表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運値MAXの俺、異世界のカジノを初日で壊滅。支払いに差し出された姫騎士を景品としてお持ち帰りする  作者: 葉山 乃愛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/44

第29話:パッチワークの街と、名もなき勇者たち

空を見上げると、そこにはファンタジーの青空と、大学の講義室で見慣れた蛍光灯のノイズが混ざり合っていた。

再定義された世界は、王都の石畳と現代のアスファルトが交互に並ぶ、歪な「パッチワーク」の街へと変貌していた。



「……カイト、生きてる? どこか、痛むところはない?」



隣に倒れていたエリザベートが、俺の顔を覗き込む。

彼女の豪華なドレスの上には、なぜか俺の大学のカーディガンが羽織られていた。



「ああ……なんとか。どうやら『全ツッパ』の後の支払いは、命じゃなかったみたいだな」



俺が立ち上がると、手の中にあったはずのスマートフォンは、ただの「ガラスの破片」に変わっていた。

ステータス画面も、スキルの通知も、期待値のグラフも、もう現れない。

俺たちは、この理不尽なシステムから、ついに「ただの人間」として放り出されたんだ。



「カイト殿! エリザベート様! 無事か!」



瓦礫の向こうから、シルヴィアが駆け寄ってくる。

彼女の鎧は半分が消え、下にはジャージのような服が見えていた。



「アタシも元気ニャ! でも、なんだか体が軽いニャ。……魔法の匂いが、しなくなったニャ」



ミアが鼻をひくつかせ、困惑したように周囲を見渡す。

魔力が消えたわけじゃない。魔法という「機能」が、この街に溶け込んでしまったんだ。



「当然だよ。ここはもう、管理されたゲーム盤じゃない。……僕たちの意思が、直接現実に干渉する『生きた世界』だ」



阿良多が、眼鏡を拭きながら現れる。彼の手には、もうデバイスはない。

だが、その瞳にはかつてない知性が宿っていた。



「先輩。……私、もう一人じゃありません。この街の『隙間』に、私たちの居場所があるのを感じます」



ユキがそっと俺の袖を掴む。

彼女が止めた時間は、この街の「裏路地」として保存され、俺たちの隠れ家になっていた。



平和な再会。……だが、それを切り裂くように、街のスピーカーから耳障りな電子音が鳴り響いた。



『警告。未登録のオブジェクトを検知。……「ガベージ・コレクタ」を派遣します』



街の境界線から、真っ黒な「清掃員」のような影が、音もなく迫ってくる。

それはシステムがこの世界を「正常」に戻すために送り出した、俺たちという『バグ』を消去するための掃除屋だ。



「……皮肉だな。神様を辞めた途端、不法投棄物扱いかよ」



俺は腰に下げた、ただの鉄の棒を握りしめた。

ステータスによる補正はない。だが、俺の体には数えきれないほどの死線を越えた「感覚」が刻み込まれている。



「カイト殿、指示を! 守護騎士の称号はなくとも、私の剣は貴殿の盾だ!」



「アタシも! スキルがなくても、追いかけっこなら負けないニャ!」



「……よし。これが、俺たちの『本当の第1話』だ」



俺は、隣で祈るように手を握るエリザベートに笑いかけた。



「不確定要素だらけの人生を、楽しもうぜ」



俺たちは、ステータス表記のない、本当の戦場へと駆け出した。



その時、俺のポケットの中にある「スマートフォンの破片」が、一瞬だけ、誰にも見えないほど小さな光を放った。



『隠しクエスト:自分自身の名前を取り戻せ。……報酬、なし』



それでいい。報酬ジャックポットなんてなくても、俺たちはもう、最高に幸せなんだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ