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モブだって人生は激流 (後編)

突然の人生の転機の結果は?

 結局、王命に従うことになりました。 もともと拒否権は無いんですけどね。


 正直、相手が王子だったら私はもっと抵抗しましたね。

まず何よりも結婚相手として見ることは困難。

そして彼は色々な点で私の手には負えません。 振り回されて疲れ切ってしまうのは確実。

……ほら、無理でしょ?!

その点は王たちも分かっていたらしく、居なくなったのがフィーだけだったなら王子の相手は他の令嬢を検討するつもりだったそうです。

幸か不幸か王子たちは2人揃って出奔しゅっぽん、相手がレーヴなら私の説得も今後も『逆に何とかなりそう』と思ったとか……。



「レーヴは、いつから、どこまで、知ってたの?」

「王子補佐・王太子妃(候補)補佐として扱われると分かった瞬間にピンときたな。 どっちかが就任出来なくなった時の予備だなって……。 ついでに、アーシアがティーヴの相手役を押し付けられることはないだろうことも予想できた。」

「私のことまで予想してたの?」

「アーシアだって全く気付かなかったわけじゃないだろう?」

「……気付きたくなかったけどね。」

「学園や社交界で『理想的な組み合わせ』としてカップル扱いで見られたことも有ったよな?」

「さりげなく睨にらみつけてくる視線は結構こわかったわよ。」

「探るような気配も煽あおるような囁ささやきも感じてただろ?」

「全部、気付かないふりで通したけど……それはレーヴもでしょ。」

「いちいち相手してなんていられるか。」


「結婚相手として考えたことないのも、お互い様よね?」

「ティーヴたちが2人揃って、ってのは想定してなかったしな。」


「で、事情を聞いたときの感想は?」

「驚いて、呆れて、色々考えて……なんとかなるだろうと受け入れた。」

「あの命令を聞いたときの感想は?」

「説明を受けた時に予想できたからな。 フィーが相手でなくてよかった、とか、そこらの令嬢じゃ無理だよな、とか、アーシアとなら色々な意味で上手くやれるかも、とか……。」

「なんとかなるだろ、って?」

「アーシアは? 聞かされた直後はさすがに混乱しかけたみたいだったけど。」

「……私もレーヴと同じような感じね。」


「……こっちも似た者同士だと言われそうだな。」

「確かに立場は似てるけど、複雑な気分だわ。」

「相手に不満が?」

「自分で言う? 複雑な気分だけど、不満や不安はほとんど無いわ。」

「それは良かった。」


「で、他には何か?」

「王太子妃も王妃も、私の人生設計には無かったもの。 できるだけ目立たず穏やかに生きていこうと思ってたのに……。」

「アーシアの立場と能力では贅沢すぎる望みだな。」

「予想外が重ならなければ叶うはずだったのよ。」

「そんなのは周りが許さないさ。 もう覚悟を決めろよ?」

「ちゃんと覚悟を決めるから、少し待って。」

「分かった。」


 レーヴに聞きたいことはキッチリ聞いた……はずなんですけど、問い詰めるはずが言いくるめられたような気がするんですよね。



 さて、その気の無かった2人の結婚です。 王命なので、1つの政略結婚です。

 普通だったら『契約結婚で良いよね』で済ませるんですけど、王位継承者問題が有るので『白の結婚』は不可能です。

とはいえ、あまりにも突然のことだからと、2年は『白の結婚』の許可をもらいました。

レーヴも巻き込んで2人で王たちを説得しましたよ。



 諸々の調整のために少しだけ延期された結婚式と立太子式・立太子妃式は無時に終わりました。

 トンデモナイ事情やら突然の大幅過ぎる変更についての国民や招待客への説明? あっさり事実が明かされましたよ?

出奔しゅっぽんした面子めんつの今後のことも有るし、強引な誤魔化しより信頼が大切だし?


「相手がアーシアで良かった。」

 誓いのキスの直後、耳元でのレーヴの囁きに必死でポーカーフェイスを保ったのは誰にも内緒です。




   ********************


 そして、結婚・立太子・立太子妃から2年。

 実は予想以上に上手くいってます。


 今、妊娠3か月だったり……。

 レーヴとは、人目の無いところでは大喧嘩もしました。

王宮って、壁が厚いから各部屋の音や声が漏もれることが無いんですよ、助かります。

思いっきり言い争うことができるおかげで不満を溜ためることもありませんでしたから。

 一緒に乗馬や視察や議論して、意見も交わし理解を深めストレスも発散しましたし、ね。

 色々な場面で『似た者夫婦』と言われますけど、気にしないことにしてます。

 レーヴの、ツンデレならぬクーデレっぽい部分には驚かされましたし、今でも振り回され気味ですけど、それも気付かないことにしてます。

『白の結婚』が認められた当初の2年より短い時点でレーヴに、妊娠が判明した時点で周りにバレバレな気はしますけど……。


 王たちは今も元気で現役です。

後継者が確定したことで心身の負担が減り時間の余裕は増え、夫婦仲は今までより良くなったみたいですし、私の妊娠で楽しみが出来て、ますますパワーアップしてるくらいではないでしょうか。

嫁姑問題も無く、私たちとも仲良くやってますよ。

 巫女になったのは私のハトコですが、彼女にはうってつけだったようで生き生きしてます。

歴史や伝承や薬草研究が大好きで、『王家の血を少しでもひいてればいいなら私でもいいよね。』と言い続けてましたから。

小説の中で神殿に押し掛けた子爵令嬢とは彼女のことですから、あの騒動が起きずに済んだのも助かりましたしね。

 王子とユリアナは結婚して、ソレス公爵家の領地を拠点に夫婦で冒険者してるそうです。

ソレス公爵(レーヴの親)を頼ったのは王子の案でしょうけど、さすがにディアナ公爵(フィーの親)を頼れなかっただけでなく、立太子関係での周り(レーヴ含む)の説得に協力してほしかったんでしょうね。

 フィーとカイルも結婚し、ディアナ公爵領で食堂をやってて、繁盛してるらしいです。

フィーは真正面から自分の親に突撃したらしく、それを聞いた時には彼女らしさに笑ってしまいました。

 小説で巫女に選ばれていた伯爵令嬢はといえば、当然ながら巫女として名前が出ることは無く、今回のドタバタの調整を兼ねた夜会で出会ったソレス公爵家継嗣(レーヴの兄)と婚約したそうです。


 え? この騒動の外交への影響や内部の混乱?

 王もレーヴも、そんな事態は余裕で回避。 王妃も私もスルースキルはほぼ完璧ですしね。

誤魔化さずに明かしたのも高評価につながったようです。

 むしろ、国内外ともに、お祝い特需で経済効果バッチリでした。

 レーヴは王の甥であるうえに正式に王たちの養子になりましたし、私の実家である侯爵家は初代の王の弟の直系で、王家の血が薄まる心配は無いとも言えるため、要らぬ口出しを封じることもできてます。



 さぁ、小説と違って、まだまだ現実の人生は続きます。 

 モブだからと油断してたら小川から激流に急変した人生ですけど、ともに歩む相手も居ますし、親兄弟や親友も居ます。

 顔を上げて、笑顔で幸福を呼び込みましょう、明るい将来に向けて……。




   ********** (本編)完 **********

もとの短編の『結』とエピローグの部分という感じ。 本編完結であり、この主人公の視点も終わり。 主人公とレーヴの会話が大量に、そして設定その他の加筆修正も結構追加してあります(汗)。

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