第71話 白き世界の崩壊と帰還
異空間の床がガシャーンッと、まるで氷が割れるように音を立てた。
白い世界に黒い亀裂が走り、底の見えない闇が広がっていく。
「きゃあああっ! いやよ、こんなところで終わるなんて……!」
継母が叫び、継妹たちが泣きながら僕に手を伸ばす。
「継兄! 助けて! お願い、お願いだから!」
僕は唇を噛んだ。
胸の奥に、幼い日の痛みが蘇る。
冷たい床、痛み、飢え、叱責、嘲笑、孤独――。
レオンハルトの腕の中から、リオンが不安そうに見上げてくる。
「ママ……?」
その瞳を見た瞬間、迷いは消えた。
「……出口は?」
継母たちから目を逸らし、アーロンに冷静に問いかける。
「すぐそこだ。だが、思ったより崩壊が早い。急ぐぞ」
レオンハルトがリオンを抱き直し、アーロンが魔力で道を作る。
アーロンの肩には、絶望のあまり気を失ったヴォルン院長が担がれていた。
僕は最後と思い、継母たちに近づき彼女らを一瞥した。
僕の瞳には、怒りでも憎しみでもなく――静かな決意が宿っていた。
「……僕はもう、あなたたちに縛られない」
その言葉とともに、背を向けた。
継母たちの叫びが響くが、振り返らない。
家族は、血縁だけでは決まらない。
自分が守りたいと願う者――それが、本当の家族だ。
いそいでレオンハルトとリオンのもとへ駆け寄り、皆で崩れゆく白の世界を後にした。




