表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。  作者: 桜の浜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/19

補佐官は、休暇をとる。①

 最近。


 大きい事件が多い。


 関わる人や組織が大き過ぎて、対応に困ることがある。私の人生で、王族や貴族に関わることがこんなにあるなんて、思ってもみなかった。


 今日は久々の休み。

 報告書も始末書もない。

 休みを晴れやかに迎えるために、全てをやり切った。レストレード監査官にも釘を刺した。


 私は明日から休みですと。


 この街と市民の安全と平和を守るのが仕事です。

 わかっています。

  でも、休みたいのです。

 言い訳など言いません。

 私は休みます。

 すみません。


 一番の問題はリアだ。

 たまに私の家にいる。

 ただ今回は、確認を取っている。

 リアは今日から王宮の集まりで、外には出られないはず。


 二番手はシャーロットさんだけど、ワトソンさんの話だと、学園の試験があるらしく、仕方なく講義を受けているらしい。


 女子会の集まりも今週はない。

 色々と不安はあったが、私は今ここにいる。


 もちろん、モフモフもいる。

 そう、休暇の始まりだ。


 クラリッサ・ブラックウェル嬢。

 通称クラリー。

 最近仲良くなった魔導学園の学生だ。

 なぜか私のことをお姉さまと呼ぶ。

 理由はわからない。


「ステラお姉さま」


 玄関前から声が聞こえる。

 手を振っている。

 嬉しそうだ。

 モフモフのしっぽの振り方に似ている。


 あれ、可愛い。


 私はつい、クラリーの頭をなでてしまった。


「お、お姉さま」


 なぜか、うっとりした目を私に見せる。

 ここはモフモフとは少し違う。

 貴族のお嬢様だし、当然だけど。


「綺麗ですね。空気もいい」


 ここはブラックウェル卿の別荘だ。

 私の休暇予定を、なぜかクラリーは知っていた。

 前から行きたかった場所であった。

 この時期はホテルも高く、予約が取れない。


 私はあきらめかけていた。

 なんとか休暇を取れることになったけど。

 もしかしての可能性を考え、私は調べた。


 無理でした。


 家でのんびりもいいかもしれない。

 そう思い直していた。

 そんな時に、ワトソンさんから連絡が来た。


「ステラ、泊まるところを探していたでしょう?」


「はい。でも、どこも取れなくて」


「ステラがよければなんだけど、知り合いっていうか、その人の別荘を貸してくれるみたいなのよ。どう?」


 とてもいい話だ。


 しかし、これにはきっと裏がある。

 別荘を持っていて、ワトソンさんの知り合い。


 リアだ。


 私は断る。

 何か嫌な予感しかしないからだ。


「ヴィクトリア王女殿下じゃないわよ」


 え?


 まさか、そんな。


 しかし、ワトソンさんが嘘をつく理由がない。


「だ、誰ですか?」


 それがクラリーだった。

 予想していない人だった。

 学園ではよく話していたが、事件の後は挨拶に行ったくらいだ。

 いい子である。

 たまに少し変わった発言をするけど。


「どうして、クラリーさんが?」


「えっと、ステラも知り合いだったのね。だからか」


 ワトソンさんは何かを納得している。


「はい。この前の事件で学園にいた時、色々助けていただきました」


「で、どうなの?」


 これはいい話だ。

 リアもいない。

 別に彼女のことを嫌いではない。

 どちらかというと好感を持っている。

 ただ、たまの休暇はのんびりしたい。

 しばらく振り回されたくないのだ。


 少し悩んだ。


 でも、結論は出ていた。


「行きます。お願いします」


「よかったわ。では伝えておくわね」


 後日、クラリーから連絡が来た。

 いいのですか、という別荘の場所だった。

 しかも私一人だけ。

 動物可。

 モフモフを連れていける。

 これが一番の理由かもしれない。

 一つだけ条件があった。


「ステラお姉さま。まず家の中を紹介しますね」


 私は玄関から、まずこの景色が一番よく見えるバルコニーに案内されていた。


「はい。お願いします」


 クラリーに連れられて部屋を見る。


「こちらはリビングです」


 ひ、広い。

 私の家を全部合わせるより広い。

 なんか落ち着かない。


「こちらが寝室です」


 何、このベッド。

 こんな大きいのあるの。

 そして、やわらかそう。


「三人で寝ても問題ありません」


 ん?


 モフモフと寝ても、という意味かな?

 その後、お風呂、もう一つの寝室など各部屋を案内された。

 広すぎて疲れる。


「食事ですが、料理人がいますので、何でも作れます。地域の特産品などを使った料理を用意しております。あと、希望のものがあれば何でも言ってください。モフモフさんのお食事も用意しております」


 すごい。


 いいの。


 私、泣いちゃいそう。


「何かありましたら、私かメイドに言ってください」


「はい」


 メイドさんいるの。

 そういえば、何人かいた。

 常駐でしたか。

 まあ、ここを管理しているからそうだろう。

 この別荘にいられる理由が、クラリーも一緒ということだ。

 それくらいは問題ない。

 クラリーはリアよりも疲れない。


「じゃあ、行きましょう」


 私はクラリーについていく。

 馬車を用意してくれていたので、意外に早く着いた。

 クラリーも一緒だ。

 馬車の中では、最近の学園のことなどを聞けた。


 ここは、セブン・シスターズ。


 その景色は素晴らしかった。

 白い断崖が見える。

 海との境目には、軽く霧が生まれている。


 シャーロットさんに聞いたところによると、石灰石という石が断崖にあるため、その場所一帯が白くなっているらしい。


 セブン・シスターズの名前の由来は、断崖に並んでいる七つの崖を姉妹みたいだと言うことらしい。


 崖自体はかなりの高低差があるので、少し疲れる。

 姉妹の性格も色々あるのだろう。

 モフモフもハアハア言っている。

 これは運動不足だな。

 美味しいものを食べ過ぎているかも。

 私も気を付けないと。


 今日は忘れるけど。


 クラリーは意外に体力があるのか、一緒に歩いても息切れしていない。

 若いせいかもしれない。

 いいな。

 しばらく崖からの景色を楽しみ、クラリーが持ってきてくれた軽い食事をいただく。


 おいしい。

 リアの時もそう思ったけども。

 貴族の食事って味が違う。

 これは作っている素材だけではない気がする。


 満足。


「行こうか」


 のんびりしている間、特に会話もなかった。

 ただ、のんびりと景色を見ていた。

 こういうのも私は好きだ。

 モフモフもいつも以上にのんびりしている。

 馬車のところまで戻り、クラリーの別荘に戻った。


「ステラお姉さま、先にお風呂はいかがでしょうか?」


「はい。いいのですか?」


 ちょうどさっぱりしたいところだった。


「私も一緒に……」


 クラリーが何かを言っている気がする。


「モフモフも入れてもいい?」


 私は、潮風に当たったモフモフをお風呂に入れたかった。


「はい、もちろんです」


 さっぱりした。

 というか、お風呂も広すぎる。

 私は自分の髪とモフモフを乾かした。


 さすが貴族邸。


 最新式の乾燥魔道具がある。

 リアのところにもあって、重宝した。

 自然乾燥よりも、次の日の髪の毛の質が違う。

 気づくと、ベッドで少し寝ていた。

 私とモフモフと。

 って、クラリーも寝ていた。

 いつの間に。

 三人で寝ていても余裕がある。

 広いなこのベッド。

 心地がいい。


「あ、お姉さま」


 クラリーはゆっくりと起き上がる。

 背丈は私と変わらないのだが、上品さが出ている。

 そして愛らしい顔をしている。

 抱きしめたくなる。


「おはようございます。クラリー様」


 夕飯。


「おいしい」


「よかったです」


 私はこのおいしさを生涯忘れない。

 食べたことがない料理ばかりだ。

 どう表現していいかわからない。

 おいしいしか言えない。

 クラリーは私の方を見て、楽しそうだ。

 モフモフもおいしそうに食べている。


 満足すぎる。


 しかし、さらに私を満足させるものが来た。


 スイーツだ。

 地元のフルーツを使ったケーキ。

 甘すぎない。

 季節の果物とのバランスがいい。

 ずっと食べていたい。


「ステラお姉さま。私の分も食べます?」


「いいのですか?」


「はい。きっとこのスイーツも、お姉さまに食べてもらいたいはずです」


 そんなことはないと思うけど。

 私はクラリーの分もいただいてしまう。

 もう動けない。

 食べ過ぎてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ