20話. 決行当日
さて、ココちゃんが脱出する準備は整った!
あとはうまく隣のお庭に行って、中身が入れ替わってしまった滑り台の前、そこで2匹でゴツンッとぶつかってみるだけだ!
『僕もそれしか元に戻る方法が思い付かなかったけど…ココちゃんがまさかここまで協力して、こんなに色々と集めてくれるなんて思わなかったなぁ~』
そんなことを考えながら、僕は一足先に小屋の屋根に跳び乗り、ココちゃんが1本ずつ咥えて渡す木の枝を、同じように咥えて受け取り、屋根から落ちないように手でおさえた。
すぐにココちゃんも屋根に登ってくる。
2匹が乗ってギリギリ落ちないくらいの広さしかない屋根の上で、僕は言われた通り壁に近いところに仰向けになり、ココちゃんが壁と屋根に立て掛けた枝を両手両足で抱える。
1本、2本、3本と順番に立て掛けていくのを下から抱えたが、犬の体でうまく並べるものだと感心してしまった。
「ココちゃん凄いね!長さもちょうどいいし、渡すのもうまい!」
「そりゃそうでしょ!ほんと、動かしづらい体なのに私って器用よね~」
なんて言いながらも、褒められて嬉しそうだった。
「さて、行くわよ!私がちゃんと壁の上に乗れるようにおさえてなさいよ!歩くと折れちゃいそうだから、軽くジャンプするからね!」
そう言うと、小屋の屋根から枝に足をかけて、壁の上に向かってジャンプした。
「グェッ」
枝がしなって僕はお腹を押されて変な声が出た…でも必死になって枝を離さないように、両手両足でしっかりと抱えたままでこらえた。
無事に壁の上に立ったココちゃんは、下に見えるゴミを入れる箱に飛び降りる。
―ドンッ―
結構な音が響いたが、みんな留守だったので本当にラッキーな日だった。
「ねぇ、アンタこっちに来るときにそこにある青いボール持ってきておいてよ!」
ココちゃんがそう言いながら、さらに下の地面へと飛び降りた音が聞こえた。
「ココちゃん、大丈夫だったぁ?」
僕は壁の上に移動してココちゃんの無事を確認すると、もう一度小屋の方に戻り、ペコペコに空気が抜けている青いボールを咥えた。
そして、ボールを咥えたまま小屋から壁、壁から地面へと身軽に降りる。
脱出するまで一苦労だったココちゃんは、僕を見ながら『はぁ…』とため息をつくと、
「あー早く元の体に戻りたいわ…」
そう言って少し不機嫌そうな顔をしていた。
ボールはココちゃんに言われた通り、ゴミを入れる箱の横に置いておき、次はお庭に入るための穴まで案内する。
「これ、アンタの体で通れるかしら?ギリギリっぽいけど…でも、やってみるしかないわよね!」
そう言って、穴の縁に両手をかけると頭を突っ込み、両足でグッと地面を蹴った。
腰あたりまで穴に体が入り、巻いたシッポが引っ掛かったまま、浮いた足をバタつかせている。
『僕の体は柴犬にしては小さい方だから良かった…』
ココちゃんのバタバタしている姿を眺めながら、そんなことを考えてボーッとしてたら…
「ちょっと!アンタ!後ろから押すとか手伝いなさいよ!シッポがつっかかって痛いし、ギリギリなのよ!」
ココちゃんに怒られてしまった…
「ごめん!今後ろから押してみるね!」
あわてて両手をついて押してみるものの、猫の手では全然押すことが出来ない。
今度は頭と両手をつかって、全力で押してみたらシッポまでスポッと入った。
「ちょっと!!お尻に顔をくっつけないでよね!私の顔なんだから!!」
また怒られてしまったけど、ココちゃんは穴を通り抜けて、お庭までたどり着くことができた。
「あーーーもう最悪!元に戻ったら一番最初に顔を洗わないと!」
さらに不機嫌になったココちゃんの前に、僕はスルリと穴を抜けて「ごめんね」といいながら、手を舐めると顔をゴシゴシと洗った。
「いや、もういいわ!…私が手伝ってって言ったんだし…その…怒って悪かったわよ」
それだけ言うと、プイッと踵を返して滑り台の方へと歩き出した。
僕もココちゃんのあとについていった。
問題の滑り台の近くに到着する。
「滑り台の階段のすぐ近くだったよね?」
「そうね、アンタが左側から来て、私が右側だったわね」
ついに元に戻れるのだろうかと、胸がドキドキしてくる…
お互いに緊張した面持ちで、滑り台の階段の前でぶつかることができるように距離を取った。
「この前はココちゃんだけに走らせちゃってぶつかったから、今度は僕も走ってぶつかってみるよ!」
またうっかり跳びはねて避けてしまわないように、気をつけて走らないといけないな。
僕は弱虫な心をギュッと握りつぶした。




