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最弱職の魔法戦士  作者: 悠久ヒロ
第一章
23/25

番外編①

今日は番外編だけになります。

長さは昨日と同じくらいです。

 彼はいつもいじめられていた。


 理不尽な理由でいつもいつも……


 彼は何も悪くない。でも、私はそれを声に出して言えなかった。


 私は遠目で見ているだけ。つまり、私は彼をいじめている奴らと同類だ。


 助けることが出来ない。どうして、私はこんなに無力なんだろう。


 私が彼に近づくのは、彼が1人の時だけ。


 私って、凄く嫌なやつだ。馬鹿みたい。自分が嫌になる。


 でも、私が近寄って行った時に彼は、嫌な顔一つせず私の話をよく聞いてくれた。そんな彼が大好きだった。




 私は、いじめられるのは別に構わない。


 でも男の人は嫌だ……昔、お父さんに殴られた記憶が蘇るから……また殴られるんじゃないか。殺されかけるんじゃないか……って。



 でも彼だけは大丈夫だった。彼は私が父親から虐待を受けていることに、一番に気が付いて、すぐに助けてくれた恩人だから。


 彼は私の唯一の友達。


 彼の本が取られた時だって、私が無力なせいで取られてしまった。

 でも、彼はそんなことない筈なのに「要らない」と言ってくれた。


 私にとっては、それだけで十分だった。



 私は彼が、彼のお母さんから貰った本をどれほど大切にしていたかをよく知っている。


 それを失う辛さも私には少しだけだけれど、分かっている。


 だから、安心して。


 私のせいだから。こんな無力な私なんてどうでもいいから。


 あまり私に笑顔を見せてくれないけれど、彼には笑っていて欲しい。


 それに、私には身を守るための力ぐらいならある。


 絶対に取り戻すから。待っててね。あいつらに一発お見舞いしてやるから……!!!


「今度こそ私に償いをさせて下さい。ただの傍観者じゃなくて、悠宇くんの力になりたい。」




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 学校が終わった時、彼が私の後ろを着いてきているのは分かっていた。私の心配をしてくれているんだよね……ごめんね。でも、大丈夫だから。


 私は家の裏口から抜け出してアイツらに連絡を入れた。そうしたら、すぐに反応が帰ってきた。


 私が今日中に連絡を入れることは分かっていたらしい。


 私は直ぐに奴らが指定してきた場所に向かった。


 人通りが少なくて廃ビルだったけれど、私にとっても好都合だ……遠慮なく暴れることが出来る。


 大丈夫。私が頑張れば彼の本は直ぐに取り返せる。大丈夫……


 ――私はこの時までそう思っていた。


 いや、自分にそう言い聞かせていた。私はこの時、本当は怖かったのだろう。でも私は、今頑張らなくていつ頑張るのだろうか。


「……私がやらなくちゃいけない」


 そう意気込んで私は奴らが待つ廃ビルの中へ入って行った。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪




 ――――でも、ダメだった


 男の人を目の前にして足がすくんで一歩も動けなかった。


 手足が自分の物じゃないような気がした。どうしてこんなに動かないのか自分でも分からなかった。


 あっという間に私は拘束されて、脱がされ、侮辱され、写真を撮られた。


「バラまかれたくなければ明日ここに来い。明日は仲間呼んでくるからよ」


 奴らはそう吐き捨てた後、紙を私の方へ投げつけた。


「……悠宇くんの本……返して……」

 私がか細くそう言うと、奴らは大笑いした。


「あんな汚ぇ本、捨てちまったよ!!!」


 その言葉を聞いた私が、涙を流しながら放心状態のまま動けずにいると、奴らは私を放って、そのまま何処かへ行ってしまった。


 私は汚れてしまった。もう終わりだ。こんな私が悠宇くんの傍にいちゃいけない。


 結局、彼の本は取り返せなかった。こんな無力で、約立たずの私は生きていたって仕方が無いのかもしれない。


 私は放心状態のまま、脱がされた服を着なおし、フラフラとおぼつかない足取りで屋上へ向かった。


 屋上への階段を登りきり、扉を開けた途端、冷たい風が吹き抜ける。


「……月が見えないや」

 私は雲で覆われた黒い夜空を見上げながら一言呟く。


 アスファルトの地面をおぼつかない足取りで歩き、屋上の柵を乗り越えた。


 そして、私がもう一度前を向き直ると、風がより一層強くなった気がする。


 夜の冷たい風が容赦なく襲いかかり、私の肩にかからないぐらいの髪の毛がなびいた。


「悠宇くん。ごめんね。ごめんね」

 私は涙を流しながら何度もそう呟く。


 最期も私は何の役にも立てなかった。


 ……せめて、彼の本だけは取り返したかった。学校にいる時、私が奴らを引き止めていればもっと違う状況になったのかもしれない。


 でも、後悔をしてももう遅いよね……


「最期に、彼の声が聞きたい。」

 そう呟いた私は、ポケットの中に入っていたスマホを取り出し、電源を入れる。


 スマホの画面が開くと、そこには何十件も電話の通知が残っていた。


「……必死に探してくれてたんだ……」

 それを知った私は嬉しさで涙を流した。


 ……私の、この選択は間違っていたのだろうか……?


 でも、それを確かめる術はどこにも無い……


 私は通話ボタンを押し、彼に電話をかけた。


 すると、直ぐに彼は電話に出て、息を乱しながら私の名前を呼んでくれた。それだけでも嬉しかったのに……


「あはは……悠宇くんの幻影が見えるよ……」


「何……っ?」


 私が目線を下ろすと、そこには彼が居たように見えた。


「――最期に悠宇くんの声が聞けて……良かったな」

 そう言って私は電話を切った後、スマホを地面に捨てた。



 悠宇くん。今まで本当に有難う。


 最期まで身勝手でごめんなさい。そして、最期まで何も出来なくてごめんなさい。


「さようなら最愛の人」


 そう呟いて私は目を瞑り、地面から足を離した。


 私の体は垂直に落ちていった。



 ……もし、貴方と同じ世界に生まれ変われたら、もう一度貴方に恋をし――


 私の意識はそこで途切れた。




















 瞼を開くと、そこには見慣れた豪華な天井が映し出された。

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