6話. 新しい世界~ココの戸惑い~
『お家のシャンデリアのキラキラみたい…』
目の前がバチンッと一瞬眩く光り、暗転したのちにハッと我に返った。
凛子は大丈夫だったかしら?ケガしてない?私が大暴れしちゃったから…
「いたた…もぅ~ココが暴れるから転んじゃったじゃん!」
尻餅をついたお尻をさすりながら、少し怒った顔をしている凛子。
そのすれすれの所には滑り台の階段があった。
大きなケガをしていないのを見て、ホッと一安心。
近くまで駆け寄ってきていた由利江ママも仁美さんも、凛子が大ケガをしなくてホッとした顔をしている。
激しい後悔とともに、その原因となったハヤテへ怒りを覚えつつ起きあがり、安心をして息を大きく吸い込む…
『……!?なに!?このむせ返るような匂い!?』
草や花の匂い、机の上の食べ物の匂い、凛子達の匂い、その匂いから感情のような得体の知れない情報が鼻から大量に流れ込んでくる!
『匂いの種類が多すぎる!!なんなの?この感覚は!?』
一気に頭に入ってくる情報量の多さに体が動けなくなってしまう。
「ハヤテ~大丈夫?盛大にココちゃんにぶつかっちゃってたけど…」
カチンコチンの石みたいに固まっている私に、仁美さんが不安そうな匂いを漂わせ声をかけてきた。
『いやいや、貴方のお宅の駄犬さんはあちらですよ…』
そう思いながら目の前を見ると、困惑して同じようにパニックになった匂いの私…
あれ?私が目の前にいる…
突然お庭の草原に鏡が出てきたような感覚がして、首をかしげる。
鏡の中の自分はちがう動きをしている…
そして、強烈に匂う口の周りのウネウネの臭いと、泥臭い体臭にクシャミが止まらない!
続いて吐きそうになり、嗚咽をするが何かが出るわけではなく、心配そうな仁美さんの匂い…
『信じたくないけど…私…駄犬の中に入っちゃってない!?』
いつも毛繕いをしていた、しなやかで黒く輝く細い手…じゃなく茶色いようなオレンジ色のような短く太い手がそこにある。
腰を抜かして動けなくなったまま、お尻の下が生暖かくなるのを感じる…
『な…に…これ…私お漏らししちゃったの!?そんな…そんなことって…』
絶望と恥ずかしさでもう消えていなくなりたい…
「あらら…由利江さんすみません…うちのハヤテ、ビックリしておもらししちゃったみたいで…お庭に匂いが残ると申し訳ないので、流すお水をいただけますか?」
申し訳そうな匂いを漂わせて仁美さんが言う。
「あはは、仁美さん全然お気になさらないで!元はと言えば大騒ぎして暴れたココがいけないんですし、雨が降れば匂いも消えるし大丈夫よ~」
あっけらかんと、穏やかな匂いのまま、少し心配そうに私を見ている由利江ママ。
「それにしても、せっかくの気持ちのこもったプレゼントだったのに、ココは初めて見たものだからビックリしちゃったみたいでごめんね…ハヤテくんもビックリしちゃったよね?」
私をハヤテと呼びながら頭を撫でようとする。
『今私はそれどころじゃないし、ハヤテでもない!由利江ママとはいえ触らないでちょうだい!!』
威嚇をして頭を撫でられまいと手足に力を込めたはずなのに…
気付いたときには仰向けに転がり、なぜだかお腹を全開に見せている私がいた…




