16話. 下準備開始!
怒られているアイツの方に気を取られていたら、仁美さんが家からお散歩用の紐を持って出てきた。
「ハヤテ~お散歩に行くよ~」
『よし!この機会に何かいいものがないかとかチェックしないとね!』
気持ちがはやり、興奮してくるくると走り回ってしまう。シッポのバタバタも止まらない。
「今日は何だかご機嫌じゃない!?じゃあ早速行こうか!」
仁美さんのお散歩は、アイツの行きたいところに付いていくタイプのようで、うってつけだった。
まずは私とアイツの家の壁の隙間がどうなってるかチェックをしてみる。
「なに~?今日はそんなところが気になるのぉ~?奥まで行っても通れないよ?」
そう言いながらも奥までついてきてくれる。
細い小道にはゴミ捨て用のボックスが置いてあり、その横には2つの固そうな色違いの箱が置いてある。
突き当たりはT字路になっていてさらに狭く、他の家の裏側が見える感じになっていた。
チラッと本当の我が家の方を見て、アイツが抜け出してきたらしき穴を確かめる。
『あれがアイツが見つけた穴かしら?ギリギリ…通れる!?あのゴミを入れる大きなボックスは、登れさえすれば家に帰るのに使えるわね…』
そんなことを色々と考えて、ここは用がすんだとばかりに踵をかえす。
あえて私の家の前を通る行き方で、次の目的地に向かった。
家の近くの道路の脇に、車の出す嫌な臭いと、今まで嗅いだことのない男の人の匂いが染みついていて…何だか少し嫌な気がして、思わず足を止めた…
「急にはココちゃんのお家には遊びに行けませんよ~さて、次はどこに行きたいのかなぁ~?」
仁美ひとみさんにうながされる。
『さて、どこがいいかしら?何か脱出するための足場になるものが欲しいわよね…』
今度は仁美さんを公園の方まで連れてきた。
「ハヤテは公園とお寺が好きよね~やっぱり昔のお家を思い出すの?」
そんなことを聞かれながら、必死に木々の間を進んで行くと、ちょうどいい長さの木の枝を発見!
『この枝はうまく使えば足場にできそうね…』
枝を咥えて仁美さんに向き直り『これ!気に入りました!絶対に持って帰ります!』とばかりにシッポをフリフリ。
「え~木の枝?そんなのが欲しいの?おじいちゃん家では山を走ってたからなぁ…ま、いっか」
仁美さんのこういうところがスゴく好き。
動物とはいえ相手の気持ちを尊重してくれる。
『素敵なご主人様じゃない…ま、由利江ママはもっとスゴいけどね!』
そんなことを思いながら、また暫くウロウロと公園の中を物色する。
さっきよりは少し小ぶりだけれど、太さがある枝が落ちていた。
最初に咥えた枝を渡そうと、仁美さんに『持って!持って!』とばかりにすりよると、仁美さんは意図がわかったのか、ため息混じりに渡された枝を持ってくれた。
私は次に発見した枝を咥えて満足。
仁美さんは手に持った枝をくるくると振り回しながら歩いていた。
さらに他にも何か落ちてないか探す私に、
「ハヤテ~もう枝は要らないからね」
釘を刺されてしまったわ…
『今日の公園での収穫は2本の枝ね。明日も何か探さなくちゃだわ!』
そう思いながら、1本の枝は仁美さんに持たせたまま、もう1本は自分で咥えて物資調達のお散歩を再開する。
「次はいつものお寺さんかな?」
ここはアイツの匂いが強く残っていた場所なので、つられて何となく来たところだった。
『静かなところで、草木のいい匂いがして、何だか気持ちが落ち着くわねぇ。ここもアイツのお気に入りの場所なのね。そういえば昔のお家とか言ってたけど…どんなところだったのかしら?』
そんなことを思いながら、お寺さんの中も色々と物色したけど…まさかこんな大きな石なんて持って帰れないわよね。
思ったような収穫がないまま、今日は家路につくことにした。
◇◆◇◆◇
『今日は木の枝を2本持って帰ってくることができたわ!』
家に着くと小屋の近くに仁美さんが手に持っていた枝を置いてくれた。その近くに自分も咥えていた枝を置く。
「じゃあ、後でご飯持ってくるからね~」
家に入った仁美さんを確認すると、家の隅に置かれている草花の枯れた植木鉢をそっと倒してみる。
『カタン』と音がして倒れた植木鉢は割れずにすみ、中の乾いた土がパラパラと出てきた。
『割れたら使い物にならないと思ったからよかったわ…』
ホッとしながら中身を少しかきだし、鼻先で転がしていく。
『あっちへこっちへ転がって、真っ直ぐ転がってくれなくて、あーもう!』
イライラする気持ちをおさえながら、方向修正を繰り返し、目的の小屋の近くまで運んでいった。
どうにかして植木鉢を逆さまにする。
これもなかなか上手くいかなくて苦労したが、やっと逆さまに置くことができて、ホッとする。
『これを足場にして跳べば、小屋の屋根に登れるわよね?』
1度試しに跳んでみると、見事に小屋の屋根の上に登ることができた!
『苦労したかいがあって、眺めも風の通りもよくなって、あ~気持ちがいい!』
まるで、小屋の屋根に登ることが目的だったかのように思ってしまう。
散歩の疲れもあったのか、小屋の屋根の上で風に吹かれていると、思わずうとうととしてしまっていた。




