19話. いざ!
お日様が昇って空が明るくなり始めた頃、早々と目が覚めてしまった私は、今日の予定決行が待ち遠しくて落ち着かなかった。
『よし!準備は整ったし、あとはアイツがいつ来るかという事だけね!』
いつでも試せると思うと、早く試してみたくて仕方がない!
とりあえず拾ってきた3本の枝は、真ん中に一番固そうなものを置き、3本を並べてみる。少し湿っていた枝も、お庭に置いて日に当てていたので殆ど乾いて固くなっている。
『うん、悪くないわね…』
さて、この少し潰れたボール…アイツがこっちに戻って来る時、ゴミの箱からの足場に使えると思うわ!
そして、踏み台はちゃんと小屋の横の定位置に置いてあるし…
あっという間に点検は終わってしまった!
あっちへウロウロ…こっちへウロウロ…
小屋に入ってボーッとしてみたり、小屋の屋根に登って辺りを見回してみたり…
『やること全然ないじゃないの!アイツが来るまであとどのくらいなのよ!?』
手持ちぶさたで、お庭で他にも何かが突然見つからないかと執拗に歩き回ってしまう。
『そうは言っても、凛子が幼稚園に行って由利江ママも家を出ないと決行できないし…仕方ないのよね…』
こちらの家はというと、晃樹さんは出張から帰ってきておらず、仁美さんの動向が気になるところだけど…
決行する時間に家から出てきたら、私がいないことにビックリして大騒ぎになっちゃうわよね…
時間を持て余しながら、そんなことを考えつつ待っていると、仁美さんが朝ご飯を持って、珍しく鼻歌まじりに家から出てきた。器を置くといつもの号令。
「おはよ~ハヤテ。待てよ~…よし!」
食べている私を仁美さんはニコニコとしながら眺め、
「ハヤテ~今日は友達とちょっと遠出して、お買い物とランチの約束があるから、お散歩は夕方になるけどごめんね~」
なんと嬉しいご報告!今日がその日とはタイミングが良すぎではないのかしら!?
なぜだか気持ちが焦って、ご飯を食べるスピードが早くなってしまったわ。
「あははは。今日も元気じゃん!安心、安心」
ご機嫌な匂いを漂わせながら、仁美さんは空になった器を持つと家に入っていった。
『唯一の心配事がなくなったわ!なんてラッキーなの!?今日は何だか全部うまくいって、元の生活に戻れる気がする!』
仁美さんにつられて、私もなんだかウキウキとしだしてしまった。
しばらくすると、キレイな服を着てオシャレをし、お花畑のようないい匂いをさせた仁美さんは
「行ってきま~す、ハヤテはお留守番よろしくね~♪」
手をヒラヒラとふりながら、軽快な足取りで出かけていった。
◇◆◇◆◇
由利江ママと凛子が、おしゃべりをしながら幼稚園へ向かう声が聞こえてきた。
『やっと2人が幼稚園へ行ったわ!そろそろアイツも来る時間ね!』
まるでアイツが来ることが、待ち遠しくて楽しみだとばかりに思っている自分がいて、ついイラッとしてしまった。
『いやいや、アイツは脱出の手伝い要員なだけで…』
自分の感情を否定していたちょうどその時、少し疲れた匂いと土臭い匂いとともに、私の近くにサッとアイツが降り立った。
「ココちゃん久しぶり!僕…やっぱり花壇の件で怒られちゃって…3日間も家から出してもらえなかったよ~」
そういうアイツを見たら疲れている様子で…思わず心配してしまった。
「アンタなんか、既に相当疲れてない?」
「いやさ…家から出られないから、ずーーーーっと凛子ちゃんと遊んでて…凛子ちゃんも『ココがいっぱい相手してくれるから嬉しい!』ってご機嫌でさぁ…離してくれなかったんだよ…」
その話を聞いて私はハッと気づいて、嫌な予感しかしなかった…
「アンタ…もしかして…凛子の望むまま、ずーーーーっと相手にしてたってこと!?はぁ…確かに犬ってそういうもんだったわよね…元の体に戻った時にどうしてくれるのよ!」
猫だった時の私は、相手にするのが疲れたり気が乗らなかった時は無視したり、棚の上に隠れたりしてたのに…
先が思いやられる…とは思ったものの、この体のままでいる方が大問題よね!
今日の目的を思いだし「まあ…いいわ」と、これからの脱出計画をアイツに伝えた。
「この踏み台は凄くいいね!さすが晃樹さんと仁美さんだよ!この枝とボールはココちゃんが見つけてきてくれたの!?すごいや!!」
アイツの素直な賛辞に少し照れてしまう。
「アンタが3日間出れないって怒られてるの聞こえたから、やるだけやっておいたわよ!あと、今日は晃樹さんも仁美さんも出かけてていないのよ!」
2人がいないのは偶然でしかないものの、枝とボールの功績にちょっと得意気になっている私がいた。
「さて!みんなが帰ってくる前に脱出を始めるわよ!」
アイツに声をかけ、さっそく2匹で準備をし始めた。




