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幸運値MAXの俺、異世界のカジノを初日で壊滅。支払いに差し出された姫騎士を景品としてお持ち帰りする  作者: 葉山 乃愛


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第27話:不条理な神座と、欠けた1パーセント

王都の空を埋め尽くした『黒い心臓』が、ドクン……と重低音を響かせて脈打った。



その鼓動のたびに、街の建物や街路樹がデジタルな砂となって吸い上げられ、ヴェノムの力へと還元されていく。



「見てください、高木くん。これが君たちの愛した世界の末路だ。

全ての感情、歴史、不確かな可能性を、私はこの『心臓』という名のサーバーに統合する」



ヴェノムは宙に浮き、融合したデバイスから溢れ出す圧倒的な計算力で、現実そのものを書き換えていく。



「カイト殿、前方の空間が消失している! 近づくことすら叶わないのか……!」



シルヴィアが剣を構えるが、彼女の足元の石畳までもが崩れ始め、底なしの虚無が顔をのぞかせていた。



「ニャ……足場がないなら、アタシが空を駆けるまでニャ!」



ミアが瓦礫を足場に跳躍しようとするが、ヴェノムが指をさした瞬間、彼女の軌道上に「不可視の壁」が出現し、無慈悲に叩き落とされる。



「無駄ですよ。私の計算領域テリトリーでは、君たちの動線は全て先読みされている。

次に君が右へ動く確率は99.9%……。残りの0.1%も、既に削除済みだ」



完璧な先読み。完璧な管理。

そこには、俺たちが付け入る隙など一ミリも残されていないように見えた。



「……いいえ、計算違いよ、眼鏡の男」



背後から、低く、しかし冷徹な声が響いた。

意識を取り戻した阿良多が、神崎に肩を貸されながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。



「阿良多! 無事だったのか」



「……高木くん。君に貸しを作るのは癪ですが、あのアマチュアの理論には反吐が出る。

彼は『効率』を求めているのではない。ただの『独占』だ」



阿良多は震える手で、俺のスマートフォンを指差した。



「僕の端末のバックドアを一つだけ残しておきました。

高木くん、君の『期待値』と、僕の『最適解』……そして、あちらの図書委員さんの『記録』。

これらを同期させれば、あの『心臓』のバッファをオーバーフローさせられる」



「……できるのか、ユキ?」



俺が隣のユキを見ると、彼女はまだ少し赤くなった目で、力強く頷いた。



「はい、先輩。……私が止めた時間のデータ、まだ私のタブレットの中に残っています。

これを一気に流し込めば、あのアカウントに過負荷をかけられるはずです」



俺たちの世界の知識と、この世界の理不尽が、今一つに重なろうとしていた。



「よし。シルヴィア、ミア! あの『心臓』の直下まで俺たちを運んでくれ!

エリザベート、お前は俺たちの魔力を繋ぐ『アンカー』になってくれ!」



「了解よ、カイト! 私たちの絆が、ただの数字じゃないってことを証明してやりましょう!」



エリザベートが俺と阿良多、そしてユキの手を繋ぎ、円陣を組む。



「行くぞ!!」



シルヴィアが咆哮し、崩れゆく瓦礫の道を、一筋の光となって駆け抜ける。

その背中でミアが風を操り、俺たちを包む重力の影響を無効化した。



「……愚かな。一括処理バッチ・プロセスで消去してあげましょう」



ヴェノムが巨大な黒い雷を放つ。

回避不能、直撃すれば存在が消滅する一撃。



だが、その瞬間。俺のスマートフォンの画面に、黄金の『7』が三つ揃った。



『全リソース解放:ラスト・ジャックポット』



「阿良多、ユキ、今だ!!」



俺たちの叫びと共に、三つのデバイスから膨大な情報が『黒い心臓』へと逆流した。

ヴェノムの「完璧な管理」の中に、俺たちが過ごした「無駄で、不運で、最高な日々」の記憶がノイズとなって流れ込む。



「なっ……!? なんだ、このエラーは!

『ラーメンの味の好み』? 『パチンコの回転数の不満』?

こんなゴミのようなデータで、私のサーバーが……!!」



「ゴミじゃない。それが俺たちが生きてる証だ!!」



ドガァァァァァンッ!!



『黒い心臓』が耐えきれずに激しく脈打ち、亀裂からまばゆい光が溢れ出す。

ヴェノムの絶対的な支配が崩れ、空の黒が剥がれ落ちていく。



しかし、光の中から現れたのは、勝利の予感ではなかった。



『警告。システムコアの露出を確認。

……「真の管理者」による強制再起動まで、残り180秒』



崩壊する心臓の奥底。そこに、この世界の全てを創り出した「本体サーバー」の入り口が開いた。



「……カイト君。最後は、あの中に入って『直接』叩くしかないみたいだ」



神崎が、悲しげに、しかし覚悟を決めた顔で言った。

だが、その入り口に入れるのは、システムに選ばれた『一人』だけ。



俺は、隣に立つエリザベートを見つめた。

彼女の瞳には、行かせたくないという悲しみと、信じているという強さが同居していた。



「……待っててくれ。すぐに戻って、今度こそ最高の祝杯を挙げよう」



俺は一人、光り輝く奈落の底へと飛び込んだ。



その先に待っていたのは、俺の大学の講義室とそっくりな、しかし誰もいない静寂な空間。

そして、教壇に座ってこちらを見ている、「俺自身」と同じ顔をした男だった。



「……やっと来たね、プレイヤー1。君がこの『物語』を終わらせるのかい?」



伏線は、ついに俺自身の正体へと繋がっていく。

世界の真実まで、あと一歩。


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