表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。  作者: 桜の浜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/19

補佐官は、まだ、ため息をつかない ⑧

 研究棟。


 学園にある教授たちがいる棟。

 その中のある研究室に、私たちはいる。


 研究室の主。

 レジナルド・クロムウェル准教授。


「リッチモンドパークで、親衛隊のふりをして君たちを襲ったのは、たぶんゴーレムだね」


「ゴーレムですか? それは軍が」


 私は、過去の事件を思い出す。

 あれは、びっくりしたな。

 しばらく体と頭が固まっていた。


「ああ、軍のやつか。あれとは、まるで別物だよ」


「知っているのですか?」


「僕が関わっていたからね」


 レジナルドは、なぜか胸を張る。

 なんか面倒そうなタイプかもしれない。


「どういうことですか?」


 ゴーレム。


 前に、シャーロットさんが貴族の館から見つけたもの。

 ただ、軍で起きたゴーレム事故は、事実とかなり違うようだ。


 本当の計画は、大量破壊兵器ではなく、建物ごと移動できる装置だった。

 そうすることで、防衛線の確立と補給がしやすくなる。


 レジナルドの話を聞いて、私は納得する。


 レジナルドいわく、あんな大きいのが歩いていたら的にされるだけだ。


 そういえば、そうだ。

 街中だと危ないけど、戦線では邪魔だな。


 だから、そっちの計画は中止になった。


 建物の移動の方は、今、実用段階に入るらしい。

 動く家みたいな感じだろうか。

 旅行とかに使えればいいな。


「それで、君たちが捜査しなければならないのは、もう一つのゴーレムだ」


 もう一つのゴーレム?


「ゴーレムの研究は、二つあった。一つは、軍と協力して作ったゴーレム。この前の貴族の館の事件は、これを利用していた。シャーロットのおかげで、やっと見つかったのだけどな」


「軍から研究内容が流出したと情報が来ていたのだが、私はそういう調査に向いていない。というか、面倒そうだし」


 そういう問題ですか。

 何かあったら、誰が責任を取るつもりだったのだろう。


 もしかして、私があまり怒られなかったのは、そういう事情もあったのかもしれない。


「だから、シャーロットに頼んだ。あいつ、こういうこと好きそうだし」


 好きだと思います。


 シャーロットさんって、意外と面倒ごとを引き受けているのだな。

 もしかして、調査の時に夜な夜な徘徊していたのだろうか。


「意外に早く見つけてくれたおかげで、まともな開発ができなかった。しかし、ここで問題が起きた。実験していた貴族のことだ」


 私は、この事件で結構な報告書と始末書を書いた。

 全て終わった時は、エセリン監査官と二人で祝杯をあげた。


 本当に嬉しかった。

 あまりの嬉しさに、涙すら出た。


「あの貴族の研究に出資していたのが、ジョージ・バーニウェル卿だ」


 ジョージ・バーニウェル卿は、先日のベリルの冠の事件で謎の死を遂げている。

 私も現場にいて、そのあと大変だった。

 その後の検視の結果で、毒を刺されたらしい。

 自分で刺したか、誰かに刺されたのか。


 ジョージ・バーニウェル卿。


 彼は、東インド研究所を創設した二十四人の貴族の一人である。

 そして、ゴーレム事件で関わった貴族も、あの東インド研究所の二十四人の貴族の一人だった。


 彼らは、魔法省と軍との関わりが強い。


 東インド研究所関連では、先日、大きな事件を起こしたばかりだ。


 そして、なくなったとはいえ、東インド研究所の貴族たちは、大議会でもかなりの力を持っている。

 その力の中心にいるのが、新興貴族で一番勢いがあったバーニウェル卿だった。


 街中で軍ですら研究中止にした大型装置を開発していたのだから、国家反逆罪になってもおかしくないはずだが、不問で終わったようだ。


 まあ、屋敷の跡地は、魔法省に接収されたが。


「では、今回の事件も、東インド研究所やバーニウェル卿の家が関わっているのですか?」


「いや、あの家にはもうそんな力はない。今、元東インド研究所の中心は、ジュリアン・モントローズ伯爵だ」


 ジュリアン・モントローズ伯爵。


 リッチモンドパークの事件で被害にあった、エレノアの父親。


「モントローズ伯爵が、ゴーレム開発を指示したということですか?」


「たぶん違うな。モントローズ伯爵は、そういうタイプではない」


 この人、結構貴族関係に詳しいな。

 少し調べた方がいいかもしれない。


「じゃあ、誰がそのもう一つのゴーレムを開発していたのですか?」


「知らん」


 え?


「貴族なら、可能性は誰にでもある。しかし、問題を起こせば、それも王族に手をかけるなんてことをして、何のメリットがある。自分の立場を危うくしているだけだ。いくら大議会である程度力があるとはいえ、女王陛下への忠誠は、貴族はある」


 そうだろうな。

 自分で自分の首を絞めることをする理由がない。


「話が逸れたが、もう一つのゴーレムだが。基礎理論は似ている、目的と大きさが違う」


「研究は、人の補佐、支援だ。軍の場合は、兵器に近い」


「補佐ですか」


 それは、私の代わりですか?

 それができたら、仕事がなくなる。


 困ります。

 私、報告書も始末書も書きます。

 見捨てないでください。


「わかりやすく言うと、人が行くと危険な場所に行くとか、重い物を持つとかだな」


 あ、そういう方向。

 それは助かるかも。


「その研究は、完成されたのですか?」


「ある程度は完成したようだ。人の形の模型を作り、動作もできたらしい。しかし、研究は凍結された」


「凍結ですか?」


「ああ。これはもともと、東インド研究所の研究資料から行われた」


 東インド研究所は、十年前の事故で解体されている。

 多くの死傷者が出たその事故。

 研究資料も、ほとんど残っていないという。


「誰が研究していたのですか?」


「昔、そこにいた教授だ。今は亡くなっている」


「しかし、誰かがその研究を引き継いでいる。それは」


「それは」


「わからん」


 レジナルドは、両手を上げる。


「え? 知っているんじゃないんですか?」


「色々調べたんだけどね。学園の関係者ではないようだ」


「そ、そうですか」


 私は、紅茶を飲む。


 甘い香り。


「ということは、何もわかっていないということですか?」


 私は、今の話をまとめてみる。


「ああ、まったくだ。だから困ったので、最低限シャーロットに頼まれた蜜蜂の確認ぐらいしないとまずいと思ったのだ」


 隣で、エディスがため息をついている。

 この人、苦労しているのだろうな。


「レジナルド様とシャーロット様は、この研究棟の二大厄災と呼ばれています」


 エディス助手は淡々と言う。

 なんとなく、そのあだ名でレジナルドという人がよくわかる。


「そんなのついているのか」


 レジナルドは、なぜか驚いている。


「はい。決して二人の共同研究はさせるなと、学園からは通達を受けています」


「そうか。何かしたかな?」


「はい」


 エディスは冷たく答える。


「このままの情報を、シャーロットさんに伝えます」


 私は、少なくとも情報が入ったので良しとする。


「まあ、待て」


 レジナルドは、軽く手で制す。


「今回の事件、僕はその場にいないので、もちろん見ていない。だが、親衛隊の姿をした賊が王族の方々を狙った。そして、煙のように消えた。だから、ゴーレムの可能性が高いと思った。人は煙のように消えない。それは、貴族の館がゴーレムになったように、そのゴーレムにも何か媒体があるはずだ」


 それは、もしかしたら、あの場所にまだあるかもしれないということか。


「最初の研究から進化させ、両方の良い点を合わせている。実に興味深いな」


 だから、その場で煙のように消えたのか。

 このことを、王宮親衛隊は知っているのだろうか。


「現場に行くなら、土を取って来てくれ。それで調べられる」


 まだ、行くとは言っていないけど。

 仕方がない。

 リアにお願いしよう。

 また勝手に入るのは、さすがにまずい。


「わかりました」


 私は、研究室を後にした。


 研究棟から貴族塔は、場所的に反対の位置だ。

 結構遠いな。


 先に、レストレード監査官に連絡しよう。

 学園で連絡を取れるのは寮長室なので、そこへ向かう。


 ハドソン寮長がいたので、通信機を借りる。

 監査局には、レストレード監査官はいなかった。

 伝言を頼んだ。


 さて、時間的にリアの講義も終わっているはず。

 部屋に戻るか。


 また階段か。

 疲れるなあ。


 部屋に入ると、甘い匂いがした。


「ステラ、お帰りなさい」


 入り口近くにリアがいた。

 たまたまかな?


「ただいま戻りました」


 私は、リアに先ほどのレジナルドの話を伝える。


「そう。さすが、レジナルド」


 リアは、レジナルドのことを知っているらしい。


「じゃあ、行きましょう」


 やっぱりか。

 そうなりますよね。


 私とリアは、リッチモンドパークに向かった。

貴族の館事件は、ちょっと長い短編

補佐官は、ため息なんてつかない。

https://ncode.syosetu.com/n5162md/

です。


ステラとリアが初めて会うリッチモンドパークの短編。

補佐官は、始末書なんて怖くない。

https://ncode.syosetu.com/n0446me/


ステラとリアがただイチャイチャしている短編。

補佐官だって、ため息をつきたい。

https://ncode.syosetu.com/n7629me/


三つの短編の後の話が

王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。

になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ