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王女殿下の補佐官は、ため息をつきたい。  作者: 桜の浜


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13/19

補佐官は、のんびりしたい時もある。②

「どういうことですか?」


「レジナルドが何かやっている時は、必ずエディスが陰で動いているわ」


 いきなり怖いことを言わないでください。

 しばらく大きな事件は十分です。

 体と心が持ちません。


「何があったの?」


 シャーロットさんは、少し楽しそうに私に聞いてくる。


 私は、昨日行った捜査の状況と、エセリン監査官の資料の話をする。


「なるほど。じゃあ、行きましょう」


「え?」


「現場に」


「あの、講義の方は?」


「いいわよ」


 よくないですよ。

 学園ですよ。


 と思っていると、すでに制服の上着を着ている。

 早い。


「ステラ」


 私は、シャーロットさんを追いかける。


 学園の校門を出ようとした時、何かの気配を感じる。


「どうしたの?」


「いえ、大丈夫です」


 そういえば、何か忘れていたような気がする。

 まあ、報告書ももらったから大丈夫か。


 現場に着くと、シャーロットさんは地面を見ている。

 というか、もう頭が地面に着きそうです。


 私は、シャーロットさんの後ろに立つ。

 その格好は危ない。


「これは、もしかすると、いや」


 何かぶつぶつ言っている。


 いきなり、魔法を発動した。


 円。


 シャーロットさんの固有魔法。


 特段、周りに被害はない。

 本当はある。

 魔力導管が一時的に不具合を起こすらしい。

 いつだったか、ワトソンさんが言っていた気がする。


 この街で起こる不具合って、シャーロットさんのせいではないだろうか?


 ただ、周りのみんなが驚く。


「すいません、監視局の捜査中です」


 私は、大きな声で周りに言う。


 シャーロットさん、一声言ってください。


 周囲の人たちに頭を下げる。

 周りの人たちは、迷惑そうな顔をしている。


 監視局はあまり好かれていないので、目立ちたくない。


「やはり、そうか。とすると、動力は?」


 シャーロットさんは、いきなり立ち上がり歩き始める。

 ついていく。


 こういう時、シャーロットさんに何を言っても無駄だ。


 そして、嫌な予感がする。


 お願いですから、貴族の館に踏み込まないでください。

 私、最近始末書を書いていないのですから。


「ねえ、ステラ。資料には、音がうるさいとかはなかった? 馬車の音がするとか」


 エセリン監査官の資料を思い出す。


「そうですね。深夜に軽い振動がある、と受けた項目がありました」


「地震が多いとか」


「はい、地震もありました」


 実際は、地震などなかった。


「じゃあ、あとは」


「あとは?」


「夜に集合ね」


「え?」


「じゃあ、また」


 そう言うと、シャーロットさんはそのまま道路を歩いていなくなった。


 自由だな。


 って、夜?


 また残業だ。


 なんか疲れた。

 気づくと、私は昨日の屋台にまた来ていた。


 監視局に戻り、頂いた報告書を各担当に渡す。

 レストレード監査官を探すが、会議中らしい。


 会議が長い。

 珍しい。


 今日は月一会議の日。


「おお、ステラ。すまん。これからちょっと、ほかの部署の会議がある。またな」


「はい。あの、夜に捜査に行きますので」


「ああ、わかった」


 さすがレストレード監査官。

 内容を聞かない。


 私も内容を言わない。

 だって、シャーロットさんが関わっているからです。


 一応、机の上にメモを書いておく。


 大丈夫です。

 最近、衝撃的なことが多すぎて、色々と怖くない。

 私、疲れているのかな?


 また学園に行くことを考え、私は定時に上がることにした。


 一回家に帰り、軽い食事をとる。

 モフモフは、のんびりしている。


 おいしい?


「よし、行くか」


「わん」


 君はお留守番だよ。


 学園に着く。


「こんばんは、シャーロットさん」


「あら、ステラ。どうしたの?」


 ワトソンさんが出迎えてくれた。


「えっと、シャーロットさんと調査が……」


「そうなの? シャル!」


 シャーロットさんは、パンを食べている。


「そうよ」


「そうよじゃないわよ。そういうことは言いなさいって言ったわよね」


「ええ、聞いていたわ」


 ワトソンさんが頭を抱えている。


「それで、どこに行くの?」


「まだ早いわね。もう少し遅い時間がいいわ」


「じゃあ、ステラ、ご飯食べる?」


「いえ、食べてきたので」


「そう? じゃあ、お菓子食べる?」


「はい」


 それは頂く。

 ありがとうございます。


 雑談をしていると、あっという間に時間が来た。

 いつのまにか、ワトソンさんに愚痴を言っていた。

 ワトソンさんは黙って聞いてくれる。


「じゃあ、行きましょう」


 シャーロットさんはいきなり言う。


 結構、遅い時間ですが。

 学園というか、寮の規則とか大丈夫なのかな。


 いつもより、シャーロットさんはこっそりと歩いている気がする。

 階段も足音をあまり立てずに歩く。


「どこへ行くのですか?」


 ハドソン寮長が玄関にいた。

 顔が怖い。

 普段と印象が違う。


「えっと、調査です」


 シャーロットさんの一言の後。

 なぜか、みんなが私を見る。


「はい。正式な依頼ではないのですが、夜に道路で不審な物が現れるというので、シャーロットさんにお願いしました」


 私、最近言い訳がうまくなった気がする。


「はあ。いいのよ、ステラ。庇わなくても」


「ワトソン、お願いね」


「わかったわ」


「あの、何かあったのですか?」


 ハドソン寮長があんな怖い顔をしていたので、私は不思議に思っていた。


「シャルが講義にも出ず、寮にも帰らず、連絡もしなかったから、めちゃくちゃ怒られたのよ。それなのに、ハドソンに何も言っていないからね」


「忘れていたのよ」


 絶対、忘れてない。

 面倒だったのだ。


 道理で、こそこそ歩いていた。

 階段から玄関まで、一言も話さなかったし。


 しかし、寮にも帰らずずっと探していたのか。

 どこに泊まっていたのだろう。

 私より働いているのではないだろうか?


 ご苦労様です。

 みんな大変だな。


「それで、まずどこへ行くの?」


 学園から少し離れたところで、ワトソンさんが聞く。


「今来るわ」


 馬車が来た。


「馬車ですか?」


「これは早馬車ね」


 早馬車。

 普通の馬車よりも速度重視だ。

 緊急時や犯人追跡時に使われる。


「これ、どうしたのですか?」


「レストレードに頼んだのよ」


「何か言ってました?」


 私は恐る恐る聞く。


「ステラと一緒かって」


 よし。

 これでレストレード監査官の責任にもなる。


 私たちは馬車に乗り、私が昨日調査した場所に行く。


 馬車の中で、もう一度事件の内容を整理していた。


「今あるのは、その地面の跡ぐらいってこと?」


「そうですね。後は振動くらいですね」


「一番大きいのは、レジナルド准教授が関わっていること」


 どれだけ信用されているのですか?


 関わったら問題を起こすなんて、誰かみたいです。

 ワトソンさんはため息をついている。


 頑張りましょう。


「ここね」


 私たちが着いた場所は、私が昨日調査したところの近くだ。


 街路に魔力灯が光っている以外、何もない。

 周囲の人もいない。

 この時間だから、いる方が怪しい。


「昼にだいぶ絞り込んだのだけど、たぶん障壁を張っていたような気がするのよね」


 えっと、もしかして、あれからずっとやっていたのですか?


 たまに来る青い光の苦情って、やっぱりあなたですね。


 私の視線を受けたのか、シャーロットさんが振り返る。


「ステラ、馬車の用意をしておいて」


「はい」


 私は御者台から降り、馬と馬車を離す。

 手綱と鞍を付け直す。


「私とシャーロットさんが乗るのでいいのですか?」


「ええ」


 ワトソンさんは、なぜか嫌な顔をしている。

 馬が苦手なのだろうか?


 ネコだからな。


 円。


 また、勝手に魔法を発動する。


 止めてください。

 私、また苦情を受けます。


「よし、さあやるわ。ステラ、準備お願い」


 そうしていると、何か振動を感じ始めた。

 何かがこちらに向かっている。


 それも、かなり速い速度でこちらに向かってきている。


 私とシャーロットさんは馬に乗る。


 さあ、準備は完了だ。

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