8話. 納得はいかないけど理解はしたわ!
―ハッ―と我に返った。
お漏らしまでして…あられもない姿で寝転がっている自分を…仁美さんに抱かれた状態で見下ろしているハヤテがいる。
『もう私…こんなんじゃ生きていけない…あの駄犬の姿になっちゃって、オマケにこんな姿をアイツにみられるなんて屈辱にたえられないわ!』
慌てて起き上がり、何事も無かったかのように姿勢をただす。
「クゥーン…(違うのよ!)キャンキャン!(私よ!ココは私!)」
しゃがんでいた由利江ママの膝に手を置き、必死に訴えてみる。
発する声まで私のかわいらしい甘い鳴き声ではなく、全く別のものとなっていた…
「ニャーン(大丈夫だよ!)ニャーーーーン(犬ならよくやることなんだよ!)」
甘ったるいような猫のかわいい声が聞こえる。私の姿で鳴いているハヤテからは、心配する匂いと、気づかってくれている優しい匂いがした。
私は仁美さんに抱かれているハヤテの方を見て
「ワン!ワン!(うるさいわね!そんなの知らないわよ!)」
と吠えた。
『あれ?なんかアイツの喋っている言葉が理解できるわ!?』
体が入れ替わったせいなのか、元は自分が猫だったからなのか…ハヤテの喋っている言葉が理解できた。
「あらあら、まるで2人でお喋りしてるみたいね」
「本当に!ぶつかった時にはどうなるかと思ったけど、それがきっかけで仲良くなれたのかしら?」
由利江ママと仁美さんが、嬉しそうな匂いをさせてのほほんと喋っている。
「ココとハヤテはもう大の仲良しのお友達だもんね~」
凛子もこの通り…まるで転んだ私のおかげよ!とばかりの得意気な匂い…
『もう友達だとか仲良しだとか、どうでもいいのよ!とにかくどうにかして元の体に戻らなくちゃ!』
仲良くなったならお2人でどうぞ、とばかりに仁美さんは元の体の私を優しく撫でたあと、そっと地面におろした。
向かい合う私と、私の姿をしたハヤテ…
凛子はというと、ハヤテと走り回って遊ぶのには満足したようで、もうこちらには興味無し!とばかりに椅子に座り、お菓子を食べ始めていた。
「ミャーー…(よくわからないけど…ごめんね)」
最初に声を発したのはハヤテだった。
金色の綺麗な瞳をそらしながら、体は小さく縮めて怯えている様だった。
心の底から謝っている匂い、どうしたらいいかわからずに戸惑っている匂い、私に対しての優しさしかない匂いだった。
「クンクン…(まぁ…アンタのせいじゃないと思うし、謝らなくてもいいわよ)」
鼻の頭をひっきりなしに舐めては、気持ちを落ち着けようと試みた。




