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幸運値MAXの俺、異世界のカジノを初日で壊滅。支払いに差し出された姫騎士を景品としてお持ち帰りする  作者: 葉山 乃愛


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第17話:期待値の向こう側、そして「全員」での帰還

「……ふざけるな、神崎。一人で格好つけてる暇があったら、手を動かせ」



俺はコンソールへ向かおうとする神崎の襟首を掴み、強引に引き戻した。



「な、何を言ってるんだ! このままだと初期化が始まって、王都どころかこの国が消えるんだぞ!

僕がここでシステムを内部から足止めしている間に、君たちは一刻も早く地上へ――」



「断る。お前を置いていったら、俺たちの『期待値』が下がるんだよ」



俺は神崎を突き飛ばすようにしてコンソールの前に立ち、赤く点滅するモニターを睨みつけた。



「期待値……? カイト君、君はまだそんなギャンブルみたいなことを……!」



「ギャンブルじゃない。これは投資だ。……神崎、お前は不運に慣れすぎて、

『最悪の事態』を避けることしか考えていない。だが、俺は違う」



俺は『共同戦線の導き』を全開にする。視界が白く弾け、無数の電子の奔流が見えた。

システムの深層、そこには「幸運」でも「不運」でもない、ただの膨大な計算式が眠っている。



「シルヴィア、折れた聖剣の柄をコンソールの右スロットに叩き込め!

ミア、お前はその速度で左の冷却パネルを破壊し続けろ! 魔法による熱暴走を防ぐんだ!」



「了解だ、カイト殿! 私の誇り、ここに捧げる!」



シルヴィアが聖剣の残骸を、火花散るスロットへと力任せに押し込む。

騎士としての彼女の純粋な「意志」が、冷徹なシステムに「ノイズ」として混入していく。



「ニャハッ! 壊すのならアタシの得意分野ニャ! 爪が折れるまでやってやるニャ!」



ミアが残像を残すほどの速度で、冷却装置を切り刻む。

機械の悲鳴と共に、オーバーヒートを起こしかけていた部屋の温度が一時的に安定した。



「エリザベート! お前の全魔力を俺に流せ。……システムの『書き換え』には、

この世界の正当な支配者の承認が必要だ!」



「……ええ。私のすべてを、貴方に預けるわ。思う存分、使いなさい!」



背後からエリザベートが俺を抱きしめるようにして、その温かくも強大な魔力を流し込む。

王族の血筋が持つ「権能」が、俺の指先を通じてデジタルな海へと浸透していった。



「……カイト君。君は、システムそのものを『買収』しようとしているのか?」



呆然と立ち尽くす神崎に、俺は不敵な笑みを向ける。



「当たり前だ。失った幸運を嘆くより、残ったリソースを全部突っ込んで、

『全員が助かる未来』に全額ベットする。……それが勝負師のやり方だろ?」



モニターに表示された初期化の進行度は「98%」。

俺はエリザベートの魔力を指先に集め、システムのコアへと直接アクセスした。



『警告。非正規の干渉を検知。フォーマットを加速します』



「……させないわよ。この世界は、私たちのものだもの!」



エリザベートの叫びと共に、俺の視界の中で、かつて失ったはずの

『幸運値:0』の数字が激しく回転を始めた。



0……1……7……7……。



カチリ、と何かが噛み合う音が脳内に響いた。



「……揃った。全リセット(全設定変更)だ!!」



俺の指がエンターキーを叩く。

その瞬間、真っ赤に染まっていた部屋が、まばゆいばかりの白一色に包まれた。



システムの再構築。

それは、幸運に依存する世界から、住人たちの意志が反映される世界への移行。



やがて光が収束したとき、俺たちは静まり返った地下室に立っていた。



コンソールのモニターには、一言だけ日本語のメッセージが表示されていた。

『ログイン完了。ユーザー:カイト&フレンズ。設定:通常運転』



「……止まったのか? 初期化が……」



神崎が震える手で、自分の体を確認する。

黒い泥も、バグのノイズも、すべて消えていた。



「ああ。どうやら俺たちは、システムに『勝った』らしいな」



俺は力尽きてその場に座り込んだ。

隣ではシルヴィアが満足げに微笑み、ミアが尻尾を丸めて眠そうに目を細めている。



「……お疲れ様、カイト。本当に、貴方は最高に無茶苦茶な旦那様だわ」



エリザベートが俺の隣に座り、そっと肩に頭を預けてきた。



「神崎。お前、これからどうするんだ? 管理者の仕事はもうないぞ」



俺の問いに、神崎はしばらく沈黙した後、困ったような顔で笑った。



「……そうだね。とりあえず、君たちの国の美味しいものでも食べてみようかな。

僕、この世界に来てから一度も『美味しい』と思ったことがなかったんだ」



「いいわね。王宮の料理人が、最高の晩餐を用意させるわ。

もちろん、カイトを殴ったお詫びとして、少し働いてもらうけれど?」



エリザベートの茶目っ気たっぷりの言葉に、神崎は「勘弁してくれよ」と肩をすくめた。



俺たちはゆっくりと立ち上がり、地上の光を目指して階段を上り始める。



幸運値MAXの無双劇は、ここで終わったのかもしれない。

だが、運がなくても、仲間がいれば、いくらでも逆転できる。



「……さて。明日からは、普通に冒険者稼業でも始めるか」



「カイト殿、私の新しい剣の選定に付き合ってもらうぞ。今度は、折れないやつをな」



「アタシはお腹いっぱいお魚が食べたいニャ!」



賑やかな声に包まれながら、俺はポケットの中で一枚のコインを弾いた。



それは、どこまでも高く、自由な空へと舞い上がっていった。


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