武闘派集団襲撃フラグ破壊
「マイルズ様のシマで暴れるとはふてえガキだ! 診療所の上納金はどう落とし前をつけるつもりだ!」
薬術師の一件の諸々に片が付き、チンピラどもの溜まり場を消し炭に変えようかと思うと、外装が半壊し、内部の機構を剥き出しにしたスピアが通せんぼするように現れた。
こいつが薬術師が言っていた鎧持ちのマイルズらしい。
「今にも壊れそうなスピアなどで脅しになると思っているのか、お前は?」
「っ!! 舐めてんじゃねえ! ガキが!」
マイルズは逆上すると、こちらを踏み潰そうと足を持ち上げてきた。
「舐めてるのは貴様だ。外装の剥がれた鎧など生身にも劣る」
剥き出しになった魔力導線を切断する。
マイルズのスピアは沈黙し、背後に倒れ、路上生活者が逃げ惑う。
「うあああ!」
『俺の進路の邪魔になるな。デマキ適当な場所に転移させろ』
『承知しました。マスター』
このまま倒れると俺の進路を妨害するので、他の場所に飛ばす。
『中の搭乗者が出してくれと懇願していますがどうしますか?』
『豚箱に解放してやれ』
アホも処分したことなので、浄化活動を再開することにする。
手始めにあそこのチンピラの溜まり場を消し炭にしよう。
「あのすいません」
行動に移そうと思うと背後から声を掛けられたので、振り向いて呼びかけた声の主を確認する。
声の主はコソ泥の子供の母親だった。
「ドロナはどこに?」
「豚箱の中だ」
「……。すいません、娘がご迷惑をおかけして、この命とあの子を真っ当な道に戻して頂いたこと感謝致します」
コソ泥が自首したことを伝えると,母親は下を向いて考えるような顔をすると,感謝の言葉をこちらに送ってきた。
そこらの母親であれば,自分の子供が前科持ちになったら発狂しているところだというのに,正道に戻ったことを喜ぶとは殊勝なことだ。
「貴様のためにしたわけではない。病人は寝ておけ」
「いえ、恩人の前でそのようなことは。せめてこれを受け取っては頂けませんか。ウチにはこんなものしかなくて申し訳ないのですが。炭鉱夫だった夫の形見の箱です」
そう言うとここまで引き摺ってきたのか、背後にある棺桶を持ち上げようとし始めた。
人の大きさほどあるので、ガリガリの母親では力んだ瞬間にぽっくり逝きそうだ。
「そのままでいい。あとはこちらで回収する。貴様はまずこれで養生しろ。見ている者の目に毒だ」
「すいません、ありがとうございます」
持っていた金貨を一つ渡すと母親は何度も頭を下げて、よろよろとした足取りで立ち去っていた。
『マスターに再会できる保証もないと言うのに死に体でスラムを彷徨って箱を渡そうとするとは。私にはあの人間の行動が理解できません』
『あいつにとって、命を助けられたこととガキが更生する可能性ができたことにはそれだけの価値があったと言うことだろう。人は価値を見出したものに必要以上の労力を掛けたり,リスクを冒すことが多々ある。これも演算のパターンに追加しておけ』
『承知しました』
「とりあえずこいつは軍の宿舎に置いておくか」




