【明けましておめでとうございます】流星②
二部構成で終わっちゃいました(笑)
私は兄といっしょにどこまでも走った。
とぎれとぎれになる呼吸なんて気にしなくても、なぜか、足が動く。体が風を切っていく。それが気持ちよくて、どこまでも行ける気がした。お兄ちゃんといっしょなら、世界の果までも走りきれる気がした。そのあいだに、色んなものが私たちの視界に写った。
――青しかない群青の空、空まで手を伸ばす鉄塔、並走する車や自転車、丘から見えたのはきらきらと光り輝く海岸線だった。沖が見える、島だ、今の私たちなら海すら走れるかもしれない。
平日だったためか、私たちの走りを遮る人たちもあまりいなかった。ビル群から逃げてきたすきま風が火照った体をさあっと潤していく。
そう、本当に。どこまでも、どこまでも走った。この世界に道が続く限り、この足が止まることはないと思った。そうすれば私たちは、きっと流星のように走り抜けることができる――そう、錯覚していた。いや、錯覚なんて言い方はふさわしくない。
――幸せな夢を見ていたんだ。
◆
「……ついた」
兄は、いっさいの息切れを起こすことなく『そこ』についた。
そこは、さっき見えた海岸線――その浜辺だった。消波ブロックの上に立った兄は、本当に誇らしげにそこからの景色を眺めて……。
長い、長いためいきをついた。
「ここから先は、今の俺にはいけない」
「お兄ちゃん?」
「イズミ。俺は、高校を卒業したら旅に出る」
兄は――流星は白浜をおおいつくす海を眺めて、
最果てまで続くながい道のりを眺めて、言った。
「ここから先は俺たちにとって未知の領域――異世界だ。
必ずたどり着いてやる。だから、いつかお前も来いよ」
びしっと指をさす。
さざなみの音しか返すことしかできない海に向かって、
宣言をするように流星は――
「待ち合わせ場所は、ここではないどこかだ」
あのときに交わした指切りを、私は一生忘れないだろう。
◆
そのあと、兄は高校を卒業してから本当に旅に出た。そして私はニートとなった。
最初の1年くらいは常に連絡があったものの、私が完全に引きこもるころには定期連絡もいっさい途絶えていた。お父さんは「こっちに連絡をよこせないくらい、旅が楽しいんだろ」と言う。お母さんも「いいことだわ」と、兄の消息が絶えたことになんの危機感も抱いていなかった。産んだ子どもが二人そろって『冒険家』だの『ニート』だのと、将来性がない職についていてもなんら叱らない頭がおめでたい人たちが親でよかった。
お兄ちゃんへ。
あなたは今、どこで、何をしていますか。
私はいま、異世界でゴブリンロードやっています。
あなたがずっと行きたがっていた、『異世界』で。
ううん……。
『ここではないどこか』で、王を努めています。
あなたがあの日、
私と誓ってくれた約束が、
いまの私を突き動かしています。
今、どこにいますか。
どこかにいるんでしょう?
安心して、必ず会いに行く。
待ち合わせ場所は――
「ここではない、どこかで」
私たちの『異世界』は、きっとどこまでも広がっていくのだから。
では、次回からはまた東の魔女戦になります。こういうシンプルな冒険劇も一回書いてみたかったのでちょうどよかったです。




