中へと入れる。


 これ簡単だし失敗しないんだよね。

 何よりもオーブントースターでも焼ける気軽さが好きだった。


 20分ほど焼いたら取り出して網の上で粗熱をとる。

 この状態だと柔らかで甘いパンのような、クッキーなような味だ。

 これを幅1cm程度に切り分けて、最初に焼いたより少し長めに焼く。

 真ん中を押して堅くなってたらちゃんと出来た証拠。

 また網に並べて粗熱をとったら出来上がり。


 粗熱をとってる途中のビスコッティを味見する。


 うん、いい味。

 日持ちもするし、お茶にも合う。

 ハーブ入りのは実は栄養価も高いので行動食としてもオススメなのだ。

 それにこちらの世界だとお菓子で堅い食感って実はあまりない。


 あとで何かに使ってもらえるように大きめの瓶に味別に入れてリボンをつけたら完成。

 それとここまで来る間に見つけたお気に入りのお茶。それから忘れちゃいけない珈琲。


 個人的にビスコッティには珈琲が合うと思うから。

 なので強制的に飲んでもらうつもりで珈琲ドリップ用のガーゼで作ったネルもお土産にする。

 それから保存魔法をかけたミルクと果実水。

 ミルクはミルク珈琲用である。

 あとは口当たりの良い桃ような果物も入れた。

 この果物はお母さんが好きだとクゥから聞いたから。

 しかも、これ、意外と日持ちがする。

 ちゃんと保存すれば魔法なしでも1ヶ月程持つらしい。


 それをクゥが欲しいがっていた蓋付き籠の中に敷布をして並べていく。

 持ち手のところにレースのリボンもつけてお土産だということを強調してみる。


 うん、完璧。

 あとはどうやって籠をクゥに受け取らせるかだけど、これは出たところ勝負で大丈夫だろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ