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ノエルの魔法

 

 闇夜の昼間という貴重な経験(?)をした後、俺たちは何事も無かったかの様に眠りに就いた。もちろん、魔物の襲撃を警戒する為に順番で見張りをしながらだ。

 全員で寝てしまえば、魔物に襲われた時に命の保障はない。カイトと、力を奪われている状態のノエルは特に危ないだろう。


 ん? 俺か?


 俺は全く問題ない。バンイチ村に辿り着くまでにも野宿をしたが、普通に朝を迎えられた。と言うか、魔物に襲われてたとしても恐らくノーダメージだろうし、もしかしたら寝返りで倒してたかもしれん。意味不明なステータス様々である。


 バンイチ村までの俺の野宿事情はともあれ、無事に朝を迎えた俺たちは、今日もカンドセの街へと向けて元気に歩き出した。


「タロウ様、我にもご命令を」

「なんだ、ノエルも戦いたかったのか?」

「カイトの様な下郎に任せずとも、タロウ様の行く手を塞ぐ愚か者めらは我が屠ってみせます。なので、力の許可をお願い致します!」

「げ、下郎……!? 昨日から思ってたけど、ノエルちゃん僕に対する態度が酷くない!? あ、ごめん……!」


 その道中、今日も今日とて出現したゴブリンに対し、カイトが率先して戦おうとしてる時にノエルが戦いたいと言ってきた。うむ、その後の余計な一言を吐くカイトに向けたノエルの視線は絶対零度である。それだけでゴブリンくらいなら死にそうだな。

 しかし、ノエルの俺に対する忠誠心みたいなのは分かるけど、カイトに任せた方が楽だし、カイトのレベル上げも兼ねてるから一石二鳥だったのに仕方のない奴だ。


 だが、リンクスキルの練習をする良い機会でもある。


 毎回全ての力を解放するのも良いけど、その度にあられもない姿になるのは正直目の毒だ。童貞の俺には刺激が強過ぎて、結果、ステテコパンツを汚す羽目になってしまうのだ。……変な目で見るんじゃない!


「分かった。『50MPの使用を許可する』」

「た、タロウ様!? こ、これでは我の得意とする広範囲殲滅魔法が……!」


 うむ、制限をかけて正解である。

 と言うか、たかがゴブリン一体にどれだけの魔法を唱えるつもりだったの、ノエルちゃん!?

 まさか……昨夜の俺の『ファイア』に対抗して、なんて事はないよね……?


 ま、まぁ気にしたら負けな気がするから、この辺で考えるのはやめておこう。


「ねぇ、タロウ。ノエルちゃんに任せるみたいだけど大丈夫なの? 幼い女の子なんだよ?」


 ノエルの冷たい視線から立ち直ったカイトがそう言ってくる。ノエルのお陰でメンタル面が鍛えられてる様だな。重畳である。


「気持ちは分かる。まぁ黙って見てろよ」

「……危なそうだったら僕も参加するからね?」


 カイトの心配は分かるが、ノエルの本当のステータスを知ってる俺は、逆にやり過ぎないかが心配である。……制限したから大丈夫だよな?


「くっ!? これもダメか……! だったらこれは……? むぅ、無理だ! MPが全く足りん! 仕方ない、我の好みではないがこの魔法を唱えるか。――『天の理、地の理、あまねく理を司る我が命ずる。砕けよ大地! 噴き上げよ炎! グラン・ボルケーノ!!!!』」


 何やらブツブツと呟いていたノエルだが、どうやら唱える魔法を決めた様である。

 しかし目の前のゴブリンは空気の読める奴だな。ノエルが魔法を唱えるのを黙って待っているとは。このまま死ぬのが実に惜しいゴブリンである。……あっさり死ぬと思うけどな!


 なんて事を思っていると、ゴブリンがいる辺りの地面がひび割れはじめ、そこから真っ赤な色のドロっとした物がじわりと噴き出してくる。景色が揺らめく程の熱気を放っている事から溶岩だと分かった。

 ノエルが唱えた魔法は、どうやら溶岩を噴き出して攻撃するという魔法の様である。

 それにしても、そんな状態なのにゴブリンは未だにその場で呆然としている。仕様なのだろうか?


「あ、あれは……! かつて賢者が使用したっていう伝説の『グラン・ボルケーノ』じゃないか!? という事はつまり、ノエルちゃんは賢者って事なの!!!?」

「カイトはあの魔法を知ってるのか? 知ってるならば、どんな魔法なのか教えてくれ」


 そんな会話をカイトとしている間にもノエルの魔法は進行して行き、火山の噴火を模したその効果によってゴブリンは跡形もなく蒸発していた。どこからともなく『こんがり焼けました〜ッ!』などという言葉が聞こえてきそうだが、焼けたどころか骨すら残っていない状態である。魔物を倒すとその体が自然消滅する世界だから、結局は何も残りはしないのだが。


 ともあれ、ゴブリンが消滅した辺りに目をやると、魔法の効果が消え去った後には溶岩溜りが出来ていた。街道から逸れている為放置しても大丈夫だろう。

 その内冷えて固まって岩となり、いずれこの辺りの景色と化すだろうしな。もしかしたら観光に訪れる人が居るかもしれない。……無いか。


 そんな感想を抱いた俺へと、ノエルが満面の笑みで近付いて来た。


「タロウ様! 我の活躍を見て下さいましたか? あの魔法は初歩的な魔法ゆえ大した効果もございませんが、大地の力に干渉して敵の動きを止め、そこへ溶岩を噴き上げさせて火傷を負わすだけの魔法でございます。もっと力の許可を頂ければ、次はタロウ様も納得する様な魔法をご覧にいれますが、如何でしょうか?」

「あ、あれが初歩的な魔法……!?」


 満面の笑みで褒めてくれと言わんばかりに魔法についてカイトの代わりに教えてくれたノエルと、驚き過ぎて開いた口が塞がらないといったカイト。あの魔法が初歩的かどうかは俺は知らんが、ノエルの力の解放はしない方向で行こうと思う。

 だいたい、俺の憧れの魔法を目の前で見せつけられるのは羨ましくも思うが、魔法の方向を誤って、それでカイトが死ぬ様な事があってはならない。それ程ノエルの魔法の威力は高かった。

 よって、ノエルの力の解放はカイトや俺がヤバい時以外は許可しない方針にする。べ、別に、悔しくなんてないんだからね!


「うん、ノエルはしばらく戦わなくていいからな? 強いのは充分に分かったし、カイトが勇者を目指してるって事だから、これからもカイトのレベルを上げる方針に変わりはない」

「分かりました……。で、でも! 我の力が必要になった時には戦ってもよろしいのですよね?」

「カイトや俺がヤバいと思った時は迷わず力の解放をするから、その時は頼むぞ?」

「はい! 必ずやタロウ様のお力になる所存にございます!」

「という事で、カンドセ目指して頑張って歩くぞーッ!」

「おーッ!!」


 ノエルが若干泣きべそをかきかけたが、その後の俺の見事なリカバリーによって機嫌が直った。クリクリした瞳に溜まる涙……思わずキュンってなるくらい可愛かったな。


 ち、違う……そういう趣味じゃないからな……!


「あれが初歩的な魔法……」


 という事で、俺とノエルはカンドセに向かって歩き出したのに、カイトは未だに口を開けっぴろげてブツブツと何かを呟いていた。おーい、自分の世界から帰ってこーい!


「カイト! いつまでもボーッとしてると置いてくからな!」

「あ、待ってよ!」


 ノエルの魔法とカイトの放心はともあれ、ノエルとのリンクスキルを試したゴブリンとの戦闘後も俺たちはカンドセの街へと順調に進んだ。

 方針を決めた以上、それからエンカウントしたゴブリンは全てカイトが屠っている。そろそろレベルアップかな? ニッコリしてる所を見ると、今倒したゴブリンでレベルアップしたみたいだな。実に順調順調。


 ちなみにだが、ここでゴブリンの解析結果を記しておく。


 ♦♦♦


 魔物名:ゴブリン

 種族名:小鬼族

 レベル:5


 HP:56

 MP:5

 特技:無し


 備考:スライムよりは強いが、やはり雑魚の域から脱する事が出来ない可哀想な魔物。腰に巻いた一枚の布切れが哀愁を誘う。

 いつかはキングの様に立派になりたいと夢見ている。……アレも含めて。


 ♦♦♦


 うむ、備考の項目が新たに見れる様になった様だな。

 何なに? 哀愁? ふむふむ、キングみたいに立派なアレに憧れているとな?


 ……何だか切なくなってしまった。


 頑張れゴブリン! お前の夢は叶う事は無いと思うが、きっと来世は薔薇色だ……と思うぞ?


 なんて事を妄想しつつも歩き続けた俺たちは、後一日でカンドセの街に到着する所まで来ていた。バンイチ村を発ってからここまで一週間って所である。中々に順調な道程だな。

 全ての戦闘をカイトに任せた事でカイトのレベルも12まで上がり、『マーダープラント』にも無傷で勝てる様になっている。

 マーダープラントとは、レベルが10前後の植物タイプの魔物であり、姿はウツボカズラに似ている。自らの蔦をウネウネと動かして人間を捕食しようとする所は、やはり魔物といった所である。正直、気持ち悪い。


 ――ボコボコボコッ!

『キシャーッ!!!!』


 噂をすれば影というのは、どうやら本当の様だな。

 俺たちの目の前の地面から勢いよく蔦が飛び出し、次いでマーダープラントがその姿を現すのだった。

お読み下さりありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新話まで読みました! 定番のロリ魔王かと思えばエロ魔王でもあったのですね!(ぶっちゃけ好みの設定です) 相変わらずの小ネタもあり、ニヤニヤしながら読ませて貰ってます。(笑) 勇者、魔王…
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