15話. もしかしたら…
『花壇…どうやったら元に戻せるんだろう…とりあえず、外に出しちゃった土を戻して…倒れたお花さんを直して…』
僕は花壇の外に散らかした土を手ですくうように戻してみる。そして斜めになったお花を手で真っ直ぐに…
なんて、うまくできるわけがない!
『あーママさんに怒られるかも知れないなんて、全く考えてなかったなぁ…幼稚園から帰ってくる前にどうにかしないと!』
何か隠せるものがないかと、壁際をうろうろとしながら探してみる。
『なんか、ここ、花壇で隠れてたけど、葉っぱとかがいっぱい溜まってる!葉っぱ持っていっても花壇のぐちゃぐちゃ隠せないかなぁ…』
そんなことを思いながら、たくさん溜まっている土にまみれた葉っぱを掘ってみると…あれ?丸い穴が壁に開いてる!?
『なんだろうこれ?まだ葉っぱとかがつまってるけど、ぜんぜん柔らかいし、猫の細くて器用な手なら奥まで掘れるぞ』
僕は頭の先までその穴の中に突っ込んで、掘り進めてみた。
『あ!壁の外が見える!!』
奥まで入ってみると、外の地面とはほとんど距離がないくらいの高さだった。
『ココちゃんの体だと余裕の大きさだったけど…僕の体だと通れるかな?ギリギリ位かな?…いや!試してみる価値はあるぞ!』
そのまま通り抜け、嬉しさで興奮しながら隣の僕の家へ向かう。
壁は低い、今の僕の体ならすいすい登れる!
念のため周りに人の気配が無いか確認して、小屋の中で丸まっているココちゃんの前にスッと顔を出した。
「ココちゃん!僕、出られた!」
興奮してうわずったままの声で話しかけると、突然のことに飛び起きたココちゃんは、小屋の壁に頭をぶつけてしまった。
「イタタ…ちょっと!ビックリさせないでよね!…って、出られたの!?スゴいじゃない!?どうやったの!?」
興奮気味に目をキラキラと輝かせて聞いてきたココちゃんが、ピクッと耳を動かすと
「アンタ!マズいわよ!由利江ママと凛子の声がうっすらと聞こえてきたわ!もうすぐ帰ってきちゃうから、早く戻りなさいよ!」
「うわっ!わかった!ココちゃんありがとう!とりあえず、ココちゃんが抜け出す方法頑張って探しておいてね!」
慌てふためきながら、ピョンピョンと身軽に壁を飛び越えて僕は帰った。
◇◆◇◆◇
『やっぱり猫の身軽さってスゴいわよね!犬と大違い!でも、アイツ…この短時間によく見つけたもんだわ…私も負けてなんかいられないじゃない!』
何かいい方法がないかと、さんざん探したはずの小さな庭をウロウロと探してみるけど、使えそうなものは…家に付いている何か音がする機械と、アイツの小屋、植木鉢と小さなおもちゃ…
『ろくな物が無いじゃないのよ…ほんとどうしろって言うのよ~』
イライラしながらゴロゴロと転がっていると、匂いを感じる必要もないほどに、珍しく怒った様な声の由利江ママと、あきれた凛子の声が聞こえてきた。
「ココ!小さな頃から花壇だけはダメだと何度も注意してたわよね!ここしばらくイタズラしないから、ちゃんとわかってくれてたと思ってたのに…花壇はママの大切な場所だからダメよ!」
「あ~あ、ママに怒られちゃったぁ~ココ悪い子ちゃんなんだ~」
アイツが2人にお説教されている声が聞こえる…
私も小さな頃は、シャンデリアの次に花壇でよく怒られてたわよね…怒られて、しなだれている様子が目に浮かぶ。
「3日間はお庭でのお遊び禁止!花壇直さないといけないんだから!」
由利江ママからの懐かしの禁止令が発令されていた。
「え~私もココとお庭で遊べないじゃん~」
不服そうな凛子の声も聞こえるが、日頃優しいママさんがお怒りなのは、本人もわかっているのでそれ以上は何も言わなかったようだ。
『3日間、アイツは動くことができないのね!お日様が3回昇るまで!何かしら使えるものを私は探すことにするわ!』
3日あれば何かしらお散歩で見つけられるかも知れない。
そう思ってやる気は出たものの…3日間はこの生活のままなのよね…と思うとため息が出た。




