毒に沈む胸糞
スラム街の診療所というだけあって,落書きや外壁の欠けが目立つ。
「もうとっくに閉まってる時間だから。中に入れてもらえないよ」
「無法者のルールなど俺が知ったことではない」
扉を火魔法で爆破して,吹き飛ばす。
「なんだ!?」
「!?」
中には白衣の男と娼婦のような露出の多い格好をした少年がいた。
状況から考えて,白衣の方が件の先生で,男娼の子供の方が他のカモと言ったところか。
「ジェント! ガキが攻め込んできた! 殺して処分してくれ!」
「たく,ガキが仕事を増やしやがって。弱肉強食っていう世の中のルールを教えーーあああああ!!」
先生が叫び声を上げると,薬棚の影から獣人の男が姿を表したので,風魔法で吹き飛ばして昏倒させる。
「先生,毒を盛ってたなんて嘘だよな?」
続けて,先生を始末しようと思うと,案内役に連れてきた子供がまだ先生に騙されたことを信じられないのかそう問いかけていた。
「盛ってるに決まってるだろうがガキが! お前らが俺を誘惑するから悪いんだろうが!」
先生は本性を剥き出しにすると,近くの机の上仁置いてあったガスマスクを被ると灰色の液体の入った瓶を懐から取り出し割った。
すんなりと動作を行っているところを見ると前もって,こういうことになった時のために予行演習でもしていたようだ。
最悪の事態に陥りことを想定して動いているところが往生際の悪いゲスらしい。
『マスター,非常に強力な毒ガスが発生しました。避難を推奨します』
『逃げる必要はない』
逃げずとも発生地点から生じる毒ガスを風魔法でその場で拡散しないように止めないようにすればそれで済むのだ。
『そうだ! 大事な人を自らの手で死に追いやっていたことに気づき絶望するその顔を俺に想像させ,誘惑したお前らが悪い! 俺が調合した毒で皆死んで罪を贖うがいい! 私にも解毒剤が作れぬほどのこの猛毒で地獄の苦しみをな!』
「嘘だ! 先生が,俺を! くそ,全部全部嘘だったのかよ!」
毒が広まったと確信したのか先生が哄笑を上げると,信頼していた人物がカスだったことがよほどショックだったのか,子供二人が膝をつく。
胸糞の悪い奴が上機嫌だと非常に腹が立つ。
「黙れ」
これ以上こいつの言葉を聞くのも腹立たしいため風魔法を毒ガスを操り,ガスマスクの濾過が間に合わない量の毒ガスをガスマスクに吸い込ませる。
「ギャアア! なんだこれは! 毒ガスがガスマスクの中に! 俺の背後には鎧持ちの武闘派集団マイルズが居るんだぞ! こんなことをしてただで済むと思うな!」
「たかだか鎧持ちの雑魚に何ができる。くだらんことを言ってる暇があるのならささっと逝け」
「ヴヴヴヴヴ!!」
先生は絶叫を上げると,口から泡を吹きながら倒れた。
いつまでも風魔法で毒ガスを制御するのも面倒なため,子供と先生どもを外に放り出す。
「先生は毒漬けになってくたばったようだな。そこの貴様。ついでだ。毒を盛られた家族を解毒してやる。案内しろ。コソ泥の貴様は盗んだところに金だけでも戻して,そこで伸びてる獣人のアホと一緒に自首してこい」
「「は,はい」」
子供二人が放心していたので,指示を出す。
デマキに診療所の中にある金を出すように指示を飛ばそうと思うと,もうすでに命令を実行したようで,金貨の山が目の前に現れた。
男娼の少年が案内のために歩き始めると,コソ泥の方は金貨の山を一部を掴んで,道を駆けていった。




