第69話 白き異空間
「待て―!」
どこまで続いているのか。
どれぐらいの広さがあるのか見当もつかない。
霧に包まれた異空間を、僕はひたすら走り続ける。
ただ、ただ、リオンを助けたい一心で。
魔術で作られた異空間は、迷うと永遠に出られない。
わかっていながら、承知で僕は、やみくもに走りまわる。
リオンがいない人生なんて考えられない。
リオンがいない人生は、死んだと同じだ。
「はあはあ……リオン! リオーン!」
僕だけでなく、リオンまでも――。
継母だけは、絶対に許さない。
固い決意を胸に、力の限り走り続ける。
やがて――。
「はぁはあっ……あれは……!」
不可能だと思われた命懸けの追跡が実を結んだ。
前方に、にっくき男女二人の姿が見えてきた。
驚いたことに、僕の二人の継妹も一緒だ。
反対側にある異空間の入り口から入ってきたようだ。
ということは、もうすぐ隣国に到着するのだろう。
まずい。現実世界である隣国に入ったら、僕はすぐに拘束されてしまう。
レオンハルトに二度と会えなくなる。
だが、僕はどうしてもリオンを取り戻したかった。
「待てーっ! リオンを返せー!」
「おおっ……リオネルが追いついた? なぜだ? この異空間は私が作った世界。魔法が解かれない限り、誰も私たちに接触できないはずだ」
ヴォルン院長がこちらを見て驚愕している。
僕は走る速度を上げた。
もうすこしで、リオンに手が届く。
「ママーッ!」
恐怖で固まっていたリオンが、突如、大声で僕を呼び出した。
継母の腕の中でバタバタと手足を振って暴れる。
「なんて子供だ! さっき殺しておけばよかったよ」
「やめろ! 子供に手をかけるなど……!」
リオンにナイフを突き立てようとする継母。
ヴォルン院長が止めに入る。
「やめろー! リオンに手を出すなー!」
僕は走ったままの勢いで継母に飛びついた。
カラン――。
継母の手からナイフが落ちる。
ドンッ!
「みんな、早く! 空間に飛び込め!」
しかし僕はヴォルン院長に突き飛ばされ、その場に仰向けに倒れこんでしまった。
その間に、隣国の入口へ飛び込もうとしている継母たち。
リオンを連れて――。




