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サイボーグ警官の俺は凶悪犯を抹殺していたはずが、いつの間にか国家規模の陰謀に巻き込まれていた  作者: sornar


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2/7

リッパー編 ①

【メモリー修復中――】


【修復率12%……】


【AIS No.8 CODENAME 賢木。『リッパー』抹殺任務にあたり、第二組隊員・竹河と合流し任務を遂行せよ。以上、通信終了】


街の東西にメインストリートが伸び、それを挟む形でビル群が建つ。その後ろに小さな建物、さらに後ろにはテントや粗末な小屋が広がる。

英語の怒鳴り声が飛ぶ。中国語の客引きが通行人を呼び止める。焼けた羊肉とスパイスの匂いが夜気に混じり、タコスの屋台の隣ではコーランの朗唱がスピーカーから流れていた。色鮮やかなサリーをまとった老婆が、その喧騒を当然のように横切っていく。


百の国を無理やり一つに押し込めたような街。


それがナショナルタウンだった。


国籍を超えた群衆が、ネオンの奔流の中を突き進んでいた。


「賢木か?待っていた」


AISの紺色の制服を着た、三十代後半の男が声をかけてきた。


「賢木です。竹河さんですか?」


「竹河でいい。お前も本名じゃないだろう。」


「よろしくご指導願います」


「配属初日から随分やる気のある顔をしているな。いや結構、結構」


その時だった。


「くたばれAIS!」


叫び声と共に石が飛んできた。俺は身構えたが、竹河は平然としていた。


「立ち話もなんだ。バーにでも行こう」


竹河はハングル文字のネオンの下を歩き出した。


「傷ついたか?それとも自分の理想が汚されたような気がしたか?…悪いが俺には街の騒音にしか聞こえん。いちいち気にしていたら金を稼げんからな」


「いえ、少し驚いただけです。AISはサイボーグ犯罪者を排除している訳ですから……」


傷つかなかったと言えば嘘になった。心は揺らいでいた。


「俺たちの仕事は誰かに感謝されることでも、誰かに好かれることでもない。俺たちの仕事で、結果的に彼らが、平和に文句を言える環境が維持されればそれでいい」


「必要な仕事をした結果として罵倒されるなら受け止める。そういう覚悟が必要なんですね」


「感謝なんて求めた瞬間、お前は相手に支配される。罵倒に怯えた瞬間、お前は自分の価値を相手に決めてもらうことになる。どちらも、俺たちが最も忌むべき『負け』だ」


メインストリートには、ギラギラしたネオンサインの店がずらりと並んでいた。賑やかに見えたが、どの店の前にも重火器を持ったサイボーグが必ず立っていた。


「政府はサイボーグ狩りの組織というイメージを払拭したい。だからArmour Intelligence Serviceなんていう穏当な名前をつけたんだろう」


竹河が自嘲気味に言った。


「あら、可愛いお兄さんじゃない」


道すがら、化粧の厚い客引きの女が声をかけてくる。竹河は乾いた笑い声を上げると、何か考えた様子で俺の顔と装備を見た。


「お前ならまだ色んな生き方が出来る。まだ引き返せるぞ。故郷へ帰って女見つけて、まともな人生送れよ」


からかっている。うまく切り返そうにも、言葉が出ない。仕方なく言葉を返した。


「故郷なんてないです」


「ない?ホームレスかよ!」


「AISの寮があります」


「寮?整備工場だろ」


竹河が立ち止まった。


「話の前に、お前の実力を見せてもらおうか」


そう言うと、薄暗い路地へと入っていった。メインストリートと打って変わって、極端に暗い。

視界が暗視スコープに切り替わる。


竹河は中華料理屋の前で立ち止まった。

建物の影からチャイナドレス姿の女が現れた。


「お兄さん、遊びましょう」


アジア系の顔立ちの女は、機械的な口調で言った。女は含み笑いを浮かべ、胸を開く仕草をする。

なぜか竹河が静かに後退する。

女は笑っていた。

その笑顔だけが不自然で動かなかった。


女が笑顔のまま、俺の目の前で胸を開いて見せた。

開いた胸部から火炎が噴き出した。思わぬ奇襲に、俺は慌てて後退する。


次の瞬間、女の背後から人型ロボが躍り出た。棍棒のような腕を振り上げて殴りかかってくる。


警告音

【敵反応検知:2】


「おいでなすった、美人局だ!お前はそっちのお姉さんをやれ!」


竹河はそう言い終わる前にショットガンを発射していた。早業だった。俺も素早く拳銃を引き抜こうとしたが、女の回し蹴りが先に飛んでくる。


胸部に衝撃。


女は高速回転しながら刃物つきの蹴りを連発してくる。ダメージは軽微だが、この素早さは厄介だった。


俺は女の頭部に狙いを定める。しかし、素早い回転蹴りが拳銃を吹き飛ばした。さらに、竜巻のような勢いの一撃を顔面に浴び、俺は膝をついた。


竹河は細身の人型に、ショットガンを放っていた。相手は、大きなマスクの上に血走った赤眼、棍棒ではなく、右腕が異常に肥大化してカニの鋏のような形状をしていた。


竹河は鋏の一撃を軽々とかわす。

空振りした鋏は中華料理屋の壁を粉砕した。

竹河がショットガンをもう一発叩き込むと、相手の両脚が爆発した。

動けなくなった相手に拳銃で止めを刺す。頭が潰れて倒れ込んだ。


女が回転蹴りで襲いかかる。もう一度、頭を狙うと予測した俺は腰を落とした。蹴りが空を切ると急いで拳銃を拾い、女の頭めがけて、ひたすら連射した。

頭部が火を噴いて爆発した。


竹河はナイフを握ると、残骸から慣れた手つきで脊椎を取り出し、さらにカニの鋏までもぎ取った。 


「あれ持って来い」


「……何に使うんです?」


「金になる」


「これがですか?」


「お前、AISの給料だけで生きていけると思ってるのか?」


竹河は笑った。

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