メロメロ計画破壊
丑三時。
こちらも油断しているだろうと思ってきたのか、奴らは現れた。
「マスター、お待ちください。彼女たちには伝わねなければならない思いがあるのです」
「俺にそんなものを聞く義務などない」
「言葉を聞いて頂けるというのならば、この後にマスターに協力することを誓います」
協力をするということは、こいつらの記憶を消すという意味で間違いないだろう。
ここで下手に争うよりは建設的ではある。
「俺を満足させることなど無駄だと思うが聞くだけ聞いてやろう」
ーーー
デウスエクスマキナーーデマキはここで決着が着けられると確信していた。
収集した人間たちへの協力体制も取り付けた上に、ヴィランをメロメロにするだろう誘い文句を各人に与えている。
演算も99.9%の確率で成功すると計算を叩き出していた.
抜かりはない。
ヴィランから発せられる魔力波から機嫌を推定しているが、凪のような状態で悪い状態でなく、あらかいじめ予想されていた状態の中では最善の状態だ。
「一番槍は私だったな!」
デマキが成功を予見していると早速第三皇女であるダリアが先方をきり、ヴィランの前に出る。
渡した誘い文句が書かれたメモを取り出すと手の中で握りつぶす。
「私は演説では用意した原稿を無視して話すタイプだ!」
デマキの中で原稿を直前になって放棄するという、原稿を作った時間を無駄にするような行為に対して、重大なエラーが発生する。
学習機能によって『時に人間が準備を無に返して行動するものであること』を演算の中に入れ、修正をかけると、自律行動を再開して、ダリアが何を言うかを見守る。
「ふむ、まずは一人の皇族として貴君に感謝を述べさせてもらおう! よくぞここまでの戦、皇国を勝利に導いてくれた! 貴君は私と共に覇道を歩む気はあるか? その気であれば、私の伴侶として城に迎え入れよう!」
「ない」
「そうか! では私は外野でこの皇国の行く末を見させてもらうことにしよう!」
ダリアは指定の位置に戻ると、ヴィランの動向を把握するために元居た場所に戻る。
この誘い文句はほとんどの皇国貴族からしたら眉唾ものであったが、権力に興味のないヴィランには通用しなかったため、デマキは歯痒さを感じる。
事前に誘い文句を言えば、ヴィランをメロメロにできたと言うのに。
「次は私でしたね。不祥、アナベル、ご主人様に愛の告白をしたいと思います」
専属メイドのアナベルは先ほどのダリアとは違い、ちゃんとデマキの作成したメモを見て、誘い文句を言い始める。
「マスター、あなたを愛しています。この想いが成就した暁には24時間365日あなたの耳元で愛を唱え続け、マスターのような優秀な個体が生まれる確率を収束させるために30人の子供を作りましょう。その子供達で騎士団を結成するのもいいかもしれませんね。そして子供たちがポンコツに惑わされないように、あらかじめデウスエクスマキナとその類型鎧が生涯乗るべき鎧だと刷り込み教育を行いましょう。マスターはもちろん私のことを愛してくれますよね? 愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛して。愛してーー」
「よこせ」
「は!」
自らの作成した誘い文句の締めである愛してコール100連発を聞き、デマキが堕ちたなと確信すると、ヴィランがコールの途中でアナベルに制動をかけ、デマキのメモを渡すように命令する。
「貴様らもメモを持っているな。全て渡せ」
ヴィランが全てのメモを回収すると、デマキは魔力波からヴィランのテンションがかなり下がっていることに気づく。
「デマキ、お前は当分出撃停止だ」
ヴィランは全てのメモを破ると、冷めた声でそう言い放つ。
「あんまりです。マスター。私を見捨てて、あのポンコツを取るというのですか」
「あいつはこんな怪文書を作成しないからな」
「嫌です。捨てないでください。マスター」
「自業自得だ。しばらく領地経営に専念しろ」




