【52】ゴブリン・リベリオン①
鋼鉄城塞都市トータウス。
――『世像協会』地下牢、
災害指定人物『北の魔王』、タドコロ・イズミ収容区前。
――侵入者の報が入る直前、一人の青年が、
ひとりで禁書庫に訪れていた。
◇
「お久しぶりです、ロウム卿」
「こちらこそ、イルガス卿。
訪問の理由は、口に出さなくて結構です」
禁書庫の、いたる部分は本棚で囲まれている。
その中でも、異質の空気を放つ空間があった。
魔法陣が描かれ、青白い光源が浮かび上がる
ラグ……。その中心にクッションを敷き、
本を開きたたずむ彼女こそ、異質の中心だった。
――『東の魔女』の恩恵を受けし、実子にして
現禁書庫の管理人――ロウム・クロノウェル。
「この世像協会の地下に、イズミさんは監禁されています。
監禁されて一週間――。報告によれば、彼女はとても静かに
息を潜めているそうです。まるで、脱獄の機会を伺うように……」
ロウムは冷静に場を俯瞰する、イルガスに視線を向けて。
「あなたの入れ知恵ですか? イルガス・フォン・ホープ卿」
「はは。まさか、殿下自身のご意思ですよ。
あなたほど、プライバシーの侵害に長けた
方でさえ――殿下の企みを看破できない」
イルガスの視線は、さきほどからロウムに向けられていない。
向かう視線の先は、壁にかけられたスクリーンに映る映像。
そこには、囚われたイズミが映っていた。
衰弱して、疲弊しきったゴブリンの王。
人間化のくすりの効果さえ切れかかり、
黄土色に変色し凹んだ肌と、緑色になってボロボロに
壊死しはじめた四肢。王とは思えない、見るに耐えない、
僕らの王―………。
――ああ、お美しゅうございます、殿下。
それでこそ、ゴブリンだ。
やっと、僕たちと同じ姿になりましたね。
仮初の姿じゃない、取り繕った王の仮面じゃない。
醜い子鬼と罵られた――僕たちと同じ憤怒の姿だ。
「……こう言っては失礼ですが、
私に言わせれば汚らわしいこと、この上ないですね」
吐き捨てるように言って、ロウムは続ける。
「――王とは常に、万物の流動の中心に居るべき存在。
あのような姿は、寛容できない。歴史の重鎮と呼べない。
だから――取り返しに来ると思いましたよ、イルガス卿」
ふっと含み笑いをもらすと、イルガスは――レイと通話する時と
同じ思念電波を流した。すると、流れる映像が写り変わり……。
「見えるかい、ロウム卿。トータウスの主要都市機能はすべて
我々ゴブリンが占拠した。おとなしく、降伏を」
「……なるほど。ここにたどり着く前に、もう」
「ええ、無力化しました。我々は――姑息でいやしい、子鬼なのでね」
イルガス・フォン・ホープ。権能名――《聡明叡知》
「……子鬼に、知識などない。まして、人間に
対抗するほどの力や知能など」
バン! と木の扉が破砕する音がした。
混紡と剣で武装した人間が、1人。
また1人と増えては禁書庫になだれ込む。
その中には、西の侵攻でバラバラになりかけた――幹部たちの姿が。
「久しぶだな、ブラッド殿。健勝であったか?」
「その節は世話になったな、ジヲォン殿」
「ゲイブ、勇者にやられた傷は大丈夫?」
「ああ。この通りピンピンだ、レイの姉御。
相変わらずいい女だな。イズミ殿下の次に」
ブラッドフォード、ジヲォン、レイ、ゲイブ。
現ゴブリン最強の者たちが集いしこの地は、
今再び戦場と相成る。
王を救わんと。
王を守らんと。
他でもない、彼女に、玉座に戻ってもらう事を願って。
「力はない。――ないからこそ、革命を起こすんだよ」
ゴブリン・リベリオンが、幕を開けた。
反旗もいいけど茶番会とか書きたいなあ……。
あ。あともうひとつ、なろうで放っておいた連載小説があるんですが、
そっちも再開しようと思うので時間があったら読んでやってください。
m(_ _)m 昨日、思ったより伸びてびっくりしましたw




