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王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。  作者: 桜の浜


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17/19

補佐官は、休暇をとる。②

「えっと、あれは何?」


 海から何かが見える。

 魚?

 あんな大きな魚、いる?

 しかも、入江にだ。


 おかしい。


 クラリーに連れられて、プライベートビーチに向かう途中、私はそれを見た。

 私はモフモフをクラリーに預けて、海岸へと走る。

 海岸には、海で泳いでいる人もいる。

 私は、先ほど海面から出ていたものを探す。

 三角のような形だった。


 見間違いか。


 私は辺りを再確認した。

 せっかくの休暇なのに、疲れてるのかな。

 よし、戻ろう。

 そう思った時、悲鳴がした。


 どこだ。


 私は声がする方を見る。

 その声は海ではなく、砂浜から聞こえた。

 変な格好をした人がいた。

 頭を全て囲った帽子みたいなものを被り、顔には透明な膜がある。

 ガラスだろうか。

 全身も異様な服を着ている。

 防護服のような姿だ。

 そして、その隣には見たことがある人がいた。


 エディスさんだ。


 この人は、隣の人とは反対に水着を着ている。

 全く布地がない。

 つけている意味がないくらいの面積だ。

 普段会った時も、変わった格好をしていた。

 そういうタイプのおしゃれさんなのだろう。

 シャーロットさんとは真逆のタイプだ。

 あの人。

 作業着と制服しか見たことがない。

 水着とか着るのだろうか?


 しかし、エディスさんは身体が整っている。

 出るところは出て、引き締まっているところはしっかりある。

 少し羨ましい。

 私とシャーロットさんとは真逆のタイプだ。

 私の視線に気づいたのか、エディスさんがこちらに向かってきた。

 ああ、やっぱり本人だった。

 隣にいる全身防護服もついてきたので、周囲の視線が私に集まる。

 絶対、仲間だと思われている。


 少し恥ずかしい。


「ステラ様、珍しいところでお会いしますね」


「はい。お久しぶりです、エディスさん」


 私は隣の防護服を見る。

 エディスさんはそれに気づく。


「こちらはレジナルド様です。今、これをすぐに脱げないので、挨拶できず申し訳ございません」


 まあ、そうだと思いました。


「ステラ様は、捜査ですか?」


 さすがに、ここまでだと管轄が違う。

 レストレード監査官やシャーロットさんだと、どこまでも調べに行きそうだけど。


「いえ、休暇中です」


「そうですか。それは良かった」


 エディスさんのその言い方だと、これから何かやらかすけど、休暇中なら構わないでください、と聞こえる。


 考え過ぎかもしれない。


「エディスさんたちは、実験ですか?」


 一応聞いておく。

 後で知りませんでしたとは言えないので、どうしても仕事が頭から離れない。

 これが職業病なのかも。


「いえ、海水浴です」


 この人、嘘が下手すぎる。

 貴女の格好は、まだわかります。

 いや、それ、泳いだら水着が取れそう。

 泳げるのですか?

 それに輪をかけて変なのは、隣のレジナルド准教授だ。

 明らかに怪しい。


「レジナルド様は、日焼けと潮風が好きではないのです」


 じゃあ、なんで海水浴に来たのだろう。

 私の疑問は、頭に留まったまま。


「ステラお姉様?」


 クラリーとモフモフが、近くまで来ていた。


「大丈夫。怪しい格好をしているけど、怪しい人ではないから。たぶん」


「はい」


 クラリーは防護服を見た後、エディスさんの胸を見ていた。

 わかります。

 大きいですよね。

 我々のあこがれです。

 いや、待てよ。

 クラリーは、私よりもきっと。

 考えるのはやめた。


「では、失礼します」


 そう言うと、エディスさんとレジナルド准教授は、そのまま海に向かっていった。

 大丈夫なのだろうか?

 やだな、水難事故。


 よし、気を取り直して、クラリーの家が管理しているプライベートビーチに向かった。


 広い。


 砂浜が白く輝いている。

 海も綺麗。

 私とモフモフは、海を満喫している。

 泳ぐのは久しぶりだ。

 この前の事件で、川に流されて以来だ。

 そういえば、その時はモフモフに助けられた。

 君、泳ぎ上手だよね。

 モフモフは、顔だけ出して浮いている。

 気持ち良さそう。

 クラリーは泳げないらしく、砂浜で待っている。

 傘を差したところに座って、こちらを見ている。

 しばらく泳いでいると、砂浜のクラリーの方に誰かが来た。


 最初はメイドさんかと思ったが、服が違う。

 揉めているようにも見える。

 私はモフモフに声をかけ、陸に戻る。

 近づくと、誰だかわかった。


 え?


 なんでいるの?


「ステラ、水着、いいですね」


 私を見る視線が少し怖い。

 頭から足先まで見られた気がした。


「はい、ヴィクトリア王女殿下」


 リアだった。

 どうやら、王宮の用事が早めに片付いたので来たらしい。

 元々は、リアとクラリーで過ごす予定だった。

 ただ、急にリアの予定が変わってしまった。

 本当は延期にしようとしていたはずが、私の休暇のことをワトソンさんから聞いて、別荘を当てがってくれた。

 リアは来ないと私は予想していた。


 外れた。


 仕方がない。

 そういうこともある。


「よかったわ。ステラと海を満喫できて」


 笑顔が眩しいな。

 リアが私の腕にくっつく。

 クラリーは私たちを見て、頬が赤い。

 日焼けし過ぎかな。

 リアの水着は、王女様らしく白い色のワンピース型だった。

 清楚な感じです。


 良かった。


 エディスさんみたいなのではなかった。

 さすがにあれだと止めたかもしれない。


「ステラは、可愛い系の水着じゃないのですね」


 私は機能性重視です。

 泳ぎたいので。


 泳ぎ。


 水の掛け合い。


 砂浜で遊ぶ。


 楽しみました。


 お腹も空いたし、今日のご飯が楽しみ。

 その時、海辺から何かが出てきた。


 いや、海の中を歩いている。

 何かを持っている。

 私の休暇はそこで終わった。

 そう感じた瞬間だった。

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