補佐官は、のんびりしたい時もある。②
「どういうことですか?」
「レジナルドが何かやっている時は、必ずエディスが陰で動いているわ」
いきなり怖いことを言わないでください。
しばらく大きな事件は十分です。
体と心が持ちません。
「何があったの?」
シャーロットさんは、少し楽しそうに私に聞いてくる。
私は、昨日行った捜査の状況と、エセリン監査官の資料の話をする。
「なるほど。じゃあ、行きましょう」
「え?」
「現場に」
「あの、講義の方は?」
「いいわよ」
よくないですよ。
学園ですよ。
と思っていると、すでに制服の上着を着ている。
早い。
「ステラ」
私は、シャーロットさんを追いかける。
学園の校門を出ようとした時、何かの気配を感じる。
「どうしたの?」
「いえ、大丈夫です」
そういえば、何か忘れていたような気がする。
まあ、報告書ももらったから大丈夫か。
現場に着くと、シャーロットさんは地面を見ている。
というか、もう頭が地面に着きそうです。
私は、シャーロットさんの後ろに立つ。
その格好は危ない。
「これは、もしかすると、いや」
何かぶつぶつ言っている。
いきなり、魔法を発動した。
円。
シャーロットさんの固有魔法。
特段、周りに被害はない。
本当はある。
魔力導管が一時的に不具合を起こすらしい。
いつだったか、ワトソンさんが言っていた気がする。
この街で起こる不具合って、シャーロットさんのせいではないだろうか?
ただ、周りのみんなが驚く。
「すいません、監視局の捜査中です」
私は、大きな声で周りに言う。
シャーロットさん、一声言ってください。
周囲の人たちに頭を下げる。
周りの人たちは、迷惑そうな顔をしている。
監視局はあまり好かれていないので、目立ちたくない。
「やはり、そうか。とすると、動力は?」
シャーロットさんは、いきなり立ち上がり歩き始める。
ついていく。
こういう時、シャーロットさんに何を言っても無駄だ。
そして、嫌な予感がする。
お願いですから、貴族の館に踏み込まないでください。
私、最近始末書を書いていないのですから。
「ねえ、ステラ。資料には、音がうるさいとかはなかった? 馬車の音がするとか」
エセリン監査官の資料を思い出す。
「そうですね。深夜に軽い振動がある、と受けた項目がありました」
「地震が多いとか」
「はい、地震もありました」
実際は、地震などなかった。
「じゃあ、あとは」
「あとは?」
「夜に集合ね」
「え?」
「じゃあ、また」
そう言うと、シャーロットさんはそのまま道路を歩いていなくなった。
自由だな。
って、夜?
また残業だ。
なんか疲れた。
気づくと、私は昨日の屋台にまた来ていた。
監視局に戻り、頂いた報告書を各担当に渡す。
レストレード監査官を探すが、会議中らしい。
会議が長い。
珍しい。
今日は月一会議の日。
「おお、ステラ。すまん。これからちょっと、ほかの部署の会議がある。またな」
「はい。あの、夜に捜査に行きますので」
「ああ、わかった」
さすがレストレード監査官。
内容を聞かない。
私も内容を言わない。
だって、シャーロットさんが関わっているからです。
一応、机の上にメモを書いておく。
大丈夫です。
最近、衝撃的なことが多すぎて、色々と怖くない。
私、疲れているのかな?
また学園に行くことを考え、私は定時に上がることにした。
一回家に帰り、軽い食事をとる。
モフモフは、のんびりしている。
おいしい?
「よし、行くか」
「わん」
君はお留守番だよ。
学園に着く。
「こんばんは、シャーロットさん」
「あら、ステラ。どうしたの?」
ワトソンさんが出迎えてくれた。
「えっと、シャーロットさんと調査が……」
「そうなの? シャル!」
シャーロットさんは、パンを食べている。
「そうよ」
「そうよじゃないわよ。そういうことは言いなさいって言ったわよね」
「ええ、聞いていたわ」
ワトソンさんが頭を抱えている。
「それで、どこに行くの?」
「まだ早いわね。もう少し遅い時間がいいわ」
「じゃあ、ステラ、ご飯食べる?」
「いえ、食べてきたので」
「そう? じゃあ、お菓子食べる?」
「はい」
それは頂く。
ありがとうございます。
雑談をしていると、あっという間に時間が来た。
いつのまにか、ワトソンさんに愚痴を言っていた。
ワトソンさんは黙って聞いてくれる。
「じゃあ、行きましょう」
シャーロットさんはいきなり言う。
結構、遅い時間ですが。
学園というか、寮の規則とか大丈夫なのかな。
いつもより、シャーロットさんはこっそりと歩いている気がする。
階段も足音をあまり立てずに歩く。
「どこへ行くのですか?」
ハドソン寮長が玄関にいた。
顔が怖い。
普段と印象が違う。
「えっと、調査です」
シャーロットさんの一言の後。
なぜか、みんなが私を見る。
「はい。正式な依頼ではないのですが、夜に道路で不審な物が現れるというので、シャーロットさんにお願いしました」
私、最近言い訳がうまくなった気がする。
「はあ。いいのよ、ステラ。庇わなくても」
「ワトソン、お願いね」
「わかったわ」
「あの、何かあったのですか?」
ハドソン寮長があんな怖い顔をしていたので、私は不思議に思っていた。
「シャルが講義にも出ず、寮にも帰らず、連絡もしなかったから、めちゃくちゃ怒られたのよ。それなのに、ハドソンに何も言っていないからね」
「忘れていたのよ」
絶対、忘れてない。
面倒だったのだ。
道理で、こそこそ歩いていた。
階段から玄関まで、一言も話さなかったし。
しかし、寮にも帰らずずっと探していたのか。
どこに泊まっていたのだろう。
私より働いているのではないだろうか?
ご苦労様です。
みんな大変だな。
「それで、まずどこへ行くの?」
学園から少し離れたところで、ワトソンさんが聞く。
「今来るわ」
馬車が来た。
「馬車ですか?」
「これは早馬車ね」
早馬車。
普通の馬車よりも速度重視だ。
緊急時や犯人追跡時に使われる。
「これ、どうしたのですか?」
「レストレードに頼んだのよ」
「何か言ってました?」
私は恐る恐る聞く。
「ステラと一緒かって」
よし。
これでレストレード監査官の責任にもなる。
私たちは馬車に乗り、私が昨日調査した場所に行く。
馬車の中で、もう一度事件の内容を整理していた。
「今あるのは、その地面の跡ぐらいってこと?」
「そうですね。後は振動くらいですね」
「一番大きいのは、レジナルド准教授が関わっていること」
どれだけ信用されているのですか?
関わったら問題を起こすなんて、誰かみたいです。
ワトソンさんはため息をついている。
頑張りましょう。
「ここね」
私たちが着いた場所は、私が昨日調査したところの近くだ。
街路に魔力灯が光っている以外、何もない。
周囲の人もいない。
この時間だから、いる方が怪しい。
「昼にだいぶ絞り込んだのだけど、たぶん障壁を張っていたような気がするのよね」
えっと、もしかして、あれからずっとやっていたのですか?
たまに来る青い光の苦情って、やっぱりあなたですね。
私の視線を受けたのか、シャーロットさんが振り返る。
「ステラ、馬車の用意をしておいて」
「はい」
私は御者台から降り、馬と馬車を離す。
手綱と鞍を付け直す。
「私とシャーロットさんが乗るのでいいのですか?」
「ええ」
ワトソンさんは、なぜか嫌な顔をしている。
馬が苦手なのだろうか?
ネコだからな。
円。
また、勝手に魔法を発動する。
止めてください。
私、また苦情を受けます。
「よし、さあやるわ。ステラ、準備お願い」
そうしていると、何か振動を感じ始めた。
何かがこちらに向かっている。
それも、かなり速い速度でこちらに向かってきている。
私とシャーロットさんは馬に乗る。
さあ、準備は完了だ。




