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ヴァンスの流儀 【元LAPDの賞金稼ぎ、アメリカ横断2,700マイルの逃走劇】  作者: Masa Max Hase


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第十話:カレン・チャベス

 第十話:カレン・チャベス

 マーカスは、かつての部下であるカレンに電話した。

 彼女とは2年間、分署のCIDで相棒だった、6年前のことだ、30代の女性で兎に角根性がある、マーカスは彼女のきめ細かい捜査と明るい性格、特にときどき放つ皮肉たっぷりの「どぎつい冗談」が気に入っていた、内容も秀逸で、相手を選ばない姿勢が何より気に入っていた。

 またブラジリアン柔術が強いのもポイントが高い。

 

 カレンの明るい声が響く

 「はい、『厄介ごと』お断りキャンペーン中のカレンですが、なにか?」

 この塩対応は彼女のスマホの画面にマーカスの名前が表示されたからだろう、或いはマーカス自身には言えない様な「影のニックネーム」が表示されたのかも知れないが...。

 

 彼女が現在勤務するのは、デレクが逮捕されたベニスビーチを管轄する、パシフィック分署の北に隣接するウエスト・ロサンゼルス分署のCIDだ。

 パシフィック分署が 観光客やサーファー、ストリートアーティストが多く集まるビーチ特有の開放的な雰囲気がある一方で、ホームレス問題や薬物関連のトラブル、軽犯罪も多いエリアなのに対して、ブレントウッドやウエストウッド、センチュリーシティーなど、比較的高級住宅が多く、また学生の街UCLA周辺エリアを管轄している。

 

 カレンは、相変わらず威勢がいい、マーカスはこれまでの経緯を説明し、いくつかの調査を頼んだ。

 「聞いてくれカレン、デレクの処理をした担当刑事は誰か。出来たら一件書類に目を通してくれ」

 

 そんなに小箱が欲しいならば、署長権限で釈放し、後日の書類送検というパターンを選び、任意捜査に切替えてデレクに張り付くか、若しくは何処かに監禁しておくか.....。

 マーカスは、なぜ、通常に送致しておいて、その後の保釈申請で釈放するなど「ややこしい」手段を選んだのかが解せなかった。

 

 マーカスは事件で忙しいカレンに申し訳ないと思いつつも、頼るしかなかった。

 「デレクがシカゴで泥棒に入った家の詳細も頼む。」

 「フルネームは分からんが、エディーというチンピラの情報も頼む。」

 「それと画像を送るから、車両照会も頼む。」

 「ボブとカストラスにも説明を頼む。すまんカレン、今回も厄介ごとだ。」

 マーカスは矢継ぎ早に調査事項をカレンに投げつけた。

 

 カレンは、ときおり「なるほど」「ふむふむ」などと相槌を打ちながら、メモを取っている様で、ポケットサイズのメモ帳にボールペンを走らせる音が入る。

 そして、カレンが何か思いついたようにマーカスを遮った。

 「マーカス、銃撃を受けたんでしょ?」

 「それと公用のタホをクラッシュさせた?」

 「例のトラックで?」

 マーカスは、相変わらず、初耳の込み入った話のポイントを掴むのが早いカレンの質問を半ば心地いいとさえ感じながら答えた。

 「ああ、そうだよ。」

 次のカレンの言葉に2種類の感情を抱いた。「やはりな」と「不安」、カレンがいぶかし気に続けた

 「マーカス、手配されてないわよ、公用車を壊したのに」

 「考えてみて、あなた達、銃撃の被害者であり、暴行、道交法違反、もしタホの乗員が負傷していたら傷害罪の容疑者よ、あっ、公務執行妨害も」

 「周辺一帯に、いやいや全国手配でしょ普通。」

 「えーと、ラッキーなの?アンラッキーなの?」

 

 全くもって彼女の言うとおりだった、通常であれば、この手の犯罪で、しかもインターステイト、つまり「州跨ぎ」は速やかに全国手配される。

 あくまで「通常は...。」だが。

 カレンの声でほんの少しだけ明るい気持ちが芽生えかけて、直ぐに消えた。

 問題は山積みだ、いや、一体何が問題なのか、それが問題だ。

 

 カレンとの電話を切ったマーカスは、視線を目前の道路に落し、塞ぎこむデレクに質問を再開した。

 「なぁデレク、エディーは何故自分で泥棒しない、その方がよっぽど楽だろう?」

 デレクは、真っ直ぐ前を見つめたまま、ため息交じりの声で言った

 「知らん........。俺にはもう、何も分からない」

 

 マーカスはそれ以上の追及を止め、デレクにシートをリクライニングさせ、寝ておくように促した。

 「デレク、色々心配だろうが、これから忙しくなりそうだ。」

 「今は寝ておけ、寝てる暇が無くなるかも知れない。」

 

 先ほどのカーチェイスを考えると、タホは我々を守っていたことは間違いない、そうとしか成立しない動きだった。

 ただそれがいつまで続くかは分からない、もしかしたら「金塊の箱」を回収するまでは、という期限付きかも知れない。

 そもそも、一体誰から守っているのか?

 エディーとかいうチンピラか?何の躊躇もなく発砲してきやがった。

 確かに危ない奴らだな。

 それとも、他にも潜在的な脅威が存在するのか、タホの奴らは、おそらくシカゴ警察、または、その手先も時間と状況によって敵となるのだろうか、LAと繋がっていることは間違いない訳だが....。

 

 現時点では、堅結びに絡まった紐が解けない感じだ、カレンの連絡を待つしかないな。

 「また厄介なことに首を突っ込んでしまった。」

 マーカスはそんなことを考えながら、夜のハイウェイをL.Aに向かってひたすら走らせた、おそらくはトラブルが目白押しのL.Aへ.......。


最後までお読みいただきありがとうございます!

新キャラ、カレン・チャベス遂に登場です。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下部の【★評価】やブックマーク登録をしていただけると、執筆の大きな励みになります!

次回もお楽しみに。

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