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幸運値MAXの俺、異世界のカジノを初日で壊滅。支払いに差し出された姫騎士を景品としてお持ち帰りする  作者: 葉山 乃愛


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第14話:不運の連鎖と、泥臭い逆転劇

王都を象徴する『星の運河』。その中央に架かる巨大な石橋が、今にも崩落しようとしていた。



これまでの俺なら、たまたま通りかかった荷馬車の車輪が隙間に挟まり、それが支えとなって崩落が止まる……なんて奇跡が起きていただかっただろう。



だが、今の俺の視界にある数値は無情にも『0』を示したままだ。



「カイト殿、橋の亀裂が止まらない! このままでは運河が塞がり、下流の居住区が浸水する!」



シルヴィアが呪いの光を放つ聖剣を杖代わりにし、膝をつきながら叫ぶ。

彼女の顔は蒼白だ。聖剣は主の魔力ではなく、今は負のエネルギーを吸い取って暴走しようとしている。



「カイト、指示を! 貴方のあの『力』は、どうすれば発動するの!?」



エリザベートが崩れる石畳の上で、必死に俺の手を握る。

彼女の震える指先から、俺への全幅の信頼が伝わってきた。



(落ち着け……。運がないなら、今ある状況をすべて利用するんだ)



俺は深呼吸をし、新スキル『共同戦線の導き』を発動させた。

すると、視界が青白く反転し、周囲の構造物や仲間の状態が「確率」ではなく「因果」の線として見え始めた。



「シルヴィア、その聖剣を抜け! 浄化しようとするな、逆にその『呪いの魔力』を橋の基部に叩き込むんだ!」



「なっ……!? 破壊を加速させるというのか!?」



「いいから信じろ! ミア、お前は橋の裏側に回って、崩れそうな楔(くさび)を全部外してこい!」



「了解ニャ! アタシを信じるニャよ!」



ミアが影のように素早く橋の縁を駆け下りる。

本来なら自殺行為だ。だが、俺には見えていた。

聖剣の負のエネルギーで特定の岩を膨張させ、ミアが楔を外すことで、橋を「崩落」させるのではなく、特定の形に「再構築」できるポイントが。



「エリザベート、俺の合図で右側の街灯すべてに最大出力の爆破魔法を!」



「……わかったわ。貴方の心中、心中(しんじゅう)してあげる!」



エリザベートが魔力を練り、真紅の瞳を輝かせる。



「今だ! やれ!!」



俺の号令と共に、シルヴィアが聖剣を地面に突き立てた。

ドォォォォンッ! という衝撃と共に紫の雷が走り、石橋が悲鳴を上げる。

同時に、裏側でミアが最後の楔を蹴り飛ばした。



「エリザベート、右だ!」



「吹き飛びなさい!!」



轟音と共に街灯が爆発し、その衝撃波が傾きかけた橋を左側へと押し戻す。

呪いの魔力で膨張した岩が、パズルのピースのようにはめ合い、橋は不格好ながらもガッチリと固まった。



「……止まった。……嘘でしょ、あんなデタラメな方法で」



エリザベートが肩で息をしながら、信じられないものを見る目で橋を見つめる。



「……カイト殿。貴方は、運を失ってなお、運命を支配するというのか」



シルヴィアが聖剣を鞘に収める。

不思議なことに、あれほど彼女を苦しめていた呪いの光は消え、聖剣は穏やかな、しかし以前よりも力強い輝きを宿していた。



俺のスキルは、仲間に「幸運」を与えるのではない。

彼らの「意志」を、最も効率的な「結果」へと導く地図だった。



「……ふぅ。なんとか、なったな」



俺がその場に座り込もうとした時。



パチ、パチ、パチ、と乾いた拍手の音が響いた。



「お見事。まさか物理学と魔力特性の計算だけで、あの崩落を止めるとは。大学生の知恵、侮れないね」



崩れた時計台の影から、神崎が姿を現した。

彼は相変わらずスマートフォンの画面を眺めているが、その表情には微かな焦燥が混じっている。



「神崎……。お前の言う通り、幸運はなくなったよ。でも、これならどうだ?」



俺が立ち上がると、シルヴィアとミア、そしてエリザベートが自然と俺を守るように並び立った。

彼女たちの瞳には、もはや迷いはない。



「……『絆』による確率変動、か。システム上にはないパラメーターだ。反吐が出るほど眩しいよ」



神崎がスマートフォンをこちらに向ける。



「でもね、カイト君。君がその『絆』で不幸を跳ね返せば跳ね返すほど、システムはさらに大きな『修正』を行おうとする。次に来るのは、君たち個人への不幸じゃない」



神崎の指が画面をタップする。



「この国の『王都そのもの』が、歴史から消える。……君を否定するためにね」



「……何だと?」



「王都の地下に眠る、古代の防衛システム。……それが明日、起動する。君を『異物』と見なして排除するために。……止めたければ、僕のところまでおいで」



神崎の姿が、今度はデジタルノイズのように乱れて消えた。



「……あいつ、どこまで性格がひん曲がってるんだニャ」



ミアが不機嫌そうに尻尾を振る。



「明日……。王都が消える……。そんなこと、絶対にさせない」



エリザベートが俺の手を握りしめ、力を込める。



「カイト殿。もはやこれは、一国の問題ではない。我ら四人の、そして貴方の存在を懸けた戦いだ」



シルヴィアが俺の前に跪き、忠誠の誓いを新たにする。



幸運値ゼロ。

最強の武器を失った俺の前に、世界そのものが敵として立ちはだかろうとしていた。



だが、不思議と怖くはなかった。

隣を見れば、どんな幸運よりも頼もしい仲間たちがいる。



「……よし。明日、あの管理者の顔を殴りに行くぞ」



俺はそう言って、崩れかけた橋の上で、真っ赤な夕陽を見つめた。

伏線はすべて揃った。あとは、俺たちが最高の結末を書き込むだけだ。


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