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ケッペキショーの珍道中  作者: 朱華
初めましてスラム街
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56 受験



さっそく翌日から仕事終わりにドンのアジトでドンや執事さんに歴史を教わって、頭に詰め込んだ。


復習のためにも、人に教える事で覚えるという効果も期待して、前の日に習った内容を学校でみんなに教えるという生活を繰り返した。


さらに、受かったら寮に入る事にしたし、受からなくても家を出るつもりなのでその旨を伝え、順当にナサラを次の管理人に指名した。


寮の費用は相部屋なら一月ニマンエル、食事は毎食五百エルで栄養満点の物が食べられるらしい。…ただ、栄養満点とはいえ毎食五百エルはちょいと高い。節約のためにパンとスープのみの自炊になるかもしれない。ちなみに寮費はかなり安いんじゃないかな。私が二日で稼げる額だもん。


半年後、ついに試験の日がやって来た。


会場である学園にその日初めて来て、そこまではギャングの下っ端のお仕事としてハンス兄に送って貰った。


学園は広くて、建物は大きくて高くて、庭木も綺麗に整えられていて、薄汚れたスラムから来ると別世界のようだ。


試験が行われる教室に向かう列は自然と二つに別れていて、私は平民側の列で学園内を進んで行く。


貴族と平民で分けられた試験室に入ると、平民はこの時点では貴族よりも断然多く、試験で振り落とされるというのがよく分かる。


ごくりと生唾を飲んで、最後の覚悟を決める。


用意始めの合図で配られた試験用紙を表に返し、インク壺を開けペン先を浸す。


試験始め、と声がかかると共にカリカリとペンを走らせる音が一斉に響き、試験が始まった。


国語、算数の試験はドンの言った通り問題無かった。かなり自信がある。


まあ、十歳児が受ける試験だからね。日本で高校受験までは終えてこっちに転生して来た身としてはまあズルをしてる気分になるくらいです。


歴史に関してはこの半年で一度も勉強しなかった日は無い。詰め込みに詰め込んで丸暗記したからとりあえずは大丈夫。


だけどまあ、あれだね。毎年必ず出る超難問はかなり苦戦した。この国の王様の名前なんだけどね。


「ベンティアド・ショットヘーゼ・ルナッツバニ・ラアー・モンドキャ・ラメルエ・キスト・ラホイップ・キャラメ・ルソー・スモカソー・スランバ・チップチョ・コレートク・リームフ・ラペチーノ」


じゅげむかよ!長いわ!ふざけんな!


ちなみにこの学園は王立なので奨学金があるけど、医療学校の方はそれは無い。だからまあ王様には感謝しております。ハイ。


ほんと、この王様の名前だけは合ってるかどうか自信無いな。


試験は終わったので、門の所で待ってくれていたお迎えのハンス兄と一緒にスラムに戻って、そのまま診療所に連行された。


「終わったあああ!一安心だ〜!」


いつものように会議室に入って、椅子にボスっと深く座り込んで、前に腕を滑らせながら机に突っ伏した。


「おう!お疲れ!」


「どうだったよ!落ちたか?」


「…お疲れ様。受かったら祝いに猫を一匹やる。」


「ほっほ…まあ落ちたら慰めてやろう。」


「んもう!ヘッドさんもひげ爺も落ちる落ちるって!受験生には禁句ですよ!ドンやセオさんを見習って下さい!あと、今は猫飼う余裕は無いのでまた今度譲ってください。」


セオさんなんか、最大級のいたわりを見せてくれたっていうのにさ!もう!大事にしてる猫をくれるなんてあり得ない事だよ!?


「わりぃわりぃ…で、実際どうだったんだ?」


「まあ、受かる事には受かるでしょ!でも奨学金はどうか分かんない。他がどれくらい点数取ったかにもよるし、歴史で一番点数が貰える国王の名前、合ってるかどうか定かじゃ無いのよね。完全には覚えてないし。」


「なるほどな。ありゃ難しいな。俺は別に覚える必要性を感じなかったから覚えてねぇよ。けど、他の奴らは覚えてるんじゃなかったか?」


ヘッドさん以外の三人は言えるの!?嘘でしょ?


「言って見せてよ!お願い!」


あざと可愛くお願いしてみたらドンは渋々といった体で、しゃあねーなと頷いてくれた。セオさんはコクリと頷いて、ひげ爺はふぉっふぉっふぉと言っている。


「じゃあ合わせるぞ……せーの、ベンティアド・ショットヘーゼ・ルナッツバニ・ラアー・モンドキャ・ラメルエ・キスト・ラホイップ・キャラメ・ルソー・スモカソー・スランバ・チップチョ・コレートク・リームフ・ラペチーノ十四世……だ、だろ、じゃろ?」


「おおぅふっ…まさかのほんとに言えちゃったんですね。よく舌噛みませんね…!?というかすみません、せっかく言って貰ったけど、言われても合ってるかどうか分からないレベルで長いですね。」


「まあ、実際に使う場面は無いからな。せいぜい宴の余興だよ。それも、相手も国王の名が無駄に長いって事知ってなきゃ笑いが取れねぇしな。」


「ふひひひ。…それってバレたら不敬罪になりません?いやほんとおもしろい!」


「そんな馬鹿笑いして一番お前が不敬だろうが。まあ、そもそもスラムの存在自体が不敬罪みたいなもんだ。気にすんな!」


あ、ヘッドさんが吹き出した。セオさんはとっくに腹を抱えて、くつくつと忍び笑いをしている。


とりあえず全員の笑いが収まるのを待ってから、この場はお開きという事になった。



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