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サイボーグ警官の俺は凶悪犯を抹殺していたはずが、いつの間にか国家規模の陰謀に巻き込まれていた  作者: sornar


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リッパー編 ②

俺は鋏をだきしめるように抱えた。

訳もわからずついて行くと、竹河は裏通りの「REPAIR SHOP」へ入って行った。


「戦闘でダメージを受けた場合は必ずここへ来いよ。こいつらは非攻撃的プロトコルで医療支援のプログラムをされてる」


竹河は現れたロボ店員に脊椎を渡す。店員はアームで脊椎をつかみ、頭部の青い光で走査した。光が消えると、竹河の方を向き、合図のように甲高い電子音を放つ。


「その値段でいいぜ。支払いはいつもと同じだ」


竹河は電子クレジットに入金してもらった。


パーツを売っているのか。


俺の怪訝な視線に気づいたのか、竹河は言った。


「こんな事、誰でもやってる。規則に違反してるわけじゃない」


竹河は笑った。


「お前はこの世界で何を信じて生きている?俺は金だ。AISへ入ったのも給料がいいからだ」


「…俺はまだ答えを持っていません。これだけは信じる、と言い切れるものはないです」


「一番の教訓を教えてやる。正義感は金にならないだ。よく覚えておけ」


竹河は続けた。


「俺たちの仕事は『生存』か『死亡』かその二択だけだ。生き延びて手柄を立て、その対価として金を稼ぐ。それが俺たちのルールだ」


その時、使用中だった治療カプセルの蓋が開き、モヒカン頭の若い大柄の男が起き上がる。

男は右腕を振り回したり、曲げたりを繰り返す。その内に、右前腕から刃物が飛び出した。


「おいおい、腕が刃物になってるなんて穏やかじゃねえな。お前、板前かよ」


竹河が眉間にしわを寄せて呟いた。

男は俺たちを見て、驚いた様子だったが開き直った様子で反論した。


「うるせえな!てめえこそ、その腕はAISの正規品かよ!」


「これは高級指揮官用の腕さ」


「嘘つくんじゃねえ!だとしたら税金の無駄遣いじゃねえかよ!」


「用が済んだなら、とっとと帰んな。板前さん」


モヒカンがぶつぶつ言いながら出口に向かうと、店員が出口の前に立ち塞がり、抗議するように甲高い電子音を上げた。


「ふざけんなよ、腕一本の交換でぼったくるなよ!」


男の怒声に店員は激しい電子音で反論した。頭部の赤い光が点滅している。


「金が払えないなら、その腕は置いて帰るんだな」


竹河が静かに言った。


「なあ、あんたたち。後で返すから金を貸してくれないか?」


男が猫なで声で頼んできた。


「見ろ」


竹河が顎で男を示した。


「金がないとこうなる」


「……」


「正義感だけじゃ腕一本買えねえ」


男は激高した。


「ちくしょう!この野郎!」


モヒカンが腕の刃物を出した。

俺は腰の拳銃を抜きかけたが、竹河に制された。


突然、モヒカン男が悲鳴を上げて、前のめりに倒れ込む。その背中には針が刺さり、針に繋がったワイヤーが店員の胴体から伸びていた。男の身体が激しくけいれんを起こしている。

店の奥から、もう一体の店員が出て来ると、アームで男の身体をつかむ。

二体のロボ店員が、動かなくなった男の身体をつかみ、カプセルの中に投げ込んだ。


起動したカプセル内から激しい閃光が漏れ、せわしない工作音が聞こえた。


しばらくすると何も聞こえなくなった。

カプセルのふたが静かに開いた。


中から現れたのは、モヒカン頭の子供だった。

頭だけはさっきの男のまま。

だが首から下は別物だった。

背丈は膝ほどしかない。

人工筋肉は剥ぎ取られ、細い骨格フレームがむき出しになっている。


「くそ~、くそ~!」


子供のように甲高くなった声で、モヒカンは泣きながら出て行った。


「戦闘でダメージを受けた場合は必ずここへ来いよ。こいつらは非攻撃的プロトコルで医療支援のプログラムをされてる」


竹河が平然とした顔で、前と同じことを言った。

冗談にしか聞こえなかった。

店員たちの頭部の光も青に戻っていた。


「見ただろ」


「何をです?」


「金がない奴の末路だ」


俺は竹河の腕に視線を落とした。 

確かに竹河と俺のパーツは違う物だった。

俺の視線を感じたのか、竹河が声を上げる。


「何だ?これは盗品じゃねえぞ」


「何も言ってませんよ」


「いいか、敵の中には俺たちより良いパーツを持っている奴もいる。その時はここでパーツを換えることもできる。強いパーツを手に入れる事が、強くなる一番の近道だ」


ロボ店員が俺の持っていた鋏に、青い光を当てて走査を始めた。

しばらくして、青い光がホログラムの再生を開始した。映っているのは、右腕が鋏になった俺だ。


「どうだ、換えてみるか?」


「銃が使えなくなるじゃありませんか」


「それもそうだ」


竹河は鋏を売却した。


「あの…銃も装備品ではないですね」


俺は気づいた。俺が支給された拳銃はベレッタ。そしてライフル銃はステアーAUG。竹河が腰につけている拳銃はコルトだ。それにショットガン。


「それについては俺からも話がある。竹河先輩からの、無様な死に方をしないための講座だ。まずは酒だ。ついて来いよ」


竹河はそそくさと店を出ると、隣のバーに嬉々として入って行った。





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