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王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。  作者: 桜の浜


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15/19

補佐官は、ただただ呆れた。

「ステラ、どういうことですか」


 私は帰宅した瞬間に怒られた。

 目の前にいるのは、リアことヴィクトリア王女殿下。

 この国の第三王女だ。

 どうして、私の家にいるのですか?


「何のことですか? リア」


「え?」


 まるで、この世の地獄みたいな顔をしている。

 なに。

 私、何かした?


「この前、学園に来ましたよね」


「はい」


 報告書を取りに来た。

 しばらく学園にいたから、書類が溜まっていたのです。


「私の所に来ないで、しかもシャーロットと一緒に楽しそうに」


 いや、仕事です。

 楽しくはないですよ。


「しかも、二人きりで夜に密会して」


 だから、仕事です。

 ワトソンさんもいました。


「ひどいです」


 ひどくないです。

 あの後、大変だった。

 久々に始末書を書くことになったと思ったくらい。

 っていうか、何で目に涙をためているの?

 仕事したらダメですか?

 私にも生活があります。


「それで、どうしてここにいるのですか」


 リアのことは、軽く流すくらいがいい。


「ど、どうしているって」


 そんなものすごい質問はしてないですよ。

 私は疲れたので、まず荷物を置いて着替える。

 リアが寝室のドアの隙間から、こっちを見ている気がする。

 何も隠してないですよ。

 捜査官みたいな目をしている。

 私は何かを疑われているのだろうか。

 もしかして、この前の事件の捜査状況だろうか。

 監視局でも、報告書を王宮に提出している。

 あくまで詳細と現状確認みたいな内容だけど。

 誰が何をした、ではない。

 こういう事案があって、たぶんこういう可能性があるかもしれない。

 書いている方も読んでいる方も、なんだかわからない。

 王宮に提出するものは、そういう形のものが多い。


 出さなくてもいいとすら思う。


 レストレード監査官は、我々が作ったものとは別のものが存在するから、それを見ているとか言っていた。


 では、それは誰が作っているのだろう。


「はい、お夕飯です」


 きちんと料理を用意してくれるのがありがたい。


 しかも、王宮の料理人が調理してくれたものだ。


 そのおいしさに、私は逆らえない。


 リアに頭が上がらないのは、彼女が王女様だからだけではない。


 この料理のせいかもしれない。


「ありがとうございます」


 その声に反応して、モフモフがどこからともなく現れる。


 君もリアの対応に慣れてきているのね。


 モフモフの頭を軽くなでる。


 モフモフ、食べなさい。


 先にモフモフのご飯を用意する。


 リアが用意する、モフモフの健康にいい食事だ。


 ありがたい。


 最近、モフモフが太った気がするから、運動不足かもしれない。


 気を付けないと。


 散歩の回数が少なくなっていた。


 来週からは休暇に入るから、それまでにはやっておかないと。


「ステラに会いたかったのです」


 今日は何かなと、ご飯に期待する。


「聞いてます?」


「はい、もちろんです。お肉ですね」


 牛肉?


 違う。


 なんだろう。


 香りが少し独特だ。


 スパイスのせいかな。


「え、はい。お肉ですけど。いや、そうではなく」


「どうして、私に会いに来ないのですか?」


 リアは、私がお肉を口に入れる前に距離を詰めてくる。


「仕事をしていたので」


「はい。ですから、仕事でなんで来ないのですか?」


 仕事で来ない?


「リアの警護の仕事は、もう終わっていますから」


「終わっていても、心配になりますよね」


 特に心配にはならない。


 私より強い王宮近衛隊がいるから問題ない。


「すみません。休みの日に行こうと思っていました」


 それは本当だった。


 一応、事件の報告とリアの様子を見ようと考えていた。


 監視局的には、あまり関わりたくないようだ。


 そういう感じのことを、上司から言われた。


 直接ではない。


 今の段階で王族と関わるのはよくない。


 面倒なことだ。


 それとなく伝えようとしたのだが、まさか今日、家にいるとは。


 私の周りの人たちは、行動力がありすぎる。


「そうだったのですか。言ってください。寂しかった」


 一週間も経ってないですよ。


 でも、私もモフモフと会えなくて寂しかったから、気持ちはわからなくもない。


 どちらかというと、リアって犬というよりもネコっぽいかな?


 おいしい。


 これ、脂身が甘い。


 何という料理だろう。


 食べたことがない。


「聞いてます?」


「はい、もちろんです。私も会えてうれしいです」


 リアは、見たことがないくらいの笑顔になる。


 可愛い。


 この人、こんな一面があるのだな。


 私が異性だったら大変だ。


「そうだ。一応、事件の今の状況を話しますね」


「はい」


 リアは少し真剣な顔になった。


「監視局としては、もちろんこれ以上の捜査はしません。ただ……」


 そう。


 ただ。


 砂のゴーレムは危険すぎる。


 これの使用は、たとえ王族でも許可できない。


「そうですね。あんなのが急に現れたら怖いですよね」


 怖いで済まされない。


 シャーロットさんの見解だと、リッチモンドパークだからこそできた。


 あそこは、魔力導管を引いていない箇所が多い。


 街中だと、ゴーレムは安定しない。


 そして、リッチモンドパークの砂ゴーレムは、リアとシャーロットさんの研究、通称ドーナツにより起動できなくなっている。


 起動させるためには、全ての土を入れ替える必要がある。


 それこそ、ものすごい費用と時間がかかる。


 今それをしたら怪しまれるし。


「王族では、どういう話し合いをしているのですか?」


「何もないですわ」


 ないのか。


「ただ、王宮親衛隊はかなり怒っていました。特に近衛隊が」


「アルフレッド第二王子殿下の方は?」


「アルフレッドお兄様は、被害者の顔をしています。誰かが自分をはめようとしたと周りに言っているらしいですけど、あまりいい作戦ではないですね」


「そうですか」


 罪もなく、罰もないのか。


「でも、リッチモンドパークの管理からは外されそうですけど」


「そうなのですか?」


「ええ。女王陛下が少し怒っておられるようです」


 少しは罰があるのか。


「それと、ステラにプレゼントを持ってきました」


 もしかして、お菓子ですか?


 リアが言うと、玄関からそれが来た。


「いや、いらないって言いましたよね」


「私だと思って、大事にしてください」


 そこには、リッチモンドパークで見た巨大スミレがあった。


 ちゃんと鉢に入っている。


 モフモフが首を上げ、見上げている。


「わん、わん、わん」


 珍しくモフモフが吠える。


 そうか。


 君も怖いのか。


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