データインストール
あらかじめ行軍スピードに合わせずに、先に向かうとダリアに言伝をしておいたので転移して、即現場入りする。
『禍々しい魔力波を感じます。最優先攻撃対象として葬り去ることを推奨します』
ゲーム上ではラスボス専用鎧を抹殺するために生み出されたものであることが関係しているのかはわからないが、珍しく敵愾心を剥き出してそう言う。
こいつがスピア以外に敵意を出しているところを初めて見る。
『攻撃してもお前と同じで再生するだけでただの無駄骨だ』
『貴族の師弟か? 何用だ?』
赤い瘴気を吹き上げる深紅の鎧ーー魔神器に向けて近づいていくと、騎士が声を掛けてきた。
「俺はクリア・ヴィラン辺境伯だ。ダリア殿下の頼みであそこの鎧を動かせるかどうか試しに来た」
『君のような子供がかの有名な英雄だと? にわかには信じられん』
「じゃあそこらのガキでも結構だ。そいつを試すために特定の身分が必要だとは思わんからな」
『まあ、そうなんだが』
騎士は歯切れを悪そうにすると、鎧の手を伸ばした状態で止まる。
流石に貴族に類するものに手を出すことは憚れたのだろう。
「初めて貴族であることが役に立ったな」
そのまま騎士たちを無視して、周りの瘴気を避けつつ魔神器のハッチまで風魔法で浮遊しながら向かう。
おあつらえ向きにハッチのロックは解除されており、そのままハッチを開けて操縦席に入る。
「あとは適当に時間を潰して、言伝だけして帰るだけだな」
『マスター』
「なんだ?」
『当該事項が起こる可能性は極めてゼロに近いですが、参考までに個体名ミュウ・ランズのデータをマスターにインストールしてよろしいでしょうか?』
「ほう、魔神器関係で何か問題が起こる可能性があるか。そう言えば、胸糞スキーは俺が知らないことを訳知り顔で云々していたな。問題があるごとにバラで送られてくるのも鬱陶しい。全て送れ」
『承知しました』
デマキに許可を出すと、頭の中に胸糞スキーの記憶が全て流れ込んでくる。
最初に奴の前世の転売ヤーとして活動している時の記憶が流れ込んできて、クソどうでも良い記憶だなと思っていると『アーマード・ファンタジー』に関する記憶のみ送られてくるようになった。
どうやら記憶を送る途中でも構成し直せるらしい。
「不思議な感覚だな。大量の情報をダウンロードされているはずだが、実際の時は全く進んでいないと言うのは」
記憶を送られると、自ずとここでやらねばならないことも分かった。
「デマキ。こいつを回収する。回収した主が俺だと悟られんように時間をおいて、一両日後に暗黒平原にある血みどろ沼に転移させろ」




