9話. これからの課題がありすぎる!
「まず最初に考えないといけないのは、どうやって元に戻るかよね?」
ココちゃんがしっぽをブンブンと振りながら話し始めた。冷静に話してはいるものの、体は正直で仕方がない。
「私が思うには、もう一度思いっきりぶつかってみるのはどうかしら?」
なんとも恐ろしい提案をしてくるものだが、思い返すとそれがきっかけのような気がする…
「わかった!やってみよう!さっき凛子ちゃんを助けようとした時に、犬の僕の方が足が早かったから、ココちゃんが僕に向かって走ってきてくれる?僕、なんだか目がボヤけて近くが見えないんだよ」
僕がそう言うと、ココちゃんはすんなりと了承してくれた。
「じゃあ、アンタは動かないでそこにいてよ!由利江ママ達もいるし、何度もチャレンジできないんだから!」
そう言い残して遠くへと走っていく。
あ、このくらい離れると逆にちゃんと見えるんだ!猫の目って面白いなぁ~
なんて考えながら待っていたら、一気に全速力で僕に向かって走ってくる音がきこえてきた。
よし!少し痛いかも知れないけど、このままぶつかってきっと元通りの僕たちだ!
そう思った瞬間…恐怖に負けて反射的に真上に跳び上がって避けてしまう…
うわ!!この反射神経!!猫ってすごい!
…あ、避けちゃった…
少し先で急ブレーキをかけて、ゆっくりと振り向いたココちゃん…絶対に怒ってるよね?
ゆっくりとココちゃんの方を振り返る…
ママさん、仁美さん、凛子ちゃんは、僕たちが新しい遊びを考えたのかと思って、お茶を飲みながら楽しそうに眺めていた。
「ハヤテ~アンタいったい…何してるのよ!?動かないでって言ったじゃない!」
あ、やっぱり怒ってた…
「はい…返す言葉もありません。ごめんなさい。でもさ!猫の反射神経ってスゴいね!真上にあんなに高く跳べるなんて!犬の僕は絶対にできないし、ビックリしたよ!」
思わず猫の凄さに驚いて、感想を言ってしまった…
でも、その言葉を聞いたココちゃんは少し得意気になって
「そうなのよ!アンタみたいな犬と違って、猫はすごいんだから!特に私は特別な猫なのよ!」
意図をせずご機嫌がなおったみたいで、再度チャレンジをしてみることにした。
さっきと同じように距離をとり、僕はじっと動かないでココちゃんの走る足音を聞く。
『本能に負けるな!逃げちゃダメだ!跳んじゃダメだ!』
―ドンッッッ―
とてつもない衝撃とともに2匹ともひっくり返る…
頭がクラクラする…
ココちゃんの方は大丈夫だったのかな?
「キャー!!ふたりとも大丈夫!?」
「え!?ちょっとハヤテなにやってるの!」
驚いて慌てて椅子から立ち上がり、走ってくるママさんと仁美さん。
凛子ちゃんはビックリして動けないでいる。
僕のところにはママさんが駆け寄って来て、
「ココ、大丈夫!?」
心配そうな顔をして僕を優しくそっと抱きあげる。
ココちゃんのところには、仁美さんが駆け寄って行き、
「ハヤテ!お遊びでもココちゃんにケガさせるようなことをしてはダメでしょ!…ケガはしていない?」
そう言いながら、ひっくり返っているココちゃんの様子を見ながら撫でている…
『ああ…ココちゃんも僕も痛い思いしたのに、失敗しちゃったのか…』
ぶつかった衝撃でクラクラしている僕でも、元に戻ることができなかったと…すぐに理解ができた。
仁美さんは、犬の姿のココちゃんが無事なのを確かめると、直ぐに僕を抱いたママさんのところへ走ってきて
「由利江さん、うちのハヤテが本当に申し訳ございません…ココちゃんの様子はいかがですか?」
申し訳なさそうに、辛そうな顔をして頭を下げて謝っている。
仁美さんに謝らせてしまうようなことをしたのに、元に戻れなかったことが余計にツラい。
「いえいえ、2人でお遊びしててのことですから、本当に気にしないでくださいね。1回目は成功してたのに、うちのココが動かなかったせいもあるんですもの。ハヤテくんの方こそ大丈夫ですか?」
ママさんにまで謝らせてしまった…
凛子ちゃんも遅れて近くに来たけど、心配そうな泣きそうな顔をして見ている。
『僕はほら!!元気だよ!!』
そう言わんばかりにママさんの手からすり抜け、ココちゃんの元まで行った。
ココちゃんもその場の匂いを感じたのか、さっと起き上がり僕に顔を近づける。
「僕たち仲良しなんです!ピンピンしてます!」
「私たち仲良しなんです!何ともないんです!」
お互いに仲良しアピールをして、どうにか誤魔化そうと協力した。
ママさんも仁美さんも凛子ちゃんも、ホッとした顔をして僕たちを見ている。
『良かった…どうにかなった…』
その後は、僕もココちゃんもママさん達の膝に乗せられて、おとなしく3人のお喋りを聞いて…
元に戻ることはできないまま、家に連れ帰られることとなった。




