11話. なんだ?この世界は
結局元に戻ることができなかった僕は、凛子ちゃんに軽々と抱かれて、2人を見送ることとなった。
「仁美お姉ちゃん!ハヤテ!またすぐに遊びに来てね!ココも待ってるよ~」
なんて言われながら、僕は右手を持たれてパタパタと振らされてた。
「本日は本当に色々とお世話になって、ありがとうございました。私が皆さんとお会いしたいのはもちろんなんですけど、ハヤテもまた一緒に遊びたいと思うので。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる仁美さんに
「お隣さん同士なんだし、遠慮しないでくださいね。私達が外出中でなければ、本当にいつでも結構よ~。今度は気をつかって手土産なんか用意しないで、気軽にいらしてくださいね」
ママさんは賑やかに微笑みながら手を振った。
嬉しそうに手を振り、また少し歩いてから振り返り、手を振る仁美さん。
その横には困惑したような、諦めたような、悲しい表情の僕の姿をしたココちゃん。
『ココちゃんの表情はわかるのに、感情の匂いがわからない!』
今までと違い、相手がどう思っているのかわからずに、戸惑ってしまう。
一方ココちゃんは、このまま居座るわけにもいかないと理解しているようで、トボトボと仁美さんの横を紐に引かれて帰っていく。
「ニャ~(次に会う時には戻れるように考えとくよ!)」
僕はココちゃんにそう声をかけたが、何も返事はしなかった…
◇◆◇◆◇
初めて入った凛子ちゃんのお家の中は、ビックリするほど眩しく、キラキラと輝く物で溢れていた。
降ろされて歩いた廊下はピカピカのツルツルなのに、爪のカチャカチャした音もしない!
こんなに静かに歩けるんだ!と感心してうろうろと歩いてみたりした。
一番明るい部屋の扉が少し開いているのが見えたので、興味津々で寄ってみると、スルッと体が吸い込まれるように入った!
猫ってこんな狭い道も通れるの!?起こること全てが初体験で興奮が止まらない!
ご飯も僕だけ床で食べるのではなく、みんなと一緒に椅子に座って食べるらしい。
「ココ~ご飯だからこっちおいで~」
凛子ちゃんが呼び、トントンと叩いた背の高い椅子…
きっとこれはココちゃんなら跳べる高さなんだ!と思い、跳んでみるとあっさり座面に着地した。
出てきたご飯らしき物は、ポロポロとした山盛りの茶色ではなく、昔おばあちゃんが作ってくれていたような色々なものが混ざっている柔らかいご飯だった。
『おばあちゃん…元気にしてるかなぁ…会いたいなぁ…。
おじいちゃんは、おばあちゃんを悲しませて、どこに行っちゃったんだろう?』
そんなことを思い出して座っていると
「いただきます!」
みんなで揃った声が響いてビックリした!
「あれ?ココご飯食べないの?」
凛子ちゃんがスッと僕の近くまで器を移動させたので、食べていいのか!と思ってすぐに口をつけた。それは…とても、とても美味しかった。
「明日は幼稚園だから、早く寝なさいね~凛子おやすみなさい」
「おやすみなさいママ、ココもおやすみ~」
凛子ちゃんは掛けた布団の上に僕をそっと置くと、ママさんが壁の何かを触り、パチンと音がして部屋は真っ暗になった。
『わぁ~真っ暗になった方がよく見えるの!?』
また新しい発見に興奮しながらも、凛子ちゃんの邪魔にならないように、静かに丸くなった。
外からはドンッという音と話し声、そしてココちゃんの『クゥーン』という悲しそうな声が聞こえてきた。
僕は1日でも早くどうにかしなくちゃ!と固く心に決めたんだ!




