森でチームを組んで実践!
ノアの授業はどんなものか。と思っていたが割と普通なものだった。
魔術の基本や適合属性や補助魔術の話だったな。
適合属性とは、その人にあっている属性のことだ。
あとは、魔術の適合検査を行ったりした。俺は予想通り火属性が1番適合しているようだった。
ハルは水属性で、シルは風属性が1番適合していた。俺たち3人で火、水、風となるからバランスがめちゃくちゃ良い
ハル自身は火属性の方が好きらしいが……好みと適合属性が違う場合があるんだな……
火と水はめちゃくちゃ相性が悪い。どちらか片方が適合だった場合、適合ではない方の魔術の威力や速度が大幅に落ちる。
って……ちょっと待てよ?
ハルは試験の時、相性が悪い火属性魔術を使っていたが威力は他の者と比べると桁違いに強かった。
ハルはめちゃくちゃ凄いやつだった。
まあ、シルの方は予想通りというかなんと言うか……
やはり、薬の開発や研究をしていたからだろうか風属性は平均並みの威力でもそれ以外はそこまで強いものではなかった。
その代わり、補助魔術の性能は他の者と比べるとだいぶ良い方だった。
補助魔術と風属性の魔術を合わせれば、シルはハル並に強くなれる。
と、まあ。友人を深く知ることが出来たのでこの2時間は俺にとっては割と有意義なものになったと思う。
学園内のスピーカーからチャイムが鳴った。
「明日のこの時間は実戦訓練なので、気を引き締めるように!それじゃあお疲れ様!」
ノアがそう言い、授業を締めくくると次は10分の休み時間だ。
「明日はいきなりの実戦か…僕もいつも以上に気を引き締めないとな…」
俺は、誰にも聞こえないような声でそう呟いた。
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翌日、俺達のクラス全員はノアに連れられ、森に来ていた。
「はーい!じゃあ、今からみんなのチームを発表するからそのチームで今回の実戦に挑んでね!みんなで集まったら早速森の中へ入ってね〜!」
ノアがそう呼びかけた後、順番に名前を呼んでいた。
先生であるノアがチームを決めるのは、バランスを重視するためだろうか。
「次、ユウ・アルティスくん、マイク・カタールクくん、ユマ・ミハラ・ラーニーさん」
「あー……一緒のチームになれなかったな……今度なれたらいいな!」
ハルは残念そうにしながら呟いた。
「そうだね……。じゃあ、僕は行ってくるよ!」
俺はハルとシルに挨拶をし、指定された位置へと行き、2人と合流した。
早速ユマと同じチームか。
これはより一層力がバレないよう気を引き締める必要があるな。
「ユマ。一昨日ぶりだね!」
「そうね!今日はみんなで頑張りましょ!」
俺はユマと挨拶を交わしていると、男がこちらに近付いてきた。
多分マイク・カタールクだろう……クラスメートの名前もちゃんと覚えなきゃダメだな。
「カタールクくん。今日はよろ――」
「ちっ」
俺が手を差し出すと、マイク・カタールクは舌打ちをして俺と目を合わせようとしなかった。
「なんで俺のチームだけ魔法戦士2人なんだよ……しかもこんなヒョロそうなやつ」
俺に、一瞬目線をよこしたあと大きな溜息をついて呟いていた。
確かに俺の見た目はひょろそうだ。意見は人それぞれだからそこまで気にする必要も無さそうだな。
「流石に失礼とは思わないのかしら?」
ユマは真剣な眼差しでカタールクに俺に対して謝罪を要求した。
「ユマ……僕は別に――」
「ごめんなさい。私が許せないの」
一瞬俺の方を申し訳なさそうに見たあと、カタールクの方へ向き直った。
「……ちっ……悪かったな」
カタールクは俺の方を見ずにそう呟いた後、先に進んでしまった。
俺たちも先に行ってしまったカタールクを追いかけ、森の中へ入っていった。
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森の中に入ると何匹かの魔物が現れたが、全てカタールクとユマが倒してしまった。
カタールクは魔導師の職で、適合属性は土のようだ。
カタールクが撃ち漏らした敵を、ユマが魔術や剣術を使い倒している。
それでもやはり即席のコンビネーションのため、まだ未完全のようで、背後からの敵や二人が撃ち漏らした敵は俺がこっそり倒している。
「……はあ。お前は楽そうでいいよな」
肩で呼吸しながらカタールクは俺のほうに目をやり、皮肉を込めて言った。
「ユウには、背後を警戒してもらっているわ。楽な仕事では無いはずよ」
「でも、背後から敵はこねーじゃねえか。」
「警戒は大事なことよ。三人で四方を守りながら戦うほうが安全で確実ね」
ユマがそう返すと、カタールクはもう言うこともないようで前を向いて魔物を黙々と倒し始めた。
「……全く。どうしてこうも士気を下げるようなことをいうのかしら」
ユマは溜息をついていた。
「みんなから弱い。って、非難されている魔法剣士が二人もいるし仕方がないよ……それに僕は何の役にもたってないしね」
「いいえ。背後を警戒してくれているだけで、前線で戦う者たちにとっては有難いことよ」
ユマは俺にそう伝えると、カタールクの援護へと回った。
ユマはやはり、皆からの差別を受けていたから俺の境遇を理解して庇ってくれるのだろうか。
正直、カタールクの発言はいい気持ちがするものじゃない。ユマのおかげで流すことが出来ているのかもしれないな。
……それにしても、ノアはなぜ魔法剣士を二人編成したのだろうか?
二人同じところに編成するより、回復導師を入れたほうが効率的だとは思うのだが。
「……ん?」
何か…奥の方から強い魔力と物凄い殺気を感じる……それに、魔物たちの様子が少々おかしい。
「……ユマ。なんか魔物たち、こっちに逃げている感じがしない?もしかして、奥の方に強い魔物が――」
「はー??適当なこと言うんじゃねえよ」
カタールクは横槍を入れてきた。
……お前に話しかけた訳じゃないんだが…面倒臭いな。
「カタールク。黙っていて。……ユウ、どういうこと?」
ユマがカタールクにそう告げ、戦闘を中断するとカタールクは舌打ちして先へ進んでしまった。
「魔物たちの数も多いし、動きがいつもより必死に逃げ回っている感じがするんだ。何か嫌な予感がする……」
「なるほどね。言われてみれば、よく遭遇する上に魔物たちはあまりこっちを見ている感じがしないものね……」
ユマはそういうと、横から飛び出してきた魔物を魔術で蹴散らした。
……というか、これは不味いな。魔力量が普通の魔物とは格段に違う。
魔人……とまではいかないが、それに近い魔物だろう。
……この森にこんな強い魔物が居たとは……最近現れたのか?
兎に角、まだあまり訓練を受けていない学園生が一人で立ち向かえる魔物じゃない。
「……っ!!」
突然、ユマが険しい表情を浮かべ森の奥を見た。
まさかこの距離で魔物の気配を察知出来るのか……!
「ユウ……貴方の言っていた通りよ!カタールクが先に向かっていたわ。急ぎましょう」
「う、うん!」
俺は先に走り出したユマの後を追い、森の奥へと進んで行った。
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「――うわああああああああああああ」
森の中を駆けていると、叫び声が聞こえた。
この声は……カタールク…!
隣を走っているユマに目線をよこすとユマも同じことを思っていたようで、頷いたあとスピードを上げた。
「こっちの方が近道よ!」
ユマは道を逸れ、木々が集う方へ突き抜けていった。
木々の中を抜けると、そこには虎の魔物と後ずさるカタールクが居た。
「ひ、ひいいいいぃいい!!!!」
「何物も貫く火の槍よ 焔の如く 敵を貫け いでよ 焔槍!!」
ユマは魔物に向かってすかさず魔術を唱えた。
魔術は虎の魔物へと一直線に向かっていき、命中することは出来たが一瞬退けることしか出来なかった。
駄目だ……!!まだ足りない!!
魔物は鋭い眼光で睨み付けた後、ユマへと襲い掛かってきた。
「――くっ……!!」
ユマは剣を構え、虎の魔物の鋭い攻撃を受けた。
「カタールク……!!早く逃げて先生達に伝えるのよ!!」
「うっ……うわあああ!!!!」
カタールクはユマの言葉を聞いた途端叫びだし、俺たちが来た方向へと走って行った。
「……ユマ……っ!!」
「ユウ!貴方も早く行きなさ……っ……!!!」
ユマは俺に向かってそう叫んだが、剣にヒビが入った。
……っこのまま俺が逃げたらユマは死ぬ……っ!!!
「グゥアアアアアア……!!!」
魔物がそう吠えると更に力が増し、剣は音を立てて壊れユマは弾き飛ばされた。
「きゃあっ……!!!」
ユマは木の幹に体を打ち付けられ、立つことは出来ても動けなかった。
「グゥアアアッ!!」
魔物はまた、ユマの元へと突進した。
「っ……!!」
ユマは目を瞑り、死を覚悟した。
だが、不意に体を突き飛ばされ、芝生の上に倒れこんだ。
目を開け体を僅かながら起こし、先ほどまで自分が居た方を見ると血だらけでユウが倒れていた。
「ユウ!!!!!」
ユマはそう叫んだ後、呼吸が浅くなるのを感じた。
「っわ……私のせいでっ……!!」
項垂れ、涙を芝生の上へと落とした。
「誰か……っ誰かユウを助けて……っ……!!!」
ユマがそう願うと、突然魔物が爆発した。
「グガアッ……!!!」
「……え?」
魔物はその場に倒れ込み、やがて消え、そこには大きな魔石が落ちていた。
「どういうことなの?……まさかユウが――」
そう呟き、ユウの方に目をやるが血だらけで倒れていて何か出来るような状態では無かった。
ユマは震える足に手を置き立ち上がったが、足元がおぼつかず視界が霞んだ。
「っ……はぁ……はぁ」
呼吸が荒くなり、ユウの元へ近寄ろうとしても膝から崩れていった。
「ごめ……なさ……ユウ……っ」
ユウに謝りながら意識が遠のく中、遠くの方から声が聞こえてきた。
ああ……助かったんだ。
ユマは安堵の涙を流し、意識を手放した。




