13話. 君と話をしたい
僕は、家中がどこもかしこも眩しくて、常に人の気配がして落ち着かなかった。
ママさんもパパさんも凛子ちゃんも、僕を自由にさせてくれている。
だけど、ガチャガチャと色んな音がしてゆったりと休むことができない。
『いつもお庭の僕専用のお家で、風に漂う香りを嗅ぎながらのんびりと過ごしていたのに…』
残念ながらこの家にはそういった場所がない!
珍しく少しイライラとしながら、ふとココちゃんのことを考えた。
『ココちゃんは毎日この場所で暮らしてたんだから、きっと今はとっても寂しいだろうな…昨日の夜は悲しそうな鳴き声も聞こえてきたし…』
とても心配になった。
◇◆◇◆◇
凛子ちゃんの寝息が聞こえ始めたころ、どうにかココちゃんに会える方法はないかな?
そんなことを思いながら、どこかに外へ出られる抜け道がないか、家中に体をすり付けながら探検する。
玄関先の方まで行ってみたところ、首輪のところで『カチッ』と音がして僕が通れるくらいの小さな扉が開いた!
思わずビックリして飛びのいてしまった…
すると、すぐに扉が閉まってしまった。
もう一度勇気を出して、その小さな扉へと向かう。
『カチッ』
同じように小さな扉は開き、その先には月明かりに照らされたお庭!
『これで外に出られるぞ!』
お庭を走りだし、晃樹さんと仁美さん、そしてココちゃんがいる家に向かって走り出す!
隣の家とお庭の境目には網目状になった壁があったが、猫のジャンプ力なら!
思いっきり跳びあがったものの、よじ登るための足場がない…そして柵のてっぺんは内側にくるりと向いていた。
『ガシャン』
柵がむなしい音をたてて、ぶつかった僕はひっくり返ってしまった。
『ママさんやパパさんに気付かれてないかな!?』
心臓がドキドキして振り返ったが、特に気付かれたような動きは見えなかった。
すると小さなコソコソ声が聞こえた。
「もしかして…この匂いは?ハヤテ?」
壁越しに聞こえる声は、僕の声をしたココちゃんの声!
「そうだよ!ハヤテだよ!ココちゃんに会いに来た!」
嬉しくなってすぐに応え、飛び越すことができなかった壁に手をつく。
「アンタ!何やってるのよ!こんな時間に来たって、なんだか殆ど見えないし…その壁だって、私が自由に遊べるようにパパさんが作り直したものだから、抜け出すことなんてできないわよ!」
呆れたような、でも少しだけ嬉しいような声色が聞こえた。
「今日はね!ココちゃんが馴れない場所でツラい思いをしてないか心配になっ…」
喋り終わるより前にココちゃんの声が聞こえる。
「アンタに心配されるようなことはないわよ!…でも、心配して来てくれてありがとう…」
今までみたいに匂いで相手のことがある程度理解できていたのに、猫になるとそれすらわからないや…
でも、ココちゃんの『ありがとう』と言う言葉に、心の中があたたかくなった。
「ココちゃん!ココちゃん!まずはね、どうにかして君と会って話がしたいんだ!」
離れたままだとこれからの元に戻る方法も相談することができない。
多分離れていては戻ることすらできないと思う…
「え?私に会って話がしたいって…」
少し戸惑った照れるような声が聞こえる。
「ほら、入れ替わった時も近くにいてぶつかったし、このまま離れていたら無理だと思うんだよね!」
1人だけじゃ解決できそうにないし、やっぱりちゃんと一緒に考えた方がいいよな…僕はそう思って話を続けた。
「あ…ああ、そうよね」
ココちゃんはそう応えると
「でも、今日はちょっと初めてのことが多すぎて疲れてるから…明日の夜にまた来てくれる?」
素っ気なく言うと小屋に入ったようで、ガサゴソと寝床を準備している音が聞こえた。
「わかった!また明日の夜に来るからね!ココちゃんおやすみ!」
そういって僕は凛子ちゃんの寝ている部屋に向かって帰った。




